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魔術師の生霊(レイス)

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俺達はお宝発掘のため、ベルモンの案内で遺跡へとやって来た。
遺跡は建物全体が地下室のようになっている様子、地上に出ている部分は出入り口だけだ。
どうやら隠れて、ここで邪悪な研究を行っていたようだ<俺主観>。

地下への入り口となる扉を、数体のスケルトンが見張っている。
「フォトン・ブラスト」
魔法の射程距離まで近づくとフォトン・ブラストをぶつけてみる。
スケルトン共は光弾を受けると、あっけないほど簡単に崩れていった。
「どうやら一体一体は弱っちいみたいだな」

ベルモンには入り口で待機してもらい、俺達は地下へと降りて行った。
セフィアルとスノウが先行して俺が続く、レクイルは俺と一緒にスフィアの中だ。

内部はいくつかの部屋に分かれていて、各部屋にはスケルトン兵がウロウロしている。
壁際の棚には瓶詰された薬品やら怪しげな小道具やらが並んでいる。
その中には魔法の品と思しき物も見えるが、いまは我慢、まずは遺跡全体を調査してから、お宝を回収したい。

スケルトンを撃退しながら探索していると、装飾された大きな扉が設置されている部屋を発見した。
扉を開けて中に入ると、広い部屋の隅っこにフワフワと浮いている白い影のような存在がいる。
よく見ると年寄りの男が亡霊のように中に浮いている。

「ヒィッ、お、お化けなのです。」
「いえ、違います。あれは生霊(レイス)です。
どうやらこの遺跡の主が、死んだ後にレイスと化したようですね。」

セフィアルは冷静に説明してくれるが生霊とお化けは一緒なのでは、
あッ、向こうもこちらに気が付いたようだ。

「ギ、ギザマラァ、ドゴォガラァハイッテギダァァ」
かすれて濁った声は聞き取りにくいが、どうやら話の出来る相手らしい。

「なんだしゃべれるのか?もちろん入り口からだぞ」

「ス、スゲルドンヘイハドウジダァノダァ?」

「邪魔だったから退治したぞ、悪く思わないでくれ」

「フ、フザゲルナァ、モノドモォ、カガレェェ」
爺さんの亡霊の命令で部屋にいたスケルトンたちが一斉に俺達の方に向かってきた。

「やれやれ、フォトン・ブラスト」
フォトン・ブラストが、寄って来る骸骨共を一斉に薙ぎ払う。

「コ、コゾウォォ、イマノマホウハナンダァァ?」

「いちいちうるさい奴だな。これはメイガスのスペルだ。」

「メ、メイガス、メイガスジャトォォ」

「ああ、フォトン・ブラストっていうんだ。」

「ウ、ウラマヤジィ、ウラヤマジィィゾォォォ、ゾノキョダイナヂガラァァァ」

「いや、そう言われても困るんだけど。」

「ワ、ワジモホジィ、ワジモホジィィゾォォォソノヂガラァァァ」

「・・・・・・」
ウザイ、ウザすぎる
俺はこう見えても敬老精神にあふれた男だ。お年寄りを大切にともいつも思っている。
でもこの爺さんは無理だ。会話が成立しない。

「爺さん、アンタと会話してると疲れるんだよ。
質問にも答えたし、この遺跡にある魔法石とかアイテムとか全部譲って欲しいんだけど。
どうせアンタにはもう必要ないだろ。」

「タ、タケルお兄ちゃん、その言い方はちょっと・・・」

「ワジノダガラジャトォォ、ギ、ギザマァァ、ワジノダガラォォウバウドォイウノガァァ」

「だからそう言ってるだろ。」

「ユ、ユルザン、ユルザンゾォォ、イ、イマコゾォ、ハビャクネンマエノオォォ、ウラミヲォォォ」

「爺さん、アンタ、いくら何でも八百年も生きてないだろ。」

爺さんが魔法を唱えると、研究室の中心に大きな魔法陣が出現した。
その中から天井すれすれまである巨大なスケルトン兵が現れた。
綺麗な装飾をほどこした鎧を着込んで、盾と剣も装備している。

「ゾノモノハ、カヅゥデェ、エイユヴトヨバレダァモノォ。
ワジィガァ、ハガヨリホリダジデェ、ヘイジィトジダァ」

墓荒らししたってことか、爺さんとんでもない悪党だな。しっかりと罰を受けてもらわなくてはなるまい。
俺自身の行動も似たような感じだが、それには目をつむってもらう。
これはこれ、それはそれだ。心に棚を作るのである。

「アイス・バレット」
「タケルさん、スケルトンに冷気の魔法は効きません。」
おっと、そうだった。

「だったら、フォトン・ブラスト」
スケルトンは巨大な盾であっさりとフォトン・ブラストを防いでしまう。

「くそッ、それならスノウ、電撃を喰らわせてやれ。」
「グルルルル」
スノウが額の結晶から電撃を放出して、スケルトンに浴びせるが大して効いていないようだ。

スケルトンの斬撃が俺のプロテクション・スフィアを直撃する。
げげッ、なんと剣先がスフィアの光体を突き破ってしまった。

これはスケルトンの力というより剣が良いのだろう。
青白い光を帯びてうっすらと光る剣は、明らかに魔力を帯びた代物だ。

「ゾノ、ゲンハァァ、カヅデェ、ゼイゲントヨバレェダァモノォォ」

「ああもういい分かったよ」

「タケルさん、私が時間を稼ぎます。その間に魔法で倒してください。」
セフィアルはアクセル・ムーブを発動、高速で敵の周りを動き回る。
セフィアルのスピードなら捕まることはなさそうだ。ただ彼女の攻撃では、敵に致命傷はあたえられない。

この巨大スケルトンの防御力はかなりのものだ。
フォトンブラストとアイス・バレットが効かないとなると、俺の手持ちの魔法の中で通用しそうな物はといえば・・・。
ウィンド・トルネードは部屋の中では使えない。
地下室でアステル系魔法はもっと危険だ。
あれ、なんか打つ手なくね?

使える魔法が無いということに気づいた俺は、最後の手段を発動することにした。
「爺さん、悪く思わないでくれよ」

俺はフォトン・ブラストをスケルトンではなく魔術師の亡霊に向かって放つ。
なにも律義に召喚されたスケルトンの相手をする必要なないのだ、要は召喚主を倒してしまえばそれで済む話なのである。

「オ、オノレェェ、ヒギョウナァァァァ」

亡霊が消えると、巨大スケルトンも崩れ落ちて灰になっていった。

「ふう、やれやれ、なんか疲れる相手だったな。」

邪魔する相手もいなくなった。これでやっとお宝が回収できる。

「まずは爺さんが付けていた魔法の道具からだな。」

俺はレイスが消えて、その場に残されたアイテムから回収を始める。
魔法使いだけあって、あの爺さんは色々なアイテムを身に付けていた。

「魔法の杖に、ネックレス、お、指輪もたくさん付けていたな。
それに巨大スケルトンが持っていた聖剣も忘れずにと、へへへ大漁、大漁。」

「タケルさん・・・」
「タケルお兄ちゃん・・・」

俺が大喜びで片っ端からアイテムを回収していくのを、セフィアルとレクイルは若干引いた目で見ていたが、
折角の貴重な品々を残していくのはもったいない。
結局、彼女たちも協力して研究室にある価値のありそうなアイテムは、根こそぎ頂くことになったのだ。
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