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人間関係が広がるお年頃
エドヴァルド兄上とお話
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どうもこんにちは俺はエルネスティ。今日は絶好の魔法陣研究日和だから、図書館小部屋に閉じこもって研究しているよ!
……って言いたかったぜこんちくしょう。
「どうしたんだい?エルネスティ。表情が固いよ?」
「いえ。エドヴァルド兄上とお話しするのは久しぶりだなあと思って戦慄していただけです」
「確かに。エルネスティが建国470年の記念式典以来だもんね。もう3年ぐらいになるのかな?」
俺は豪華なソファにちょこんと座り、対面にいつもの読めない笑みで座るエドヴァルド兄上に微笑み返した。
……はい。何故かエドヴァルド兄上に呼び出されました。面倒……ゲフンゲフン、怪しいから断ろうとも思ったんだけど、丁度いい断る理由もなかったので、渋々応じることにした。今は宮殿にある皇族用のサロンにいる。エドヴァルド兄上の執事が紅茶を出してくれたけど、緊張しすぎて飲む気になれねえ。
だってエドヴァルド兄上って何考えてんのか全くわかんないんだもん!絶対見た目温厚そうだけど中身腹黒だよ!出来れば関わりたくないんだよ!自分の異母兄だけど!
「あの時は本当に驚いたなあ。これまで私のことを呼び捨てで呼んでいたのに、いきなり兄上って言われるんだから。それが嫌ならさん付けだっけ?本当、夢かと思ったよ」
「……呼び捨てで呼ばれるのがお好みで?」
「いいや?やっぱり自分の弟には『兄』と慕って欲しいものだよ」
「では遠慮なくエドヴァルド兄上、と呼ばせていただきますね」
エドヴァルド兄上はクスリと笑って、優雅に紅茶を一口飲む。その所作のひとつひとつが洗練されてて、なんかもう高貴な方ってオーラがある。もうエドヴァルド兄上が次期皇帝で良いんじゃない?俺たち兄弟の中じゃダントツで有能だって聞くし。
「……うん。今日も紅茶が美味しい。エルネスティもどうだい?美味しいよ?」
「……はい。ではいただきましょう」
そう言われたら飲むしかないよね。俺はそっとカップを手に持って、じっと水面を見る。
……これ、もしかして……!
「エルネスティ様!それを飲んではいけません!」
俺が鑑定魔法を使っていると、ヴァイナモがスッと俺とカップの間に手を滑り込ませて来た。ヴァイナモもどうやってか知らないが、この紅茶に何が入っているのか気づいたようだ。
俺は神妙に頷いてカップをテーブルに置き、エドヴァルド兄上に微笑みかけた。
「……一体どう言うおつもりで?」
「何がだい?」
「何故紅茶に睡眠薬が入っているのでしょうか?」
エドヴァルド兄上は笑みを深めた。そう。なんとこの紅茶の中には睡眠薬が混ぜられている。飲んだら直ぐに眠ってしまうだろう。別に人体に害はないんだけど、問題はそこじゃない。
「弟に睡眠薬を盛るとは、なんとも残酷な兄ですね」
「いやいや。日々魔法陣研究に勤しむ弟に十分な睡眠時間をとってもらいたい兄の親切心だよ?」
「ご冗談を」
「ふふっ。冗談だよ。これくらいのことに気づけない愚鈍だったらここで私の傀儡にしとくべきだと思ったんだよ」
エドヴァルド兄上は優しく微笑んだ後、何事もなかったかのように紅茶を飲んだ。つまりアレか。ここで引っかかって睡眠薬を飲んだら、眠ってる間に俺を色々あれこれ弄ってエドヴァルド兄上の操り人形にしようと考えていたんだな。具体的にどうするかはわかんないけど、兄上なら何かしらの方法を持ってそうって勝手なイメージ。
涼しい顔でおっそろしいこと仕掛けてきたな!?
てかなんで兄上と言いシーウェルト王子と言い、俺になんか盛ろうとするの?何なの俺ってそんな何かを盛りたくなる顔してんの??
「……そう言うことは父上が許しませんよ?」
「そうでもないよ?ちゃんと理由があれば父上は許してくれるさ。君の母君がその証拠だろう?」
「……さて、なんのことやら」
「庇うんだね。あんな母君でも」
「これでも育ててもらった恩はありますから」
俺は笑顔を崩さず、内心冷や汗タラタラだ。兄上は十中八九、俺が以前洗脳状態であったことに気づいている。その件に関しては被害者が加害者を庇ったから父上は何も言ってこないけど、父上も気づいているんだろうな。
「それより、私を傀儡にする正当な理由とは?」
「魔法陣は使い方を誤れば世界を滅ぼしかねない。愚鈍で騙されやすい人間が安易に触れるべき分野じゃないと言えば良い」
「それはエドヴァルド兄上が愚鈍で馬鹿じゃないという前提での話でしょう?そんな理由を父上が認めてくれるでしょうか?」
「ふふっ。言ってくれるね。でも君が庇ったからって理由で聞かなかったことにしたんだ。これを黙認してくれないと理不尽だよ」
兄上は少し怒りを滲ませてそう言った。よっしゃちょっとだけ化けの皮を剥いだぞ!心臓が縮む思いで煽って良かった!睡眠薬盛ったくせに飄々としやがって!お前に家族の情はないのか!
