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帝位継承権争い?興味ねえ!
人形が急に変人になったらそりゃ話題になるわな
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さてさて前世の記憶を思い出して母親を脅し……ゲフンゲフン、説得して図書館行って本読んで魔法陣ひゃっほいしてカレルヴォ兄上呼びするという怒涛の一日が過ぎて、ただ今翌朝のベッドの上であります。掛け布団に頭からすっぽりと入っていると、ヴァイナモがモーニングコールをしに来た。えっ?君って護衛騎士だよね?なんで使用人みたいなことしてるの?まあ第二皇妃が執事を付けてくれなかったんだけど。
「おはようございます、殿下。昨日は良く眠れましたか?」
「10秒に1回くらいは魔法陣のことを思い出して大興奮してしまったので寝不足です」
「寝たら元に戻ってたとか無くて良かった……いや良いのか?」
「聞こえてますよ」
「あっ、すみません」
定型化してきたこの会話だけど、いちいち反省するヴァイナモぐう真面目。でも猛反省って訳じゃないから気安くて良いな。
「ちなみに興奮して鼻血を出すこと15回。見てください、枕が血だらけです」
「えっ!?大丈夫ですか!?貧血なっていませんかっ!?頭痛は!?吐き気は!?脱水症状は!?鼻血を舐めてはいけませんよ!?ああお顔にも鼻血の跡が!髪にも固まった血がこべりついてる!」
俺は鼻血のことを冗談めかして言ったのだが、ヴァイナモが血相を変えて俺の布団をひっぺがした。そして俺の顔を見すごい形相で詰め寄ってくる。ちょちょっ、近いって……!
「殿下、メイドを呼びますので今すぐ湯浴みしてきてください。このベッドも片付けさせます」
「いや、お風呂ぐらい自分で……」
「何を仰るかっ!何処に血が付いているかわからないのですよ!?それにいつも……っと、すみません。殿下はいつも自分でお風呂に入られていましたね」
湯浴みにメイドが同行するのを渋る俺に鬼気迫る表情で詰め寄っていたヴァイナモは、ふと我に帰って謝罪を口にする。皇族などの身分の高い人はメイドなどに身体を洗ってもらうのが普通だ。しかし俺の場合、第二皇妃がそれを拒否した。下手に他人に身体を触られて、魔力が暴走するのを恐れたからだ。まあその点に関しては母親に感謝してなくもない。前世の記憶が色濃い俺にとって、身体を洗われるのには抵抗があるし。しかも中身成人男性だからね?若い女の子に身体洗われるとか、セクハラにならないかといたたまれない。
「……わかりました。湯の準備をさせますので、お風呂はお独りでお入りください。その代わり、全身隈無く洗ってくださいね」
「わかってますよ。ベッドの片付け、よろしくお願いします」
「と言っても、やるのはメイドですがね」
ヴァイナモは苦笑いをした後、ベッドの様子を再確認して「うわ~これは酷い」と零した。殺人事件があったのかと疑うほど血だらけだから無理もないよな。あ~貧血でちょっとふらふらするな。
俺が少しふらつくと慌ててヴァイナモが俺の肩を支えて「本当に一人で入れますか?」と不安げに聞いてきた。心配性だなあ全く。……嫌じゃないけど。寧ろ嬉しいけど。俺は「大丈夫ですよ」と笑って答えた。ヴァイナモは眉を下げたままだ。
お風呂から上がった俺を待っていたのは鉄分たっぷりの朝食達であった。料理人に命じて作ってもらったのだろう。ヴァイナモ……心遣いは嬉しいけど、朝からレバーはキツいって……。
* * *
俺の鼻血事件はお風呂の準備とベッドの片付けをしたメイド達、そして鉄分朝食を作った料理人達によって瞬く間に広まったようだ。図書館へ向かう途中、いつも以上に視線がこちらをちらちらと向いては、コソコソと話し声が聞こえてくる。ヴァイナモは申し訳無さげに「他言無用にしとけば良かったですね。気が利かなくてすみません」と謝ってきたから、大丈夫だと笑っておいた。俺の金剛メンタル舐めんなよ!人の視線はアクセサリーだ!……イキってすんません。
「兄上!」
視線が鬱陶しいなあと思いつつ歩いていると、背後から声をかけられた。俺を兄上と呼ぶ奴は一人しかいない。
「どうかしましたか?アウクスティ」
「どうしたもこうしたもない!昨日母上に何を言った!?」
アウクスティ・エスコ・ケルットゥリ・ニコ・ハーララ。この国の第六皇子であり、第二皇妃の次男、つまり俺の同母弟だ。母親の熱意が全て俺に向いていたから、俺のことをライバル視している。
「何をって……私のことは放っておいてくれと伝えただけですよ」
「嘘だ!母上は可哀想なぐらい震えていた!」
ええ~でも本当に大したこと言って無いんだけどな~。俺がコテンと首を傾げるとヴァイナモから「惚けても無駄なのでは……?」という視線を送られた。本当に何のことだかわからねえんですわ~(棒)
「ふっはは!兄上も落ちぶれたな!母上は『もうアウクスティだけが頼りだ』と仰ってくれた!つまり兄上は見限られたのだ!残念だな!今まであんなに頑張って母上に媚び売っていたのに!」
アウクスティはドヤ顔で言ってきた。ああ~俺に言うこと聞かせるのは無理だと判断して、アウクスティの方に行ったか~。まあアウクスティは母親に構って欲しがってたし、丁度良いんでね?
