インテリジェンス(INT)に一点振りしても地頭(ぢあたま)は良くなりませんよ。

江戸川 陸

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ピティック族 その1

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俺達のパーティーはカントの町にわずか一泊しただけで、二度もトラブルに巻き込まれるという非常識な経験をしてしまった。見た目が良すぎるのもなかなか大変だ。

書庫に戻ると、まずは今回の成果をエクレールに報告する。

「大金貨3枚とは、思いのほか高く売れましたね。これを書庫で不足している素材購入の資金にして、新しい魔道具が色々と作れると思います。
それにしてもそのようなトラブルが起こるとは、やはり町に出るときは注意が必要ですね。
次にタケルさん達が町に行くときに備えて、役に立つマジック・アイテムを用意しなくては」

エクレールはアイデアを思い付いたらしく、張り切った様子で自室へと戻って行った。

エクレールは懸念しているが、予想以上の大金も手に入ったし、しばらくは町に行くこともないだろう。
俺達は森に入って狩りをするという、普段通りの生活に戻った。


いつものようにパーティーで森を探索していると、奇妙な光景に遭遇した。
岩場に小さな魔物のような一群が、ウロウロしている。
一匹一匹は小さくて子供、ちょうどレクイルと同じくらいの背丈しかない。
ノソノソと岩場を移動して、大きめの岩を持ち上げては地面に叩きつけて砕いている。
よく見ると全身が岩で覆われている、というより体そのものが岩でできているようだ。

「えらく小さいな、人形みたいだ」
「ピティック族ですね。岩場を住みかとしていると聞いたことがあります。」
「あれも亜人なのか?」
「いえ、亜人というより妖精の一種でしょう。」

妖精と言うにはゴツイ気ががするが、ピティック達は砕いた岩を口に運んでは、モグモグと噛み砕いている。

「岩を食べちゃってるよ。」
「食べているというより、岩に含まれてるマナを吸収しているのだと思います。」

どうやら岩に微量に含まれているマナを取り出して、土は吐き出しているようだ。
マナは自然界の物であれば、量の大小はあれかならず含まれている。
エネルギーそのものといえる存在なので、それだけでも活動できるのだろう。

面白いのでしばらく眺めていると、ピティック達の動きが慌ただしくなった。
すると突然、地面から大型の魔物が飛び出してきて、彼らの一匹をパクリと食べてしまった。

「いけません!ロック・クローラーです。」

ロック・クローラーは巨大なミミズのような魔物で、主に岩場や洞窟に生息している小さな魔物などを餌としている。普段は地中に潜んでいるが、獲物を見つけると飛び出て来て一飲みにしてしまう。
今回はピティックたちが狙われたようだ。

「ピィー!、ピィー!」と小さな声で叫びながら、パニックになって逃げ回る彼らを見ていると、可哀想で放ってはおけない。

「しょうがない。助けるか。」
俺が助けようと近づくがロック・クローラーは、すぐに地面へと潜り込んでしまい狙いがつけられない。

「これじゃあ、魔法が当てられないぞ」
アステル系魔法でも、さすがに地面に潜った相手には届かない。
俺が戸惑っていると、魔物は今度は反対側から出現、また一匹のピティックを飲み込んでしまう。
益々、パニックが酷くなり、そこらじゅうを駆け回るピティック達。

そのときスノウが飛び出した。
「ウォン!ウォン!」
吠えながら俺の方を見て何かを催促してくる。
<スノウ、本気なのか?!>
俺にはスノウの意図がすぐに分かった。

「プロテクション・スフィア」
俺がスノウにプロテクション・スフィアをかけると、スノウは岩場の真ん中に立ち「グルルルル」とマナを放出し始める。
自分自身をおとりにして、魔物を引き寄せるつもりだ。
狙い通りマナの匂いに誘われて、ロック・クローラーがスフィアの光体ごとスノウを飲み込もうとする。

その瞬間、スノウが飛んだ。
第二形態になった跳躍力を、全開にして空へと駆け上がる。
スフィアごとスノウに食らいついていたロック・クローラーはそのまま地中から引っ張り出されて、空中に浮かぶ。
ちょうど釣りで餌に食いついた魚が引っ張り上げられるのと同じだ。
とはいえ、ロック・クローラーの大きさは魚とは比べ物にならない。
スノウは自分の十倍以上の重さのある魔物を、引っ張り上げていた。

「フォトンブラスト!」
中に浮かんで狙い放題となった魔物に、全力のフォトンブラストが全弾直撃、クローラーは全身を地面に投げ出されて倒れた。
しばらくはピクピクしていたが、すぐに動かなくなった。

「凄いじゃないか!スノウ」
「ウォン!ウォン!」
大活躍のスノウを褒めてナデナデしてあげると、本人も誇らしいのだろう目をキラキラさせて尻尾を振って応えてくれる。
俺は今回の件で第二形態のスノウの実力に、改めて感心したのであった。
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