「そう恨みを込めた目で見ないでおくれ。私は次期皇帝として、自分の手駒を入念に選別しているだけなんだ」
「……もうご自分が次期皇帝であると確信していらっしゃる?」
「手厳しいね。確信はしていないけど、君が帝位争いを退いた時点で私の勝ちはほぼ決まったも同然だよ」
「……アルットゥリ兄上やアウクスティは最早敵ではない、と」
「アルットゥリはいくら頭が良くても、自分本位で物事を考えるからね。その程度の人望しかないんだよ。アウクスティ……と言うより君の母君は道を誤った。いくら才女と呼ばれた方でも、今は滑稽な道化さ」
エドヴァルド兄上は平静さを取り戻してそう言う。兄上の言い分はもっともだ。アルットゥリ兄上は自分基準で物事を考える。アスモの一件がそれを物語っている。他人の立場に立って考えることに乏しい人間が、多くの人の上に立つことが出来るはずもない。
俺の母親は確かに才女だ。男爵令嬢でありながらも第二皇妃の座を手に入れたのだから。でも今はもう権力に溺れて、優秀さをドブに捨てるような真似をしている。思うんだけど、母親は皇妃じゃなくて女官とかになった方が良かったんじゃないかな?まあ母親を第二皇妃にしたのは他でもない父上だから、なんか理由があるんだろうけど。
まあ今はそんなことどうでも良くて。とりあえずエドヴァルド兄上とのお話に集中しなくては。
「……それで?自称次期皇帝様はしがない研究者に何の御用でしょうか?」
「ふふっ。辛辣だなあ。……そうだね。君の為人を見極めるために呼び出したんだけど、事の他君が有能だってわかったから、ひとつ魔法陣の依頼をしようかな?」
「魔法陣の依頼ですか!?」
俺はパアッと笑顔になった。自分の好きなように魔法陣研究をするのも良いけど、依頼されるのはそれはそれで嬉しい。魔法陣の有効性が認められた証拠だからね!
エドヴァルド兄上は目を輝かせた俺にキョトンとしながらも、優美な笑みを浮かべて口を開いた。
「ええ。……君はもし膨大な研究費用を負担すると言われたら、魔法陣で殺人兵器を造ってくれるかい?」
* * * * * * * * *
次回は終始シリアスです。ですがその後はいつものコメディに戻りますのであしからず。
……って言いたかったぜこんちくしょう。
「どうしたんだい?エルネスティ。表情が固いよ?」
「いえ。エドヴァルド兄上とお話しするのは久しぶりだなあと思って戦慄していただけです」
「確かに。エルネスティが建国470年の記念式典以来だもんね。もう3年ぐらいになるのかな?」
俺は豪華なソファにちょこんと座り、対面にいつもの読めない笑みで座るエドヴァルド兄上に微笑み返した。
……はい。何故かエドヴァルド兄上に呼び出されました。面倒……ゲフンゲフン、怪しいから断ろうとも思ったんだけど、丁度いい断る理由もなかったので、渋々応じることにした。今は宮殿にある皇族用のサロンにいる。エドヴァルド兄上の執事が紅茶を出してくれたけど、緊張しすぎて飲む気になれねえ。
だってエドヴァルド兄上って何考えてんのか全くわかんないんだもん!絶対見た目温厚そうだけど中身腹黒だよ!出来れば関わりたくないんだよ!自分の異母兄だけど!
「あの時は本当に驚いたなあ。これまで私のことを呼び捨てで呼んでいたのに、いきなり兄上って言われるんだから。それが嫌ならさん付けだっけ?本当、夢かと思ったよ」
「……呼び捨てで呼ばれるのがお好みで?」
「いいや?やっぱり自分の弟には『兄』と慕って欲しいものだよ」
「では遠慮なくエドヴァルド兄上、と呼ばせていただきますね」
エドヴァルド兄上はクスリと笑って、優雅に紅茶を一口飲む。その所作のひとつひとつが洗練されてて、なんかもう高貴な方ってオーラがある。もうエドヴァルド兄上が次期皇帝で良いんじゃない?俺たち兄弟の中じゃダントツで有能だって聞くし。
「……うん。今日も紅茶が美味しい。エルネスティもどうだい?美味しいよ?」
「……はい。ではいただきましょう」
そう言われたら飲むしかないよね。俺はそっとカップを手に持って、じっと水面を見る。
……これ、もしかして……!
