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動き出す時
安心する暖かさ
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とりあえず説教やら詳しい決断は明日にすることにして、その場は解散となった。一応クスターは危険人物なので、騎士の監視をつける。騎士たちの仕事を増やしやがって、全く!
気絶させられた騎士2人は意識を取り戻したけど、大事をとって明日一日は休むことにした。2人は大丈夫だと言っていたけど、俺が心配なんだよ。そのことを言ったら目を丸くして「そこまで仰るのであれば」と休むことを了承してくれた。
皆が散開しているのを見送りながら、俺はヴァイナモの方を振り返った。
「そう言えば、何故ヴァイナモはあの時駆けつけてくたのですか……?私、気が動転していてヴァイナモに魔力で危険を知らせるのを忘れていたのですが」
「ああ、エルネスティ様の施錠魔法が攻撃されたのが伝わって来たので」
「……伝達魔法にそんな機能ありましたっけ……?」
俺は首を捻った。伝達魔法は自動ではなく、意図的に魔力を送る必要があるんだけど……。しかも発動主の他の魔法とも連動するなんて、聞いたことない。何が起きたんだ?
__ 相手を好いていれば、本能的に相手の全てを受け入れてしまうのですよ__
俺はその言葉を思い出して、顔が一気に火照った。いや、違う違う。そんなんじゃないから。きっとアレだ。俺のチート魔力とヴァイナモの魔力耐性が上手い具合に組み合わさって、なんか凄いことが起こったんだそうに違いない。
「エルネスティ様?顔が赤いですよ?熱でもあるのですか?」
「えっふえっ?なんでもないですよ!」
ヴァイナモが顔を覗き込んで来たので、俺は慌てて顔を背けた。今は顔を直視出来ない!
「そうですか?ですが夜更かしもお身体によくありません。今日はもうお休みください」
「そうします。……ふわあ」
ヴァイナモの言葉に頷いた俺は、今まで我慢していた欠伸をした。やばい。今まではわちゃわちゃしてたから眠気忘れてたけど、一度考えたら眠気が再発してきた。夜更かしなんてほとんどしたことなかったから本気で眠い。変なこと考えてる場合じゃないや。一刻も早く寝たい。
俺はゴシゴシと目を擦りながらベッドに向かった。いかん。眠たくて瞼が開かない。扉からベッドまでが遠いんだよ。なんでこんな無駄に部屋が広いの?
「……大丈夫ですか?フラフラですよ?」
「眠たくて瞼が開かないだけですよ……」
「……そうですか。なら、失礼します」
何が失礼するの?と聞こうとしたその時、俺は浮遊感を覚えた。背中と膝の裏と左半身に感じる人の温もり。そして包み込むような感覚。えっ。待ってこれってもしかして……。
俺が恐る恐る目を開くと、俺はヴァイナモの腕の中に収まっていた。所謂、お姫様抱っこと言うものだ。
……いやいや!?ちょっと待ってヴァイナモさん!?
