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閑話 天使アーリンの憂鬱 その2
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タケル達がオーガ族の戦士と狐族の奴隷商を倒して、裏切り者バルナドの企みを阻止してからしばらくたった頃。
地上で異世界人の転移をサポートしている天使アーリンが一日の任務を終えて天界に帰還、いつものように大浴場で下界の穢れを洗い落としていると、同僚の天使メロントルが話しかけてきた。
「ねえねえ、アーリン知ってる?」
「なんですか、メロントル。」
「下界で狐族が、また悪だくみを企んでいたらしいよ。
それも今度はオーガ族と組んで。」
オーガ族、同族以外の生き物の命を露ほどにも重んじていない残虐非道な一族。
天界でも忌み嫌われている厄介な連中だが、天使族といえど彼らにはおいそれと手出しできない。
彼らの背後には、あの恐ろしい存在がついているのだから。
「なんでも狼族の里を襲って、そこ住民を全員かっさらって奴隷にしようとしたらしいよ。」
「なんということを・・・それでその狼族達はどうなったのですか?」
「それがね、どうもそのたくらみを人族の少年が、ほとんど一人でぶっ潰しちゃったらしいんだって。」
「人がオーガを・・・それは凄いですね。」
オーガと人では、基本的な身体構造が違う。
戦闘種族で生まれながらの戦士であるオーガは、人よりもはるかに高い戦闘力を持っている。
もちろん人族の中にも強者はいる。
歴戦の戦士や上級冒険者などは、オーガとも互角に闘えるだろう。
だがそれはごく一部の者達に限られた話、基本戦いの場において人がオーガに勝てる道理はないのである。
「どんな少年なのでしょう。まさか勇者というわけではないのでしょう?」
数百年に一度誕生すると言われている勇者の転職を持つ者であれば、若くしてもオーガと互角以上に戦うことができるだろう。だけど勇者が生誕したという話は聞いていない。
「それがどうも魔術師みたいよ。」
「魔術師?!人族の魔術師がどうやってオーガを?」
あの忌まわしい種族は、生まれながらに高い魔法耐性を持っている。
エルフでもあるまいし、魔術で人がオーガに勝てるものだろうか、
「詳しいことは分からないけど、かなり強力な魔法を使う少年だったみたいよ。」
「そうですか、そのような若者が・・・」
そういえば以前に面倒を見た異世界人は、どうしているだろうか。
あれだけINTに一点振りしていたのだ。もしかしたら魔術系のクラスを得ているかもしれない。
<そうなれば少しはうまくいくのでしょうか?>
「どうしたの、何か気になる事でもあるの?」
「いえ、以前に担当した若者の事を、思い出してしまいました。」
「ああ、確かINTにステータス値を全部振っちゃったっていう子ね。」
「ええ、今頃どうしているだろうかと思いまして。」
役目に私情を持ち込まないように、自分が担当した者のその後を追うことは許されていない。
「もしかしてその子が、今回の騒動を片付けた若者かも?」
「まさか。でも彼も何とか良い職業に巡り合えていると良いのですが。」
メロントルの冗談に笑いながらも、アーリンはタケルの現在について案じるのだった。
地上で異世界人の転移をサポートしている天使アーリンが一日の任務を終えて天界に帰還、いつものように大浴場で下界の穢れを洗い落としていると、同僚の天使メロントルが話しかけてきた。
「ねえねえ、アーリン知ってる?」
「なんですか、メロントル。」
「下界で狐族が、また悪だくみを企んでいたらしいよ。
それも今度はオーガ族と組んで。」
オーガ族、同族以外の生き物の命を露ほどにも重んじていない残虐非道な一族。
天界でも忌み嫌われている厄介な連中だが、天使族といえど彼らにはおいそれと手出しできない。
彼らの背後には、あの恐ろしい存在がついているのだから。
「なんでも狼族の里を襲って、そこ住民を全員かっさらって奴隷にしようとしたらしいよ。」
「なんということを・・・それでその狼族達はどうなったのですか?」
「それがね、どうもそのたくらみを人族の少年が、ほとんど一人でぶっ潰しちゃったらしいんだって。」
「人がオーガを・・・それは凄いですね。」
オーガと人では、基本的な身体構造が違う。
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もちろん人族の中にも強者はいる。
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だがそれはごく一部の者達に限られた話、基本戦いの場において人がオーガに勝てる道理はないのである。
「どんな少年なのでしょう。まさか勇者というわけではないのでしょう?」
数百年に一度誕生すると言われている勇者の転職を持つ者であれば、若くしてもオーガと互角以上に戦うことができるだろう。だけど勇者が生誕したという話は聞いていない。
「それがどうも魔術師みたいよ。」
「魔術師?!人族の魔術師がどうやってオーガを?」
あの忌まわしい種族は、生まれながらに高い魔法耐性を持っている。
エルフでもあるまいし、魔術で人がオーガに勝てるものだろうか、
「詳しいことは分からないけど、かなり強力な魔法を使う少年だったみたいよ。」
「そうですか、そのような若者が・・・」
そういえば以前に面倒を見た異世界人は、どうしているだろうか。
あれだけINTに一点振りしていたのだ。もしかしたら魔術系のクラスを得ているかもしれない。
<そうなれば少しはうまくいくのでしょうか?>
「どうしたの、何か気になる事でもあるの?」
「いえ、以前に担当した若者の事を、思い出してしまいました。」
「ああ、確かINTにステータス値を全部振っちゃったっていう子ね。」
「ええ、今頃どうしているだろうかと思いまして。」
役目に私情を持ち込まないように、自分が担当した者のその後を追うことは許されていない。
「もしかしてその子が、今回の騒動を片付けた若者かも?」
「まさか。でも彼も何とか良い職業に巡り合えていると良いのですが。」
メロントルの冗談に笑いながらも、アーリンはタケルの現在について案じるのだった。
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