「エルネスティ様!それを飲んではいけません!」
俺が鑑定魔法を使っていると、ヴァイナモがスッと俺とカップの間に手を滑り込ませて来た。ヴァイナモもどうやってか知らないが、この紅茶に何が入っているのか気づいたようだ。
俺は神妙に頷いてカップをテーブルに置き、エドヴァルド兄上に微笑みかけた。
「……一体どう言うおつもりで?」
「何がだい?」
「何故紅茶に睡眠薬が入っているのでしょうか?」
エドヴァルド兄上は笑みを深めた。そう。なんとこの紅茶の中には睡眠薬が混ぜられている。飲んだら直ぐに眠ってしまうだろう。別に人体に害はないんだけど、問題はそこじゃない。
「弟に睡眠薬を盛るとは、なんとも残酷な兄ですね」
「いやいや。日々魔法陣研究に勤しむ弟に十分な睡眠時間をとってもらいたい兄の親切心だよ?」
「ご冗談を」
「ふふっ。冗談だよ。これくらいのことに気づけない愚鈍だったらここで私の傀儡にしとくべきだと思ったんだよ」
エドヴァルド兄上は優しく微笑んだ後、何事もなかったかのように紅茶を飲んだ。つまりアレか。ここで引っかかって睡眠薬を飲んだら、眠ってる間に俺を色々あれこれ弄ってエドヴァルド兄上の操り人形にしようと考えていたんだな。具体的にどうするかはわかんないけど、兄上なら何かしらの方法を持ってそうって勝手なイメージ。
涼しい顔でおっそろしいこと仕掛けてきたな!?
てかなんで兄上と言いシーウェルト王子と言い、俺になんか盛ろうとするの?何なの俺ってそんな何かを盛りたくなる顔してんの??
「……そう言うことは父上が許しませんよ?」
「そうでもないよ?ちゃんと理由があれば父上は許してくれるさ。君の母君がその証拠だろう?」
「……さて、なんのことやら」
「庇うんだね。あんな母君でも」
「これでも育ててもらった恩はありますから」
俺は笑顔を崩さず、内心冷や汗タラタラだ。兄上は十中八九、俺が以前洗脳状態であったことに気づいている。その件に関しては被害者が加害者を庇ったから父上は何も言ってこないけど、父上も気づいているんだろうな。
「それより、私を傀儡にする正当な理由とは?」
「魔法陣は使い方を誤れば世界を滅ぼしかねない。愚鈍で騙されやすい人間が安易に触れるべき分野じゃないと言えば良い」
「それはエドヴァルド兄上が愚鈍で馬鹿じゃないという前提での話でしょう?そんな理由を父上が認めてくれるでしょうか?」
「ふふっ。言ってくれるね。でも君が庇ったからって理由で聞かなかったことにしたんだ。これを黙認してくれないと理不尽だよ」
兄上は少し怒りを滲ませてそう言った。よっしゃちょっとだけ化けの皮を剥いだぞ!心臓が縮む思いで煽って良かった!睡眠薬盛ったくせに飄々としやがって!お前に家族の情はないのか!
「そう恨みを込めた目で見ないでおくれ。私は次期皇帝として、自分の手駒を入念に選別しているだけなんだ」
「……もうご自分が次期皇帝であると確信していらっしゃる?」
「手厳しいね。確信はしていないけど、君が帝位争いを退いた時点で私の勝ちはほぼ決まったも同然だよ」
「……アルットゥリ兄上やアウクスティは最早敵ではない、と」
「アルットゥリはいくら頭が良くても、自分本位で物事を考えるからね。その程度の人望しかないんだよ。アウクスティ……と言うより君の母君は道を誤った。いくら才女と呼ばれた方でも、今は滑稽な道化さ」
エドヴァルド兄上は平静さを取り戻してそう言う。兄上の言い分はもっともだ。アルットゥリ兄上は自分基準で物事を考える。アスモの一件がそれを物語っている。他人の立場に立って考えることに乏しい人間が、多くの人の上に立つことが出来るはずもない。
俺の母親は確かに才女だ。男爵令嬢でありながらも第二皇妃の座を手に入れたのだから。でも今はもう権力に溺れて、優秀さをドブに捨てるような真似をしている。思うんだけど、母親は皇妃じゃなくて女官とかになった方が良かったんじゃないかな?まあ母親を第二皇妃にしたのは他でもない父上だから、なんか理由があるんだろうけど。
まあ今はそんなことどうでも良くて。とりあえずエドヴァルド兄上とのお話に集中しなくては。
「……それで?自称次期皇帝様はしがない研究者に何の御用でしょうか?」
「ふふっ。辛辣だなあ。……そうだね。君の為人を見極めるために呼び出したんだけど、事の他君が有能だってわかったから、ひとつ魔法陣の依頼をしようかな?」
「魔法陣の依頼ですか!?」
俺はパアッと笑顔になった。自分の好きなように魔法陣研究をするのも良いけど、依頼されるのはそれはそれで嬉しい。魔法陣の有効性が認められた証拠だからね!
エドヴァルド兄上は目を輝かせた俺にキョトンとしながらも、優美な笑みを浮かべて口を開いた。
「ええ。……君はもし膨大な研究費用を負担すると言われたら、魔法陣で殺人兵器を造ってくれるかい?」
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