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帝位継承権争い?興味ねえ!

母親を脅し……ゲフンゲフン、説得する

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「皇帝なんて興味ねえ!俺は魔法陣究める!」

おっと気持ちが先走って目覚めた瞬間叫んじまった。失敬失敬。護衛騎士よ、こちらを凝視するでない。

「……殿下!お目覚めですかっ!?」

驚きで固まっていた護衛騎士が我に帰って駆け寄ってきた。彼は俺が倒れた時にすぐ側にいた、俺のただ一人の専属護衛騎士だから、心配かけたんだろうな。

「あ~、うん。なんとか……」

「直ぐに医者をお呼びします。少々お待ちください」

俺がへらっと笑うと護衛騎士は少し瞠目しつつも部屋の外にいる他の護衛騎士に指示を出しに行った。ちなみにこの護衛騎士は俺というよりかは皇族や宮殿を護ってる人たちだ。

そういやさっき俺の態度に驚いていたな。まあ当然か。今まで母親の傀儡として、人形のごとく無表情・無感情な少年だったもんな。んーどうしよ。あんま前世の俺の態度を出しすぎてもあれだな……よし、喋る時は今まで通り敬語使おう。

「体調はいかがですか?どこか調子の悪いところはありますか?」

「いいえ、大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」

俺の身体を気遣う護衛騎士に微笑んでお礼を言ったら、目を見開いて固まった。そしてハッとなって慌てて自分なんかに礼は不要だと言ってきた。その慌てぶりがおかしくて、俺はクスクス笑う。そんな俺に護衛騎士はまたも驚いた表情を浮かべた。

「……何やらご様子が今までと違うようですが……失礼ながら、いかがなさいました?」

「ん?えっと……気を失っている間、少々怖い怖い夢を見まして、今まで恐れていたものが途端に恐ろしく無くなったのです。そうしたら気分が軽くなりまして……」

「……夢、とはどのようなもので?」

「んっとね……世界を冒涜するような、とっても恐ろしいことです」

無礼より好奇心が勝った護衛騎士の質問に、俺は微笑みながらそう曖昧に答えた。そりゃ魔法のない前世の世界で死んだら、魔法のある異世界で生まれ変わっていたなんて、作り話のようだ。こんなこと、あっていいのか。なんか自分が世界の歯車を狂わせているようで、ワクワクする。

護衛騎士は怪訝な表情を浮かべるが、これ以上俺が何か言うつもりがないことを察したのか、言葉を続けることはなかった。


* * *


その後医者に見てもらって、異状がないことを確認した。俺より護衛騎士の方が安堵していたんだから、ちょっと笑える。本当に心配してくれてるんだなと思うと、胸が暖かくなった。

そういえばこの護衛騎士の名前ってなんだろ。いや自分の専属護衛騎士だろって指摘されたら何とも言えないけど……前世思い出すまでの俺って基本皇帝の座にしか興味なかったから。それに母親の影響で選民思想もあったから、どこか騎士を見下してたとこあったし。騎士って大体平民か、中級貴族以下の三男四男あたりが多いからね。

今更でちょっと気まずいけど、名前を尋ねよう。そう思って口を開こうとした時、扉がノックされた。

「第二皇妃殿下がお越しです」

外にいる騎士のくぐもった声が聞こえた。おお!丁度母親に用があったんだよ!自ら出向く必要が無くなった!ラッキー!護衛騎士の名前は後で良いや。俺の今後によれば彼が俺の専属護衛騎士から外れる可能性もあるんだし、母親とのお話が終わってからでも遅くないよね!

俺はそう判断して、入室許可を騎士に出した。


* * *


「大丈夫そうなのね、良かった。貴方は将来、皇帝になるんですから、身体に異状があっては大変だわ」

うーん。それが子を心配する母親の言うことか?

入ってきた母親に事務的な報告をして、もう大丈夫だと伝えると、そう返ってきた。やっぱり俺は貴女にとって自分の地位を上げる道具でしかないんだね。今の言葉で確証した。実の母親より護衛騎士の方がよっぽど親身になって心配してくれたとか、なんの笑い話だよ。まあ知ってたけど。

それに今の俺はそれを受け入れるような都合の良い傀儡じゃないし。

「お言葉ですが、母上。今の私は皇帝になるつもりは全くもってありません。変なことは仰らないでください」

俺の言葉に目の前の母親と視界の端にいる護衛騎士は瞠目した。これが生まれて初めての母親への反抗。そしてそれは今までの人生を全否定するものなのだから、無理もない。

「……エルネスティ、今、なんと?」

「皇帝になるつもりはないと申しております。耳が遠くなられましたか?老化ですか?」

信じられないと聞き返してきた母親に挑発を返すと、みるみるうちに茹で蛸のごとく顔を真っ赤にさせた。激おこだ。こんなに母親を怒らせたことは初めてだなあ。

「なっ!?貴方は今までなんのために努力して来たと思ってるの!?ふざけたことは言わないで!冗談なら今すぐ撤回しなさい!」

「いいえ、私は本気で言っています」

「私の言うことが聞けないの!?」

「ええ。逆になんで聞く必要があるのですか?」

俺は魔力の一部を部屋に充満させた。その威圧に母親は声を引き攣らせて青ざめる。視界の端の護衛騎士も臨戦態勢をとり、腰の剣に手をかけた。

「これまでは貴女が怖かった。だから貴女の言うことを聞いていた。でも今は貴女のことなんてこれっぽっちも怖くありません。なら私は貴女の命令を聞く必要はありませんよね?」

「なん……で……こんな……!」

「人間って人の力が及ばないような、そんな恐怖を味わえば、意外と今まで恐れていたことや悩んでいたことがどうでも良くなるんですよ?」

俺は諭すような優しい口調で微笑みながらそう告げる。母親は血が通っていないかのような顔面蒼白で、小刻みに震えていた。母親にとって、最悪の事態が起きたのだ。無理もない。

「ご安心ください。私は貴女が何をしようと、興味がございません。こちらの邪魔をしなければ、貴女の邪魔も致しません。しかし、少しでもこちらに害を成した場合……どうなっても知りませんよ?」
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