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人間関係が広がるお年頃
紆余曲折を経て友達に
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俺はイェレと言う少年の発言にどう返すべきか迷った。今はサムエルの変装魔法で顔を変えているから皇族っぽくないけど、俺の素顔は割と皇族っぽい顔と思う。ウーノさんや聖母シスターの反応見てたら余計に。
それに普段は俺が皇族っぽくて、アウクスティが皇族っぽくないと言われることの方が多かった。だから逆のことを言われると反応に困る。割と切実に。
何とも微妙な空気になり、イェレと呼ばれた少年は狼狽えた。助けを求めて視線を泳がせていると、俺の後ろに立つサムエルを見つけて指差した。
「……てかサム兄じゃん!来てたんだ!」
「はい~来てますよ~」
「リヴァ兄は!?」
「来てますけど、お取り込み中です~。ちょっと教会の方に用があるんですよ~」
「へえ。神様なんざ興味ねえって言ってたリヴァ兄が?もしかして結婚式でも挙げてんの!?恋人いるって言ってたし!」
イェレがズバリ言い当てたので、俺とヴァイナモとロヴィーサ嬢はギクッと肩を揺らした。サムエルだけがほわほわと笑って「内緒です~」と言った。流石サムエル。ブレないな。
「え~。教えてくれても良いじゃん!」
「駄目ですよ~。個人情報を暴いてはいけまん~」
いやいや、何を言うサムエルよ。お前俺の個人情報を他国に流しただろ俺は覚えてんぞ。
イェレと言う少年はムスッと頬を膨らませた。だが直ぐに頭を振って気を取り直し、クイッとサムエルの袖を引っ張った。
「じゃあ前みたいに歌ってよ!みんなこっちにいるよ!」
イェレと言う少年は目を輝かせてサムエルに強請った。サムエルの歌は子供にも人気なようだ。サムエルの歌ってホント癒しだよね!わかるよ!
「すみません~今日はエルの付き添いなので~」
「エル……?ああ!こいつのことか!お前、サム兄の知り合いか!?」
「えっ?ええ。一応兄弟です」
「一応?」
イェレと言う少年は首を傾げた。やべえ。話を振られて咄嗟に『一応』って言っちまった。本当は兄弟じゃないけど、今は兄弟って設定だった!てか口調!俺は平民少年のフリしてるのに、普通にいつも通り喋ってしまった!
俺が目を泳がせていると、スッとヴァイナモが俺の前に出た。
「実は俺たち血は繋がってないんだ」
「あっ。そう言う……ごめん。そう言うことはあまり触れちゃいけないんだよな」
イェレと言う少年は眉を下げて謝った。口調は粗雑だが、素直な良い子である。前世の歳の離れた弟に垢を煎じて飲ませてやりたい。弟はマセガキで自分から謝るのが嫌いだったからね!
「……お前、本当にアティの知り合いなのか?アティが今何してるか知ってるのか?」
「……はい。詳しく言うことは出来ませんが、アスティは元気にやっていますよ」
「……おおう。言葉遣いがお貴族様っぽい……」
イェレと言う少年は慄いた。見目平民少年で丁寧な言葉を使うのはアンバランスだったかな?でも一度使ってしまったらそれから変えるのは変だし。うん。仕方ない。気にするな少年よ!
「……と、それは良いとして。アティ、元気にしてるんだな!良かった。もう3年ぐらい会ってないから気になってたんだ」
「……来れない理由は聞かないのですか?」
「多分俺たちが踏み込んじゃいけないことだと思う。アティはお貴族様の子供だろうって他の子も言ってたし。お貴族様の子供は忙しいらしいから」
イェレと言う少年は哀しそうに笑った。何となくアウクスティの境遇を察して、身分が違いすぎることに気づいたんだろう。本当は貴族じゃなくて皇帝の息子だから想像以上に遠い存在なんだけどね。
「……君にとってアスティはどんな存在ですか?」
「どんなって……友達だぜ!」
「……お貴族のご子息だとしても?」
「たっ……確かにそうだけど……それでも!友達になるのに身分とか関係ない!アティは俺のこと友達だって言ってくれたから!俺もアティのこと友達だって言う!」
イェレと言う少年は必死にそう言う。本心からの言葉だってことは一目瞭然だ。本当にアウクスティのことを大切に思っているのだろう。
……アウクスティがこんなに良い友達を持っていたとはね。宮殿ではいつも1人で唇が青くなるまで噛み締めて俺を睨んでいたから。
「……アスティのこと、そうな風に思ってくれてありがとうございます。アスティは小さい頃から1人でいることが多かったので……」
「そうだな。アティは初対面で誤解されやすい奴だと思うぜ。でも関わってみたら凄く良い奴だから!ここにいる奴全員、アティの友達だからな!」
イェレと言う少年の陽だまりみたいな笑顔に、俺は何だか許されたような気がした。いや、何か俺がやらかした訳ではないんだけど、なんかこう……罪悪感が少し薄れたと言うか?何だこれよくわからん感情だな混乱してきたぞ!?
