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動き出す時
天然マイペース不思議ちゃん
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ヴァイナモが去って行き、その場に俺とユリウスさんとダーヴィドが残された。ユリウスさんは不可解そうに顎に手を添えた。
「うーん。ヴァイナモはあの砂浜にはお嫁さんしか連れて行かないって、割と本気で思ってたんだけどなあ」
「……ユリウスさんはどうしてそのように思われたのですか?」
「そう宣言した時の表情が幼いながらもとても真剣でしたから。少なくともその場のノリではなかったはずです」
ユリウスさんはふわりと微笑んだ。まあその時は本気でも、それが今でも本気って訳じゃないからね。時の流れで人の心も変わるモンだよ。
「それでも成長と共に人の心も変わるものですから。いつまでも幼少期と同じと考えてはいけませんよ」
「……それもそうですね。私は病床生活が長いもので、時の流れに疎いのです。今でもヴァイナモがちよちよと私の後ろをついて回っていた頃が昨日のように思えてしまって。いつの間にか成人して、立派な騎士になっていたことに、とても驚きました」
ユリウスさんは寂しそうにヴァイナモが去って行った方向を見つめた。ただでさえ病弱で家族と過ごす時間が短かったのに、その上ヴァイナモが家出同然でいきなり帝都へ行ってしまったのだ。ユリウスさんの中でのヴァイナモが幼い頃で止まっていても無理はない。
……俺的にはヴァイナモと家族が一時的に仲違いしてくれたお陰で出会えたから、これは僥倖だったと思ってるけど、家族にとってはそうじゃないよね。すれ違いは明らかに不幸だった。じゃあ俺は人の不幸を自分の幸福として享受しても、本当に良いのだろうか?
俺の沈んだ思考に気づいたのか、ユリウスさんは苦笑いした。
「もし仲違いがなければヴァイナモは伯爵補佐になって騎士にはならなかったでしょうが、私としては騎士はヴァイナモの天職だと思っています。それにリュリュが庶子と言うことで家族関係がぎこちなかったのですが、ヴァイナモが話し合いの場を設けてくれたお陰で蟠りが解消されました。……ですから、これで良かったのです」
ユリウスさんは眉を下げて少し皮肉めいた笑みを浮かべた。結果的には良かったが、やはり家族が仲違いしているのは気分が良くなかっだろう。……病でいつ倒れるかわからないユリウスさんにとっては、特に。
「……さて!殿下、暗い話はこれくらいにしまして、私と少しお話しませんか?」
「えっ?ええ、まあ暇ですし構いませんが……」
ユリウスさんは沈んだ空気を一新するために明るい声色でパチンと手を叩いた。ユリウスさんの提案に俺はキョトンとなる。俺とユリウスさんで、何かお話しすることあるかな……?
「では中庭まで移動しましょう。今日は天気が良いのでお日様の光でぽかぽかですよ。使用人にお茶を用意させますね」
ユリウスさんはほわほわと、だが有無を言わせぬ雰囲気で中庭までの案内を始めた。えっちょっ、待って待って!俺を置いて話を進めないで!いや別に中庭でお茶するのは良いけど!ユリウスさん、物腰柔らかなのに押しが強いな!?マイペースか!?
* * *
「それで実際、ヴァイナモのお嫁さんと呼ばれてどうお思いになりましたか?」
「ぶっ!」
中庭のガーデンテーブルに座り、出された紅茶を飲んでいる最中にそんなことを聞かれたので、俺は行儀が悪いのも承知で吹き出した。ゲフゲフと咳き込んでいると、使用人が大慌てでハンカチを差し出してくれた。
「ユリウス坊ちゃま!お相手が困ってしまうようなことを尋ねては駄目ですと、何度も言ってるでしょう!」
「ごめんごめん。でも気になってしまって。……それで、どうなのですか?」
使用人の苦言をふわふわと流したユリウスさんは、興味津々で俺に聞いて来る。使用人は頭を抱えて溜息をついた。これがユリウスさんの平常運転なのか。大変だな。
息が整ってきた俺はハンカチで口を拭きながら考えた。どうって、そんないきなり言われても……。ヴァイナモの、お嫁さん……?
俺の脳内に、新郎服に身を包んだヴァイナモが俺の前に跪いて俺の手を取る姿が浮かび上がった。俺は思わずボフンと顔を真っ赤にして頭を沸騰させる。
ダーヴィドがそんな俺を見てニマニマしているのが視界の端に見えたので、俺は両手で頬を隠しながらキッとダーヴィドを睨みつけた。笑うんじゃねえ!
