インテリジェンス(INT)に一点振りしても地頭(ぢあたま)は良くなりませんよ。

江戸川 陸

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王都ウィニスにて

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王都ウィニスは大国テスラの中心だけのことはある。
巨大な城壁に囲まれて、俺がいままで見た町と比べてもけた違いにデカい都市だ。
都市の構造は王城を軸に、その周囲に魔法貴族の邸宅を配置した中心部と、市場や宿などの商業施設や平民の住宅などが立ち並ぶ周辺部に分かれている。

商業地区でもある周辺部は人の出入りも多く、都市に入るチェックも厳しくないようだ。
御者が王都までの道中で俺が魔法で盗賊達を撃退したことを報告すると、門番も俺を魔法貴族と勘違いしたのか簡単なチェックだけで王都の入ることができた。

「凄い都市ですね。圧倒されてしまいます。」
「ああ、確かにここならネビュラ・メイガスに関する手掛かりが見つかるかもしれないな」
「タケルお兄ちゃん、あっちに屋台がいっぱいあるよ。」

カントの町とは比べ物にならない規模の市が開かれており、沢山の屋台がズラリと並んでいる。
活気ある雰囲気にひかれて、俺達は市場をしばらく散策することにした。
セフィアルとレクイルも楽しそうに、屋台の小物を手に取って見ている。

「邪魔だッ!どけ、平民共ッ!」
俺達が屋台見物を楽しんでいると、当然市場の一角が騒然となる。

立派な服を着込んでパンパンになっているおデブちゃんが、取り巻きを連れて通りの中央を堂々と歩いて来る。たぶん魔法貴族だろう。

「ぷっ、お姉ちゃん。あの人まん丸だよ。」
「しっ、レクイル。見てはいけません。」

レクイルの声を聞きつけたわけでもないだろうが、ヤバイ、こっちにやって来る。

「セフィアル、レクイル。ここから離れよう。」
俺が二人に声をかけたときはもう遅かった。

「なんだお前ら、魔法のかかったフードを被っているな。」
おデブでも魔法貴族だけあって、俺達のフードに気がついたらしい。

「おいッ、そこの者達、俺は魔法貴族ペルシュマン伯爵家の長男、ジーモンだ。
命令だ。今すぐそのフードを取って素顔を見せろッ!」
おデブとはいえ家名を名乗って命令してくる魔法貴族に逆らうのはまずそうだ。
俺達はフードを取って素顔を見せざるをえなかった。

「やっぱりだ。俺様の美少女センサーに狂いはなかったぜ。」
なんだその意味不明なセンサーは?
ジーモンはセフィアルとレクイルを見てニンマリと笑みを浮かべる。

「どれ、俺様が可愛がってやろう。」
バカ息子が手を伸ばしてくるが、セフィアルはスッと身をかわす。

「なにッ?おいッ、こらッ、逃げるな。大人しくしろ」
デブ貴族が何度も腕を伸ばしてセフィアルを捕まえようとするが、簡単にかわされてしまう。

「おいッ、こいつらを取り囲め。」
バカ貴族の命令での取り巻きが動き出した。

これはまずいな、緊急回避策発動だ。
俺がフォトン・ブラストを地面に叩きつけると大量の砂ぼこりが舞い上がる。

「セフィアル、レクイル、今のうちに逃げるぞ。」
バカ息子とはいえ、本物の魔法貴族とのもめごとはごめんだ。
俺達は砂ぼこりに隠れて、スタコラとその場を逃げ出した。

それを偶然、屋台で買い食いをしていた少女が目撃する。
「フウン、あの子達、面白そうね。」
モグモグとマッド・ボアの串焼き肉を頬張りながらつぶやいた。
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