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魔道賢者アイザック
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ネビュラ・メイガスとして力を取り戻したタケルが、森での修業を再開し始めた頃、テスラ王立図書館の館長を務めるコルネリスは、図書館の禁書エリアで大量の文献あいてに格闘していた。
ネビュラメイガスに関する情報を集めるためである。
コルネリスは記録司書という特別な職業(クラス)についている。
記録司書は戦闘職ではないが、本来魔法に使うはずの魔力を記憶へと変換することで、膨大な書物の内容を把握することができる。
この能力を活用して彼は、図書館の監理や来館者への助言などを行っていた。
あの日、ネビュラに関する資料を探す、タケル達に話しかけたのもコルネリスであった。
ネビュラの危険性について警告はしたが、悪意を持ったわけではない。
懸命に本を調べる若者たちの様子には、それとなく注意を払っていた。
ジーモンがタケル達に絡んでいるのも、目撃していた。
王立図書館のエントランスで暴行に及ぶなど、魔法貴族といえども到底ゆるされることではない。
あれは確かペルシュマン伯爵の息子だったはず、この王都でも素行が悪い事で知られている男だ。
ペルシュマン伯爵は急速に勢力を拡大している魔法貴族で、黒い噂の絶えない人物で、領地では禁忌に近い魔法実験なども行われていると聞く。
親が親なら子も子ということか、この件が片付いたら厳重に注意しなくてはなるまい。
館長であるコルネリスは、タケルとジーモンのいざこざをその場で収めることもできたが、すぐに止めることはしなかった。
エルフや亜人を連れた平民の若者が、どうやってトラブルに対処するのか興味が湧いたのだ。
結果としてタケルがネビュラ・メイガスに覚醒するのを目撃することとなったのだが、彼が受けた衝撃は並大抵のものではなかった。
(あれは、ネビュラ系魔法?いやしかしそんなはずは
だがあの魔法は明らかにダークマターを含んでおった。)
ダークマターを使いこなす系統の魔法などコルネリスの知識をもってしても一つしかない。
(ネビュラ・メイガスとでもいうつもりか?)
タケル達がジーモンとその部下たちを撃退して図書館を去ると、コルネリスはすぐに王城に向かった。
自らの師である人物に目にした出来事を報告するためである。
その人物とは、魔道賢者アイザック。魔法王国を名乗るテスラ国の誇る最強の魔導士であり、大陸でも最高峰の魔導士の一人と認められている人物である。
魔術の才能がないとあきらめかけていたコルネリスの才能を見抜き、記録司書への道を示してくれた恩師でもある。
秘匿の延命魔術を重ねて自らにかけ数百年を生き抜いてきたアイザックに比べれば、80才を超えて長老と呼ばれることもある自分でさえもまだひよっこであった。
国王の相談役も務めているアイザックは王城内に広い個室を与えられており、そこを住居兼研究室としている。
「師よ。取り急ぎご報告したいことがあって参りました。」
「コルネリス、お主が王城まで来るとは珍しい。まあ楽にするがよい。」
コルネリスは自らが管理する王立図書館で起こった事を伝える。
「ネビュラ・メイガスだと、にわかには信じがたい出来事じゃな。」
「師よ。私は・・・」
「わかっておる、お主ほどの者が言うのだ。ただ事ではあるまい。こちらでも調べてみよう。」
コルネリスが退室した後、アイザックは一人で思案した。
「ネビュラ・メイガスとは、事実だとすれば厄介な者が現れたものだ。」
オーガ族の動きが慌ただしくなっている今、他の問題に時間を割いている時間は無い。
とはいえこの問題を、放置しておくわけにはいかない。
「暗部の者を呼べ」
暗部とは主に情報収集を目的をする部署で、国王直轄でありその指揮権はアイザックに一任されている。
「タケルという魔術師の身元を洗い出せ。その者はメイガスの可能性がある。」
「メイガス・・・」