ユリウスさんはそんな俺の様子を嬉しそうに頬を緩めた。
「嫌ではないのですね、良かったです。私はよく相手に配慮出来てない発言をする、と皆に注意されるので、今回もまた殿下の気分を害したのではないか、と心配でした」
「……いや、相手が嫌ではなくてもそう言う発言は控えた方が良いかと。最低限の礼儀ですよ」
「そう言うものなのですか?わかりました。気をつけます」
ユリウスさんはしゅんと萎れたように反省した。なんか小さい子みたいだな。純粋で無垢な箱入り息子って感じ。まあ実際箱入り息子なんだろうけど。アレか。人と関わる機会が極端に少なかったから、対人技能が極端に低いのか。それに天然マイペースが加わったら、そりゃもう手に負えないわな、納得。ご家族や使用人の方々の苦労が窺えるわ。
「……確かに軽率にお嫁さん、なんて言うのは良くなかったかも。そうだよね。普通自分の主との関係を疑われたら不快だよね。ヴァイナモには悪いことをしたなあ」
萎れていたユリウスさんがぽつりと呟いた。それに俺は胸を鷲掴みされたかのような痛みを感じた。そうだよね。ヴァイナモは嫌だよね。俺がお嫁さんだなんて。……俺は別に嫌じゃないけど、それがそのままヴァイナモにも当てはまるとは限らないよね。
ユリウスさんは指を弄りながらボソボソと言葉を零した。
「……でも私って結構未来予知が出来るんですよ」
「……未来予知、ですか?」
いきなりどうした電波か、と思ってしまった俺は悪くないと思う。切実に。冗談かと思ったが、ユリウスさんの表情が真剣だったので、思わず息を呑んだ。
「そうです。私がヴァイナモに『騎士に向いてそうだよね』って話した次の日にヴァイナモは父上と大喧嘩して家出しましたし」
「……いや、それは未来予知ではなく、ユリウスさんの言葉に触発されただけなのでは……?」
俺の言葉にユリウスさんは雷に打たれたように驚愕の表情を浮かべた。いや、普通に考えたらそうでしょ。なんだよ天然かよ不思議ちゃんかよ。純粋無垢な天然マイペース不思議ちゃんって要素盛りすぎだよ大渋滞してるぞ。
「……なるほど、そうとも捉えられますね……!」
「普通そうとしか捉えませんよ」
「これが、普通……。普通とはとても難しいものなのですね」
ユリウスさんは両手で口を押さえて狼狽える。そんなユリウスさんに使用人は胃痛を我慢するかの如く胸を押さえて前屈みになった。ユリウスさんのド天然発言で俺の気分を害さないかヒヤヒヤしているのだろう。大丈夫だよ。俺は心が広いから、怒ったりしないよ。お疲れ様です、使用人さん。後でオリヴァにアスモの胃薬貰ってくるから!
* * * * * * * * *
2020/09/16
脱字を修正しました。
「うーん。ヴァイナモはあの砂浜にはお嫁さんしか連れて行かないって、割と本気で思ってたんだけどなあ」
「……ユリウスさんはどうしてそのように思われたのですか?」
「そう宣言した時の表情が幼いながらもとても真剣でしたから。少なくともその場のノリではなかったはずです」
ユリウスさんはふわりと微笑んだ。まあその時は本気でも、それが今でも本気って訳じゃないからね。時の流れで人の心も変わるモンだよ。
「それでも成長と共に人の心も変わるものですから。いつまでも幼少期と同じと考えてはいけませんよ」
「……それもそうですね。私は病床生活が長いもので、時の流れに疎いのです。今でもヴァイナモがちよちよと私の後ろをついて回っていた頃が昨日のように思えてしまって。いつの間にか成人して、立派な騎士になっていたことに、とても驚きました」
ユリウスさんは寂しそうにヴァイナモが去って行った方向を見つめた。ただでさえ病弱で家族と過ごす時間が短かったのに、その上ヴァイナモが家出同然でいきなり帝都へ行ってしまったのだ。ユリウスさんの中でのヴァイナモが幼い頃で止まっていても無理はない。
……俺的にはヴァイナモと家族が一時的に仲違いしてくれたお陰で出会えたから、これは僥倖だったと思ってるけど、家族にとってはそうじゃないよね。すれ違いは明らかに不幸だった。じゃあ俺は人の不幸を自分の幸福として享受しても、本当に良いのだろうか?
俺の沈んだ思考に気づいたのか、ユリウスさんは苦笑いした。
「もし仲違いがなければヴァイナモは伯爵補佐になって騎士にはならなかったでしょうが、私としては騎士はヴァイナモの天職だと思っています。それにリュリュが庶子と言うことで家族関係がぎこちなかったのですが、ヴァイナモが話し合いの場を設けてくれたお陰で蟠りが解消されました。……ですから、これで良かったのです」
ユリウスさんは眉を下げて少し皮肉めいた笑みを浮かべた。結果的には良かったが、やはり家族が仲違いしているのは気分が良くなかっだろう。……病でいつ倒れるかわからないユリウスさんにとっては、特に。
「……さて!殿下、暗い話はこれくらいにしまして、私と少しお話しませんか?」
「えっ?ええ、まあ暇ですし構いませんが……」
ユリウスさんは沈んだ空気を一新するために明るい声色でパチンと手を叩いた。ユリウスさんの提案に俺はキョトンとなる。俺とユリウスさんで、何かお話しすることあるかな……?
