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魔法王国テスラへ

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フォトンブラストを除く全ての魔法が使えなくなってしまった俺は、なんとか回復策を見つけるため、早々に魔法王国テスラに向かうことになった。
テスラは魔法王国を名乗るだけあって、大陸で最も進んだ魔法文化を持つと言われている。
国王テスラ13世のもとで、魔法貴族を軸とした確固たる統治体制を築いており、人族がオーガ族との戦争で勢力圏を維持できているのも、この国の魔法騎士団の存在が大きい。

ただ、大国であるがゆえにの歪みもある。
亜人に対する差別や貴族絶対優位の政治など、タケル達のような庶民と亜人からなるパーティーにとっては、近づきたくない場所であることは間違いない。
とはいえテスラ国での魔法研究が進んでいるのも事実、使えなくなった魔法を復活させるために、今回は危険を冒してでも情報収集に向かうしかない。

魔の森の北方に大きな国土を持つテスラに入国するには、まず国境の町カルニオスに入り、そこから王都ウィニスを目指す。
森を抜けて来た俺達は、目立たないようにエクレールから渡されたフードを被って、カルニオスの町の門をくぐった。
フードの効果のおかげか、門番に止められることもなく町に入ることができた。
特に身元検査などはしていないようだ。

町に入れたからといって油断はできない。
亜人であるセフィアルとレクイルには、しっかりとフードを被ったままにさせておく。
結晶獣であるスノウも見つかったら大変だ。
魔法王国は魔術師の国、結晶獣は魔術師のステータスシンボルとして珍重されている。
ましてやプラチナム・ウルフであるスノウには、どれだけの値がつくかわからないほどだ。

スノウには俺のフードの中に入って、大人しくしていてもらう。
フードの中で丸くなって俺の首にしがみついているスノウは、マフラーみたいで温かい。
窮屈なので嫌がると思っていたが、スノウは結構楽しんでいるようだ。


カルニオスの町からは、乗り合い馬車に乗って王都まで運んでもらう。
出発前に色々と検討したが、この方法が一番リスクが少なくて安全だろうという結論に達した。
乗り合い馬車と言っても箱型の大きな荷馬車に粗末な座席の付いただけの物で、乗り心地は良くない。
俺達は目立たないように、端っこに座って静かにしている。
フードの効果で同乗者から声をかけられることもなかった。

「おいッ!止まれッ!馬車から降りんるんだッ!」
夕刻になり日が沈みかけ、町からもだいぶ離れてきたところで、突然道の近くの林から武装した男たちの一団が現れる。なんとここでお約束の盗賊に出くわすとはついてない。

「どうしますか、タケルさん。あの程度の人数なら私一人でもなんとかなると思います。こちらから先制攻撃を仕掛けますか?」
「グルゥ、グルゥ」
セフィアルの戦脳(いくさのう)につられてフードの中のスノウもウズウズし始めた。
君達、目立たないようにって言ったよね。
しばらくは様子を見なくては。

しかしながら近づいて来た盗賊の一人が、セフィアルのフードを取っ払ってしまう。
「ヒュー、お頭、ここに亜人奴隷がいますぜ。しかもかなりの上玉だ。」
「ほほう、これは大当たりだな。奴隷商に高く売れそうだ。」
「その前に、俺らで楽しみましょうぜ。」

盗賊たちの下劣な罵詈雑言を、これ以上聞いてはいるつもりはない。
「セフィアル、やって良し!」
「ハイッ!」
セフィアルがダガーを構えて盗賊たちに向かって行くと、続けてスノウも俺のフードの中から飛び出す。

俺とレクイルは巻き込まれないように馬車の陰に退避した。
しかしながら盗賊が一匹、こちらにやって来るではないか、HP4の俺だ、近づかれてはたまらない。
「フォトン・ブラスト」
唯一使用可能となった魔法フォトン・ブラストでしっかりと撃退しておく。

セフィアルとスノウのコンビはあっという間に、7人いた残りの盗賊をノックアウトしてしまった。

「ありがとうございます。それにしても魔法貴族の方が乗っておられたとは、今まで気がつきませんでした。
美しい亜人奴隷を連れている所を見ると、お忍びでご旅行中でしたかな。」

いや、セフィアルとレクイルは奴隷ではないんだが。
とはいえ言い返すと話がややこしくなりそうだったので、助けられた礼を言ってくる御者には勘違いしたままにしておく。

やはりこの国では魔法貴族は、敬われ恐れられているようだ。
俺を貴族と勘違いした御者達の下にも置かぬ歓待ぶりで、馬車の旅はすごぶる快適になった。

その後は大きなトラブルもなく、俺達はテスラ国の王都ウィニスに無事たどり着くことができた。
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