「あの、ヴァイナモ……これは……?」
「何かにぶつかってお怪我しては困りますので、俺がベッドまで運びますね」
「いえ、一人で歩けます……」
「何もない所でも躓きそうだったので」
ヴァイナモは平然とそう答えるが、俺の心は大丈夫じゃない。13歳の少年をお姫様抱っこする19歳。絵面的に大丈夫か?大丈夫なはずないわな。羞恥の象徴だわな。やめてくれ恥ずかしい。
「その、これは少し恥ずかしいです……」
「誰も見てないので大丈夫ですよ」
「いや、そう言う問題ではなく……」
「エルネスティ様に何かあってからでは遅いのです。どうかお許しくださいませんか?」
シュンと捨てらてた子犬のように眉を下げたヴァイナモに、俺はうぐっと言葉を詰まらせた。そんな顔で懇願するんじゃない罪悪感で押し潰される。
……まあヴァイナモは俺を気遣ってくれてる訳だし、ここは甘えておこうかな。ヴァイナモの腕の中って、なんだか落ち着くって言うか、安心するし……。
「……わかりました。それではお言葉に甘えて、私をベッドまでよろしくお願いします……」
「任されました」
俺はもうほとんど瞼が開いてないが、ヴァイナモがあのへにゃりとした笑みを浮かべたようにな気がした。
……なんか、ヴァイナモの腕の中って落ち着くな。安心する暖かさって言うか……。いい匂いだし……。俺の眠気の邪魔をしないようにゆっくり歩いてくれてるから、程よい揺れで眠りが助長される……。
「……暖かい……」
俺は無意識にそう呟いてギュッと丸まり、ヴァイナモの胸に擦り寄った。するとヴァイナモは抱きしめる力を強くする。この感覚、護られてるみたいで、心地よくて……。
「……好き……」
意識が暗転していく中、ヴァイナモが息を飲んだような気がした。
* * *
翌朝、俺は気持ちの良い朝日によって目が覚めた。夜更かししたはずなのに、スッキリと目覚めが良い。もしかしたらヴァイナモのお姫様抱っこには安眠効果があるのかも、と思ったところで昨日の羞恥を思い出して頬を紅潮させた。
この歳になってヴァイナモにお姫様抱っことか恥ずかしい!なんだよ誰かの腕の中が落ち着くって!赤ん坊かよ!眠気で精神が退行してんじゃねえよ恥ずかしい!
俺がベッドの上で羞恥心で悶えていると、コンコンと扉をがノックされた。
「エルネスティ様。おはようございます」
扉の向こうからヴァイナモの声が聞こえて来た。えっ待って待って今は駄目だって顔が事故ってるから!落ち着け!落ち着け自分!
「……エルネスティ様?まだお休みですか?」
「あっはい!施錠魔法を解きますね!」
俺は枕を抱きしめて顔を隠した状態で魔法を解いた。ヴァイナモは「失礼します」と言って扉を開き、中に入って来る。そして俺の姿を見て目を丸くした。
「……どうされたのですか?」
「昨日の羞恥に悶え苦しんでいます……」
「昨日の羞恥……?もしかして、寝落ちされる寸前に呟かれた、あの言葉ですか?」
「……?私、何か言ってましたか?」
おずおずと聞いてきたヴァイナモに、俺は枕から顔を上げて首を傾げた。寝落ちする寸前に何かを言った記憶がないんだけど……。なんか声に出てた!?
「……覚えていらっしゃらないのですね。なら気にしないでください。大したことではありませんので」
「えっ。気になりますって!私、一体何を言っていたのですか!?」
「……多分、知らない方がよろしいかと。十中八九、羞恥心で悶絶することになります」
ヴァイナモは言いにくそうに苦笑いした。えっ。今でさえ恥ずかしさで死にそうなのに、追い討ちになっちゃうやつ?……じゃあ俺の精神衛生のためにも聞かない方が良いかな。めっちゃ気になるけど。
「……なら聞かないことにします。ヴァイナモも私がその時何を言ったか、他言無用ですよ?」
「もちろんです。……っと、エルネスティ様はまだお着替えがお済みではありませんね。俺は一度退室致します。部屋の前で待っているので、お着替えがお済みになればお呼びください」
「わかりました」
ヴァイナモは俺がまだ寝間着姿なことに気づいた。そう言やまだだったね。すっかり忘れてた。俺が返事をすると、ヴァイナモは一礼して退室した。
俺は扉がゆっくりと閉まるのを見届けてから、ふと昨日のお姫様抱っこを思い出した。
……恥ずかしかったけど、嬉しかったな。ヴァイナモって筋肉質だから、抱擁感が心地良かったし、暖かかったし、いい匂いだし、ゆりかご効果もあったし。
またやって欲しいな……なんて贅沢な望みは万死万死!ヴァイナモに迷惑かけちゃいかんでしょ!