「そうだ。くれぐれも相手に覚られぬようにな。」
コルネリスの報告を重く見たアイザックは、自身の部下を使ってタケルについて調べさせることを決めた。
ネビュラメイガスに関する情報を集めるためである。
コルネリスは記録司書という特別な職業(クラス)についている。
記録司書は戦闘職ではないが、本来魔法に使うはずの魔力を記憶へと変換することで、膨大な書物の内容を把握することができる。
この能力を活用して彼は、図書館の監理や来館者への助言などを行っていた。
あの日、ネビュラに関する資料を探す、タケル達に話しかけたのもコルネリスであった。
ネビュラの危険性について警告はしたが、悪意を持ったわけではない。
懸命に本を調べる若者たちの様子には、それとなく注意を払っていた。
ジーモンがタケル達に絡んでいるのも、目撃していた。
王立図書館のエントランスで暴行に及ぶなど、魔法貴族といえども到底ゆるされることではない。
あれは確かペルシュマン伯爵の息子だったはず、この王都でも素行が悪い事で知られている男だ。
ペルシュマン伯爵は急速に勢力を拡大している魔法貴族で、黒い噂の絶えない人物で、領地では禁忌に近い魔法実験なども行われていると聞く。
親が親なら子も子ということか、この件が片付いたら厳重に注意しなくてはなるまい。
館長であるコルネリスは、タケルとジーモンのいざこざをその場で収めることもできたが、すぐに止めることはしなかった。
エルフや亜人を連れた平民の若者が、どうやってトラブルに対処するのか興味が湧いたのだ。
結果としてタケルがネビュラ・メイガスに覚醒するのを目撃することとなったのだが、彼が受けた衝撃は並大抵のものではなかった。
(あれは、ネビュラ系魔法?いやしかしそんなはずは
だがあの魔法は明らかにダークマターを含んでおった。)
ダークマターを使いこなす系統の魔法などコルネリスの知識をもってしても一つしかない。
(ネビュラ・メイガスとでもいうつもりか?)
タケル達がジーモンとその部下たちを撃退して図書館を去ると、コルネリスはすぐに王城に向かった。
自らの師である人物に目にした出来事を報告するためである。
その人物とは、魔道賢者アイザック。魔法王国を名乗るテスラ国の誇る最強の魔導士であり、大陸でも最高峰の魔導士の一人と認められている人物である。
魔術の才能がないとあきらめかけていたコルネリスの才能を見抜き、記録司書への道を示してくれた恩師でもある。
秘匿の延命魔術を重ねて自らにかけ数百年を生き抜いてきたアイザックに比べれば、80才を超えて長老と呼ばれることもある自分でさえもまだひよっこであった。
国王の相談役も務めているアイザックは王城内に広い個室を与えられており、そこを住居兼研究室としている。
「師よ。取り急ぎご報告したいことがあって参りました。」
「コルネリス、お主が王城まで来るとは珍しい。まあ楽にするがよい。」
コルネリスは自らが管理する王立図書館で起こった事を伝える。
「ネビュラ・メイガスだと、にわかには信じがたい出来事じゃな。」
「師よ。私は・・・」
「わかっておる、お主ほどの者が言うのだ。ただ事ではあるまい。こちらでも調べてみよう。」
コルネリスが退室した後、アイザックは一人で思案した。
「ネビュラ・メイガスとは、事実だとすれば厄介な者が現れたものだ。」
オーガ族の動きが慌ただしくなっている今、他の問題に時間を割いている時間は無い。
とはいえこの問題を、放置しておくわけにはいかない。
「暗部の者を呼べ」
暗部とは主に情報収集を目的をする部署で、国王直轄でありその指揮権はアイザックに一任されている。
「タケルという魔術師の身元を洗い出せ。その者はメイガスの可能性がある。」
「メイガス・・・」
「そうだ。くれぐれも相手に覚られぬようにな。」
コルネリスの報告を重く見たアイザックは、自身の部下を使ってタケルについて調べさせることを決めた。
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