インテリジェンス(INT)に一点振りしても地頭(ぢあたま)は良くなりませんよ。

江戸川 陸

文字の大きさ
上 下
52 / 75

オーガ族の刺客 その2

しおりを挟む
セフィアル達が苦戦している。早く目の前の敵を倒して、仲間の加勢に行かなくては。
俺の中に生まれた焦りを、熟達の戦士であるガザルドガは見逃さなかった。

「フレイム・ボルテックス!」
オーガの中級闘技フレイム・ボルテックスを発動させる。
炎をまとって燃え上がった巨大鉄球が、俺のスフィアに激突して、ガァァァンという轟音が里中に響きわたる。

そしてなんと俺のプロテクション・スフィアが、吹き飛んでしまった。
いままでスフィアごと弾き飛ばされたりしたことはあったが、光体が消滅してしまうことは一度としてなかった。
HPひとケタの俺にとって最も重要な守りの要「プロテクション・スフィア」が、初めて打ち破られてしまったのだ。

完全消滅したスフィアはすぐには再生しない。
無防備になった俺に向かって、ガザルドガは再び鉄球を振るってくる。
10しか敏捷性≪AGI≫のない俺には避けることはできない。
8しか体力≪HP≫のない俺がこの攻撃を受ければ、結果は火を見るよりも明らかだ。

そう「死」である。

「キャイィィィィン!」
俺に攻撃が当たる直前、スノウが飛び込んできた。
俺を押し倒すと自らが鉄球を受けてしまう。

「スノウッ!」
吹き飛ばされたスノウは、グッタリと倒れてまま起き上がってこない。
俺の目の前が真っ赤に染まった。

「よくも、スノウをッ!」
俺の怒りは爆発した。グラビティ・コントロールを最大パワーで発動する。

「ウオッ、これは?」
突然増加した重力の重さに耐えきれずガザルドガが膝をつく。
奴だけではない。里にいるすべての者、オーガも銀狼族も超重力に耐えきれず地面に這いつくばる。
魔法の影響化で動けるのは、俺とその眷属であるセフィアルとレクイルだけである。

「な、なんという魔力だ。う、動けん。」
超重力化では重いモーニング・スターを振るうことは出来ない。

「ライトニング・ストライク」
呪文を唱えると上空に巨大な雷雲が発生した。

そこから
「ライトニング・ストライク」
稲妻が敵に落雷する。

「うわっ」「きゃあ」跳ね飛んだ雷撃の欠片が銀狼族の人達に飛び火するが、今はかまってはいられない。

「ライトニング・ストライク」
「ライトニング・ストライク」
「ライトニング・ストライク」
「ライトニング・ストライク」




雷雲から次々と稲妻が落ちてオーガ達を捉える。
いかに魔法抵抗力が高いオーガ族でも耐えきれるはずもなく、大量の電撃を浴びたオーガ達の動きが完全に止まった。

「お、おのれェェ」
リーダ格のガザルドガだけはかろうじて、抵抗しようとするが俺はさらなる魔法を放つ。

「ま、まてッ」
「流星砲ォォォ!」
コメット・ストライクの砲弾を真正面から受けたガザルドガも、吹き飛ばされて地面に転がった。

「タ、タケルさん・・・」
「タケルお兄ちゃん・・・」
あまりの出来事にセフィアルとレクイルは、呆然と俺の名を呼んでいる。

「レクイル、スノウを」
我に返ったレクイルが慌ててスノウに駆け寄るとキュアをかけまくる。

「レクイル、スノウは大丈夫なのか?」
「私のキュアじゃあ、これ以上は治らないよう。」
「とにかく、すぐに書庫に運ぼう。」
俺は傷ついたスノウをそっと抱きかかえると、急いで書庫へと運んだ。


「エクレール、スノウの具合はどうだ?」
「分かりません。かなりのダメージを受けたようです。」
書庫に運び込んたスノウをエクレールが診てくれたが、スノウはぐったりと意識を失ったままだ。

「そんな・・・」
「スノウ・・・」
「お姉ちゃん、スノウは助かるの?」

「回復薬で体の表面の傷は治しましたが。内臓にも損傷があるようです。
結晶獣の力の源はマナです。最も相性が良いタケルさんが魔力を供給してあげてください。」

ここでスノウを死なせるわけにはいかない。
オーガとの戦いの後で疲れ切っていたが、俺は何度もマナ切れを起こしそうになりながらも一晩中かけて全てのマナを注ぎ続けた。

明朝、レクイルは疲れて俺の膝の上で眠ってしまった。
セフィアルも俺に寄りかかってウトウトしている。

俺もマナ切れ寸前で意識が朦朧としていた。
なんだかスノウが光り輝いていた気がする。
ハッと気が付くとスノウが俺の頬をペロペロと舐めていた。

「スノウッ!元気になったのか。」
「ウォン!、ウォン!」
「スノウ、お前・・・第三形態に進化したのか?」

スノウの体には大きな変化が起こっていた。
翼はより大きくなり、その形も鋭さを増した。
尻尾も長く伸びて、一回り太くなった。
そしてなにより、結晶獣のシンボルとも言うべき額の結晶はさらに複雑化して、正五角形の表面に星型が浮き出ていた。


○ガザルドガ オーガ族

職業 重戦士(百人戦士長)

LEVEL 33

HP 1672
MP 38

STR 254
VIT 440 
INT 30
AGI 36
WIS 38
LUC 15

闘技
中級  オーガ・クラッシュ
    マッスル・アーム
    フレイム・ボルテックス
    シールド・アッパー

スキル
    HP自動回復  (中)  (Lv7)
    HP増大    (中)  (Lv8)
    オーガ・アーム (中)  (Lv6)
    オーガ・スキン (中)  (Lv7)
    モーニングスター(中)  (Lv1) 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...