てか誰があんな自己中に媚び売るかよ。あれ完成に恐怖政治予備軍だよ。好きでやってた訳無いじゃん。
「その点俺は母上の期待に答えられる!俺は兄上に勝った!今まで俺を見下しやがって、ざまあみろ!」
おお~すごい自信。そしてめっちゃシンプルな罵倒。今まで鬱憤が溜まってたんだな~。お前も大変だな。
アウクスティの失礼な物言いにヴァイナモが剣を抜きそうになったから片手で制した。ヴァイナモは納得いかないといった視線をこちらに寄せて来るが、俺は笑顔で首を振る。こんな子供の癇癪にいちいち反応しても意味ないよ。
そんな余裕の対応が気に食わなかったのか、アウクスティは唇を噛み締めて睨んできた。そんなに強く噛むと唇荒れるぞ~。
「っ!聞いたぞ、兄上!魔法陣学とか言う落ちこぼれ学問の研究をしていると!はっ!魔法の神童と謳われたのははったりだったとはな!余計な見栄を張るから恥をかくんだ!」
「……は?今、何と言いましたか?」
「えっ……だっ、だから余計な見栄を……」
「魔法陣学を、貴方は、何と、呼びましたか?」
「だから……!落ちこぼれ学問……ヒィッ!」
俺の様子が急変したことに当惑したアウクスティは、俺が魔力で威圧すると涙を浮かべて腰を抜かした。こんな所で座り込むのはばっちいぞ?
「私のことを馬鹿にするのは一向に構いません。変人なのは事実ですし、気にしませんので。ですが、私の愛してやまない魔法陣を侮辱するのなら……即刻、死ね」
笑顔から急変、絶対零度の眼差しをアウクスティに向けると涙と鼻水でぐしゃぐしゃにした顔のまま逃げるように踵を返して行った。この程度で恐怖するのであれば、アウクスティは誰かの物を奪う権利はない。
他人の大切な物を奪うのであれば、それ相応の責任が必要なのだから。
* * * * * ** * *
2020/06/20
アウクスティの説明を『同母兄』から『同母弟』に修正しました。
「おはようございます、殿下。昨日は良く眠れましたか?」
「10秒に1回くらいは魔法陣のことを思い出して大興奮してしまったので寝不足です」
「寝たら元に戻ってたとか無くて良かった……いや良いのか?」
「聞こえてますよ」
「あっ、すみません」
定型化してきたこの会話だけど、いちいち反省するヴァイナモぐう真面目。でも猛反省って訳じゃないから気安くて良いな。
「ちなみに興奮して鼻血を出すこと15回。見てください、枕が血だらけです」
「えっ!?大丈夫ですか!?貧血なっていませんかっ!?頭痛は!?吐き気は!?脱水症状は!?鼻血を舐めてはいけませんよ!?ああお顔にも鼻血の跡が!髪にも固まった血がこべりついてる!」
俺は鼻血のことを冗談めかして言ったのだが、ヴァイナモが血相を変えて俺の布団をひっぺがした。そして俺の顔を見すごい形相で詰め寄ってくる。ちょちょっ、近いって……!