俺はギュッと枕に顔を埋めて、煩悩を必死で退散させた。
* * * * * * * * *
2022/03/16
誤字修正しました。
気絶させられた騎士2人は意識を取り戻したけど、大事をとって明日一日は休むことにした。2人は大丈夫だと言っていたけど、俺が心配なんだよ。そのことを言ったら目を丸くして「そこまで仰るのであれば」と休むことを了承してくれた。
皆が散開しているのを見送りながら、俺はヴァイナモの方を振り返った。
「そう言えば、何故ヴァイナモはあの時駆けつけてくたのですか……?私、気が動転していてヴァイナモに魔力で危険を知らせるのを忘れていたのですが」
「ああ、エルネスティ様の施錠魔法が攻撃されたのが伝わって来たので」
「……伝達魔法にそんな機能ありましたっけ……?」
俺は首を捻った。伝達魔法は自動ではなく、意図的に魔力を送る必要があるんだけど……。しかも発動主の他の魔法とも連動するなんて、聞いたことない。何が起きたんだ?
__ 相手を好いていれば、本能的に相手の全てを受け入れてしまうのですよ__
俺はその言葉を思い出して、顔が一気に火照った。いや、違う違う。そんなんじゃないから。きっとアレだ。俺のチート魔力とヴァイナモの魔力耐性が上手い具合に組み合わさって、なんか凄いことが起こったんだそうに違いない。
「エルネスティ様?顔が赤いですよ?熱でもあるのですか?」
「えっふえっ?なんでもないですよ!」
ヴァイナモが顔を覗き込んで来たので、俺は慌てて顔を背けた。今は顔を直視出来ない!
「そうですか?ですが夜更かしもお身体によくありません。今日はもうお休みください」
「そうします。……ふわあ」
ヴァイナモの言葉に頷いた俺は、今まで我慢していた欠伸をした。やばい。今まではわちゃわちゃしてたから眠気忘れてたけど、一度考えたら眠気が再発してきた。夜更かしなんてほとんどしたことなかったから本気で眠い。変なこと考えてる場合じゃないや。一刻も早く寝たい。
俺はゴシゴシと目を擦りながらベッドに向かった。いかん。眠たくて瞼が開かない。扉からベッドまでが遠いんだよ。なんでこんな無駄に部屋が広いの?
「……大丈夫ですか?フラフラですよ?」
「眠たくて瞼が開かないだけですよ……」
「……そうですか。なら、失礼します」
何が失礼するの?と聞こうとしたその時、俺は浮遊感を覚えた。背中と膝の裏と左半身に感じる人の温もり。そして包み込むような感覚。えっ。待ってこれってもしかして……。
俺が恐る恐る目を開くと、俺はヴァイナモの腕の中に収まっていた。所謂、お姫様抱っこと言うものだ。
……いやいや!?ちょっと待ってヴァイナモさん!?