「……これからもアスティの友達でいてくれますか?」
「もちろん!もう会えないとしても、ずっと友達だぜ!」
「……次、アスティに会ったらそのことを伝えておきますね」
「本当か!?ありがとな!デンエル!」
……アウクスティ。こんな良い友達放ったらかしにしてまで、母親に必要とされたいのか?俺は疑問に思い、心の中でアウクスティに問うた。まあアウクスティには届かないけど。
……ん?ちょっと待って??
イェレの快晴のような笑顔に一瞬スルーしたが、今さっき、俺のことなんて呼んだ?
「あの、イェレ。この方の名前は……」
「えっ?デンエルじゃないのか?ロヴィ姉そう呼んでたじゃん!サム兄はその愛称で呼んでたんでしょ?」
「えっ?……あっ」
ロヴィーサ嬢は口を手で塞いだ。そう言やロヴィーサ嬢はずっと『殿下』って呼びかけて慌てて『エル』って呼び直していたから、『デンエル』って聞こえなくもないか……?サムエルと俺は家族設定だから、愛称で呼び合ってもおかしくないし。
でもエルネスティの偽名のエルがデンエルの愛称だと勘違いされるって、何だこれややこしいな。頭が混乱してきたぞ。
「えっ?違うの?」
「いえ。デンエルで構いませんよ」
「……なんか引っかかる言い方だなあ」
「なら『エル』と呼んでください。ロヴィ……さんもそうしてくださいね」
「えっ?あっ、はい」
ロヴィーサ嬢は当惑しているが、俺はもう諦めることにした。俺の名前はデンエル!これでよろしい!訂正するのが面倒だ!
「俺はイェレ!アティの親友だ!よろしくな、エル!」
イェレは笑顔で手を差し伸べてくる。これは握手を求められているだろうか。なんか友達みたいだな。
俺はクスクスと笑いながらイェレの手を握り返した。
「はい。よろしくお願いします。……ふふっ。何だか友達になった気分です」
「何だよ水臭いなあ。もう友達だろ!アティの友達は俺の友達!」
いえ。俺はアウクスティのお兄ちゃんです。でもデンエルはサムエルやヴァイナモと兄弟だから、アスティと兄弟な訳ないか。あれ?待って本気で困惑してきたぞ??エルネスティとアウクスティは兄弟だけど、デンエルとアスティは友達……?
うん。そう言うことにしとこう。面倒くさい。俺は、考えることを、放棄した!
それに普段は俺が皇族っぽくて、アウクスティが皇族っぽくないと言われることの方が多かった。だから逆のことを言われると反応に困る。割と切実に。
何とも微妙な空気になり、イェレと呼ばれた少年は狼狽えた。助けを求めて視線を泳がせていると、俺の後ろに立つサムエルを見つけて指差した。
「……てかサム兄じゃん!来てたんだ!」
「はい~来てますよ~」
「リヴァ兄は!?」
「来てますけど、お取り込み中です~。ちょっと教会の方に用があるんですよ~」
「へえ。神様なんざ興味ねえって言ってたリヴァ兄が?もしかして結婚式でも挙げてんの!?恋人いるって言ってたし!」
イェレがズバリ言い当てたので、俺とヴァイナモとロヴィーサ嬢はギクッと肩を揺らした。サムエルだけがほわほわと笑って「内緒です~」と言った。流石サムエル。ブレないな。
「え~。教えてくれても良いじゃん!」
「駄目ですよ~。個人情報を暴いてはいけまん~」
いやいや、何を言うサムエルよ。お前俺の個人情報を他国に流しただろ俺は覚えてんぞ。
イェレと言う少年はムスッと頬を膨らませた。だが直ぐに頭を振って気を取り直し、クイッとサムエルの袖を引っ張った。
「じゃあ前みたいに歌ってよ!みんなこっちにいるよ!」
イェレと言う少年は目を輝かせてサムエルに強請った。サムエルの歌は子供にも人気なようだ。サムエルの歌ってホント癒しだよね!わかるよ!
「すみません~今日はエルの付き添いなので~」
「エル……?ああ!こいつのことか!お前、サム兄の知り合いか!?」
「えっ?ええ。一応兄弟です」
「一応?」
イェレと言う少年は首を傾げた。やべえ。話を振られて咄嗟に『一応』って言っちまった。本当は兄弟じゃないけど、今は兄弟って設定だった!てか口調!俺は平民少年のフリしてるのに、普通にいつも通り喋ってしまった!