「殿下、メイドを呼びますので今すぐ湯浴みしてきてください。このベッドも片付けさせます」
「いや、お風呂ぐらい自分で……」
「何を仰るかっ!何処に血が付いているかわからないのですよ!?それにいつも……っと、すみません。殿下はいつも自分でお風呂に入られていましたね」
湯浴みにメイドが同行するのを渋る俺に鬼気迫る表情で詰め寄っていたヴァイナモは、ふと我に帰って謝罪を口にする。皇族などの身分の高い人はメイドなどに身体を洗ってもらうのが普通だ。しかし俺の場合、第二皇妃がそれを拒否した。下手に他人に身体を触られて、魔力が暴走するのを恐れたからだ。まあその点に関しては母親に感謝してなくもない。前世の記憶が色濃い俺にとって、身体を洗われるのには抵抗があるし。しかも中身成人男性だからね?若い女の子に身体洗われるとか、セクハラにならないかといたたまれない。
「……わかりました。湯の準備をさせますので、お風呂はお独りでお入りください。その代わり、全身隈無く洗ってくださいね」
「わかってますよ。ベッドの片付け、よろしくお願いします」
「と言っても、やるのはメイドですがね」
ヴァイナモは苦笑いをした後、ベッドの様子を再確認して「うわ~これは酷い」と零した。殺人事件があったのかと疑うほど血だらけだから無理もないよな。あ~貧血でちょっとふらふらするな。
俺が少しふらつくと慌ててヴァイナモが俺の肩を支えて「本当に一人で入れますか?」と不安げに聞いてきた。心配性だなあ全く。……嫌じゃないけど。寧ろ嬉しいけど。俺は「大丈夫ですよ」と笑って答えた。ヴァイナモは眉を下げたままだ。
お風呂から上がった俺を待っていたのは鉄分たっぷりの朝食達であった。料理人に命じて作ってもらったのだろう。ヴァイナモ……心遣いは嬉しいけど、朝からレバーはキツいって……。
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俺の鼻血事件はお風呂の準備とベッドの片付けをしたメイド達、そして鉄分朝食を作った料理人達によって瞬く間に広まったようだ。図書館へ向かう途中、いつも以上に視線がこちらをちらちらと向いては、コソコソと話し声が聞こえてくる。ヴァイナモは申し訳無さげに「他言無用にしとけば良かったですね。気が利かなくてすみません」と謝ってきたから、大丈夫だと笑っておいた。俺の金剛メンタル舐めんなよ!人の視線はアクセサリーだ!……イキってすんません。
「兄上!」
視線が鬱陶しいなあと思いつつ歩いていると、背後から声をかけられた。俺を兄上と呼ぶ奴は一人しかいない。
「どうかしましたか?アウクスティ」
「どうしたもこうしたもない!昨日母上に何を言った!?」
アウクスティ・エスコ・ケルットゥリ・ニコ・ハーララ。この国の第六皇子であり、第二皇妃の次男、つまり俺の同母弟だ。母親の熱意が全て俺に向いていたから、俺のことをライバル視している。
「何をって……私のことは放っておいてくれと伝えただけですよ」
「嘘だ!母上は可哀想なぐらい震えていた!」
ええ~でも本当に大したこと言って無いんだけどな~。俺がコテンと首を傾げるとヴァイナモから「惚けても無駄なのでは……?」という視線を送られた。本当に何のことだかわからねえんですわ~(棒)
「ふっはは!兄上も落ちぶれたな!母上は『もうアウクスティだけが頼りだ』と仰ってくれた!つまり兄上は見限られたのだ!残念だな!今まであんなに頑張って母上に媚び売っていたのに!」
アウクスティはドヤ顔で言ってきた。ああ~俺に言うこと聞かせるのは無理だと判断して、アウクスティの方に行ったか~。まあアウクスティは母親に構って欲しがってたし、丁度良いんでね?
てか誰があんな自己中に媚び売るかよ。あれ完成に恐怖政治予備軍だよ。好きでやってた訳無いじゃん。
「その点俺は母上の期待に答えられる!俺は兄上に勝った!今まで俺を見下しやがって、ざまあみろ!」
おお~すごい自信。そしてめっちゃシンプルな罵倒。今まで鬱憤が溜まってたんだな~。お前も大変だな。
アウクスティの失礼な物言いにヴァイナモが剣を抜きそうになったから片手で制した。ヴァイナモは納得いかないといった視線をこちらに寄せて来るが、俺は笑顔で首を振る。こんな子供の癇癪にいちいち反応しても意味ないよ。
そんな余裕の対応が気に食わなかったのか、アウクスティは唇を噛み締めて睨んできた。そんなに強く噛むと唇荒れるぞ~。
「っ!聞いたぞ、兄上!魔法陣学とか言う落ちこぼれ学問の研究をしていると!はっ!魔法の神童と謳われたのははったりだったとはな!余計な見栄を張るから恥をかくんだ!」
「……は?今、何と言いましたか?」
「えっ……だっ、だから余計な見栄を……」
「魔法陣学を、貴方は、何と、呼びましたか?」
「だから……!落ちこぼれ学問……ヒィッ!」
俺の様子が急変したことに当惑したアウクスティは、俺が魔力で威圧すると涙を浮かべて腰を抜かした。こんな所で座り込むのはばっちいぞ?
「私のことを馬鹿にするのは一向に構いません。変人なのは事実ですし、気にしませんので。ですが、私の愛してやまない魔法陣を侮辱するのなら……即刻、死ね」
笑顔から急変、絶対零度の眼差しをアウクスティに向けると涙と鼻水でぐしゃぐしゃにした顔のまま逃げるように踵を返して行った。この程度で恐怖するのであれば、アウクスティは誰かの物を奪う権利はない。
他人の大切な物を奪うのであれば、それ相応の責任が必要なのだから。
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2020/06/20
アウクスティの説明を『同母兄』から『同母弟』に修正しました。
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