「あの、ヴァイナモ……これは……?」
「何かにぶつかってお怪我しては困りますので、俺がベッドまで運びますね」
「いえ、一人で歩けます……」
「何もない所でも躓きそうだったので」
ヴァイナモは平然とそう答えるが、俺の心は大丈夫じゃない。13歳の少年をお姫様抱っこする19歳。絵面的に大丈夫か?大丈夫なはずないわな。羞恥の象徴だわな。やめてくれ恥ずかしい。
「その、これは少し恥ずかしいです……」
「誰も見てないので大丈夫ですよ」
「いや、そう言う問題ではなく……」
「エルネスティ様に何かあってからでは遅いのです。どうかお許しくださいませんか?」
シュンと捨てらてた子犬のように眉を下げたヴァイナモに、俺はうぐっと言葉を詰まらせた。そんな顔で懇願するんじゃない罪悪感で押し潰される。
……まあヴァイナモは俺を気遣ってくれてる訳だし、ここは甘えておこうかな。ヴァイナモの腕の中って、なんだか落ち着くって言うか、安心するし……。
「……わかりました。それではお言葉に甘えて、私をベッドまでよろしくお願いします……」
「任されました」
俺はもうほとんど瞼が開いてないが、ヴァイナモがあのへにゃりとした笑みを浮かべたようにな気がした。
……なんか、ヴァイナモの腕の中って落ち着くな。安心する暖かさって言うか……。いい匂いだし……。俺の眠気の邪魔をしないようにゆっくり歩いてくれてるから、程よい揺れで眠りが助長される……。
「……暖かい……」
俺は無意識にそう呟いてギュッと丸まり、ヴァイナモの胸に擦り寄った。するとヴァイナモは抱きしめる力を強くする。この感覚、護られてるみたいで、心地よくて……。
「……好き……」
意識が暗転していく中、ヴァイナモが息を飲んだような気がした。
* * *
翌朝、俺は気持ちの良い朝日によって目が覚めた。夜更かししたはずなのに、スッキリと目覚めが良い。もしかしたらヴァイナモのお姫様抱っこには安眠効果があるのかも、と思ったところで昨日の羞恥を思い出して頬を紅潮させた。
この歳になってヴァイナモにお姫様抱っことか恥ずかしい!なんだよ誰かの腕の中が落ち着くって!赤ん坊かよ!眠気で精神が退行してんじゃねえよ恥ずかしい!
俺がベッドの上で羞恥心で悶えていると、コンコンと扉をがノックされた。
「エルネスティ様。おはようございます」
扉の向こうからヴァイナモの声が聞こえて来た。えっ待って待って今は駄目だって顔が事故ってるから!落ち着け!落ち着け自分!
「……エルネスティ様?まだお休みですか?」
「あっはい!施錠魔法を解きますね!」
俺は枕を抱きしめて顔を隠した状態で魔法を解いた。ヴァイナモは「失礼します」と言って扉を開き、中に入って来る。そして俺の姿を見て目を丸くした。
「……どうされたのですか?」
「昨日の羞恥に悶え苦しんでいます……」
「昨日の羞恥……?もしかして、寝落ちされる寸前に呟かれた、あの言葉ですか?」
「……?私、何か言ってましたか?」
おずおずと聞いてきたヴァイナモに、俺は枕から顔を上げて首を傾げた。寝落ちする寸前に何かを言った記憶がないんだけど……。なんか声に出てた!?
「……覚えていらっしゃらないのですね。なら気にしないでください。大したことではありませんので」
「えっ。気になりますって!私、一体何を言っていたのですか!?」
「……多分、知らない方がよろしいかと。十中八九、羞恥心で悶絶することになります」
ヴァイナモは言いにくそうに苦笑いした。えっ。今でさえ恥ずかしさで死にそうなのに、追い討ちになっちゃうやつ?……じゃあ俺の精神衛生のためにも聞かない方が良いかな。めっちゃ気になるけど。
「……なら聞かないことにします。ヴァイナモも私がその時何を言ったか、他言無用ですよ?」
「もちろんです。……っと、エルネスティ様はまだお着替えがお済みではありませんね。俺は一度退室致します。部屋の前で待っているので、お着替えがお済みになればお呼びください」
「わかりました」
ヴァイナモは俺がまだ寝間着姿なことに気づいた。そう言やまだだったね。すっかり忘れてた。俺が返事をすると、ヴァイナモは一礼して退室した。
俺は扉がゆっくりと閉まるのを見届けてから、ふと昨日のお姫様抱っこを思い出した。
……恥ずかしかったけど、嬉しかったな。ヴァイナモって筋肉質だから、抱擁感が心地良かったし、暖かかったし、いい匂いだし、ゆりかご効果もあったし。
またやって欲しいな……なんて贅沢な望みは万死万死!ヴァイナモに迷惑かけちゃいかんでしょ!
俺はギュッと枕に顔を埋めて、煩悩を必死で退散させた。
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