俺が目を泳がせていると、スッとヴァイナモが俺の前に出た。
「実は俺たち血は繋がってないんだ」
「あっ。そう言う……ごめん。そう言うことはあまり触れちゃいけないんだよな」
イェレと言う少年は眉を下げて謝った。口調は粗雑だが、素直な良い子である。前世の歳の離れた弟に垢を煎じて飲ませてやりたい。弟はマセガキで自分から謝るのが嫌いだったからね!
「……お前、本当にアティの知り合いなのか?アティが今何してるか知ってるのか?」
「……はい。詳しく言うことは出来ませんが、アスティは元気にやっていますよ」
「……おおう。言葉遣いがお貴族様っぽい……」
イェレと言う少年は慄いた。見目平民少年で丁寧な言葉を使うのはアンバランスだったかな?でも一度使ってしまったらそれから変えるのは変だし。うん。仕方ない。気にするな少年よ!
「……と、それは良いとして。アティ、元気にしてるんだな!良かった。もう3年ぐらい会ってないから気になってたんだ」
「……来れない理由は聞かないのですか?」
「多分俺たちが踏み込んじゃいけないことだと思う。アティはお貴族様の子供だろうって他の子も言ってたし。お貴族様の子供は忙しいらしいから」
イェレと言う少年は哀しそうに笑った。何となくアウクスティの境遇を察して、身分が違いすぎることに気づいたんだろう。本当は貴族じゃなくて皇帝の息子だから想像以上に遠い存在なんだけどね。
「……君にとってアスティはどんな存在ですか?」
「どんなって……友達だぜ!」
「……お貴族のご子息だとしても?」
「たっ……確かにそうだけど……それでも!友達になるのに身分とか関係ない!アティは俺のこと友達だって言ってくれたから!俺もアティのこと友達だって言う!」
イェレと言う少年は必死にそう言う。本心からの言葉だってことは一目瞭然だ。本当にアウクスティのことを大切に思っているのだろう。
……アウクスティがこんなに良い友達を持っていたとはね。宮殿ではいつも1人で唇が青くなるまで噛み締めて俺を睨んでいたから。
「……アスティのこと、そうな風に思ってくれてありがとうございます。アスティは小さい頃から1人でいることが多かったので……」
「そうだな。アティは初対面で誤解されやすい奴だと思うぜ。でも関わってみたら凄く良い奴だから!ここにいる奴全員、アティの友達だからな!」
イェレと言う少年の陽だまりみたいな笑顔に、俺は何だか許されたような気がした。いや、何か俺がやらかした訳ではないんだけど、なんかこう……罪悪感が少し薄れたと言うか?何だこれよくわからん感情だな混乱してきたぞ!?
「……これからもアスティの友達でいてくれますか?」
「もちろん!もう会えないとしても、ずっと友達だぜ!」
「……次、アスティに会ったらそのことを伝えておきますね」
「本当か!?ありがとな!デンエル!」
……アウクスティ。こんな良い友達放ったらかしにしてまで、母親に必要とされたいのか?俺は疑問に思い、心の中でアウクスティに問うた。まあアウクスティには届かないけど。
……ん?ちょっと待って??
イェレの快晴のような笑顔に一瞬スルーしたが、今さっき、俺のことなんて呼んだ?
「あの、イェレ。この方の名前は……」
「えっ?デンエルじゃないのか?ロヴィ姉そう呼んでたじゃん!サム兄はその愛称で呼んでたんでしょ?」
「えっ?……あっ」
ロヴィーサ嬢は口を手で塞いだ。そう言やロヴィーサ嬢はずっと『殿下』って呼びかけて慌てて『エル』って呼び直していたから、『デンエル』って聞こえなくもないか……?サムエルと俺は家族設定だから、愛称で呼び合ってもおかしくないし。
でもエルネスティの偽名のエルがデンエルの愛称だと勘違いされるって、何だこれややこしいな。頭が混乱してきたぞ。
「えっ?違うの?」
「いえ。デンエルで構いませんよ」
「……なんか引っかかる言い方だなあ」
「なら『エル』と呼んでください。ロヴィ……さんもそうしてくださいね」
「えっ?あっ、はい」
ロヴィーサ嬢は当惑しているが、俺はもう諦めることにした。俺の名前はデンエル!これでよろしい!訂正するのが面倒だ!
「俺はイェレ!アティの親友だ!よろしくな、エル!」
イェレは笑顔で手を差し伸べてくる。これは握手を求められているだろうか。なんか友達みたいだな。
俺はクスクスと笑いながらイェレの手を握り返した。
「はい。よろしくお願いします。……ふふっ。何だか友達になった気分です」
「何だよ水臭いなあ。もう友達だろ!アティの友達は俺の友達!」
いえ。俺はアウクスティのお兄ちゃんです。でもデンエルはサムエルやヴァイナモと兄弟だから、アスティと兄弟な訳ないか。あれ?待って本気で困惑してきたぞ??エルネスティとアウクスティは兄弟だけど、デンエルとアスティは友達……?
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