「では中庭まで移動しましょう。今日は天気が良いのでお日様の光でぽかぽかですよ。使用人にお茶を用意させますね」
ユリウスさんはほわほわと、だが有無を言わせぬ雰囲気で中庭までの案内を始めた。えっちょっ、待って待って!俺を置いて話を進めないで!いや別に中庭でお茶するのは良いけど!ユリウスさん、物腰柔らかなのに押しが強いな!?マイペースか!?
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「それで実際、ヴァイナモのお嫁さんと呼ばれてどうお思いになりましたか?」
「ぶっ!」
中庭のガーデンテーブルに座り、出された紅茶を飲んでいる最中にそんなことを聞かれたので、俺は行儀が悪いのも承知で吹き出した。ゲフゲフと咳き込んでいると、使用人が大慌てでハンカチを差し出してくれた。
「ユリウス坊ちゃま!お相手が困ってしまうようなことを尋ねては駄目ですと、何度も言ってるでしょう!」
「ごめんごめん。でも気になってしまって。……それで、どうなのですか?」
使用人の苦言をふわふわと流したユリウスさんは、興味津々で俺に聞いて来る。使用人は頭を抱えて溜息をついた。これがユリウスさんの平常運転なのか。大変だな。
息が整ってきた俺はハンカチで口を拭きながら考えた。どうって、そんないきなり言われても……。ヴァイナモの、お嫁さん……?
俺の脳内に、新郎服に身を包んだヴァイナモが俺の前に跪いて俺の手を取る姿が浮かび上がった。俺は思わずボフンと顔を真っ赤にして頭を沸騰させる。
ダーヴィドがそんな俺を見てニマニマしているのが視界の端に見えたので、俺は両手で頬を隠しながらキッとダーヴィドを睨みつけた。笑うんじゃねえ!
ユリウスさんはそんな俺の様子を嬉しそうに頬を緩めた。
「嫌ではないのですね、良かったです。私はよく相手に配慮出来てない発言をする、と皆に注意されるので、今回もまた殿下の気分を害したのではないか、と心配でした」
「……いや、相手が嫌ではなくてもそう言う発言は控えた方が良いかと。最低限の礼儀ですよ」
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ユリウスさんはしゅんと萎れたように反省した。なんか小さい子みたいだな。純粋で無垢な箱入り息子って感じ。まあ実際箱入り息子なんだろうけど。アレか。人と関わる機会が極端に少なかったから、対人技能が極端に低いのか。それに天然マイペースが加わったら、そりゃもう手に負えないわな、納得。ご家族や使用人の方々の苦労が窺えるわ。
「……確かに軽率にお嫁さん、なんて言うのは良くなかったかも。そうだよね。普通自分の主との関係を疑われたら不快だよね。ヴァイナモには悪いことをしたなあ」
萎れていたユリウスさんがぽつりと呟いた。それに俺は胸を鷲掴みされたかのような痛みを感じた。そうだよね。ヴァイナモは嫌だよね。俺がお嫁さんだなんて。……俺は別に嫌じゃないけど、それがそのままヴァイナモにも当てはまるとは限らないよね。
ユリウスさんは指を弄りながらボソボソと言葉を零した。
「……でも私って結構未来予知が出来るんですよ」
「……未来予知、ですか?」
いきなりどうした電波か、と思ってしまった俺は悪くないと思う。切実に。冗談かと思ったが、ユリウスさんの表情が真剣だったので、思わず息を呑んだ。
「そうです。私がヴァイナモに『騎士に向いてそうだよね』って話した次の日にヴァイナモは父上と大喧嘩して家出しましたし」
「……いや、それは未来予知ではなく、ユリウスさんの言葉に触発されただけなのでは……?」
俺の言葉にユリウスさんは雷に打たれたように驚愕の表情を浮かべた。いや、普通に考えたらそうでしょ。なんだよ天然かよ不思議ちゃんかよ。純粋無垢な天然マイペース不思議ちゃんって要素盛りすぎだよ大渋滞してるぞ。
「……なるほど、そうとも捉えられますね……!」
「普通そうとしか捉えませんよ」
「これが、普通……。普通とはとても難しいものなのですね」
ユリウスさんは両手で口を押さえて狼狽える。そんなユリウスさんに使用人は胃痛を我慢するかの如く胸を押さえて前屈みになった。ユリウスさんのド天然発言で俺の気分を害さないかヒヤヒヤしているのだろう。大丈夫だよ。俺は心が広いから、怒ったりしないよ。お疲れ様です、使用人さん。後でオリヴァにアスモの胃薬貰ってくるから!
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2020/09/16
脱字を修正しました。
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