上 下
38 / 75

スケルトンの廃遺跡

しおりを挟む
銀狼族の人々は、俺たちの案内で書庫の近くに新しい集落を再建することとなった。

「書庫の周囲に住むというのであれば、私からは何の問題もありませんよ。」

銀狼族が部族ごと移転して来るという話に、エクレールはあっさりとOKを出してくれた。
書庫内部に入れることはできないが、周辺に自分たちで小屋を建てて住むというのであれば、
特に不都合はないとのことだ。

さっそく、銀狼族の面々は、自分たちが住む小屋を立てはじめた。
彼らは狩猟民族なので、所持品は多くない。
身の回りの物と、わずかな家具や調理道具だけあれば生活できる。
それゆえ小屋も質素な造りで十分なので、あっという間に里の再建は済んでしまった。

そしてバルナドを追放した後の、新しい族長にはセフィアルが選ばれてしまった。
元々、前族長の娘であることに加えて、部族の皆を救出したこれまでの経緯を考えれば当然かもしれない。
ただ、セフィアルとレクイルは俺の眷属として一緒に行動してもらわなくては困る。
そこで族長代理として部族で最年長のセガルデが、セフィアルが不在の時は村を任されることになった。

こうして銀狼族は書庫の近くで新たな生活をスタートさせた。

銀狼族は総勢60名程度の小さな部族である。
森で魔物を狩って食料を得て、手に入れた素材は自分たちで加工したり、町におろしたりして生計を立てている。
狩りは主に男性が行うが、女性でもステータスが高ければ参加を認められる。
セフィアルも里にいたときは、狩りに参加していたそうだ。

子供もけっこうたくさんいて、狼族らしく元気に駆け回っている。
特に活発なちびっ子のミリアルとセプトルは、俺のお気に入りだ。

二人とも俺が里に顔を出すと「タケルさまぁ、遊んでぇ」と言ってすぐにやって来る。
追いかけっこすると素早く逃げていくが、さすがは銀狼族、ちびっ子でもかなり動きは速い。
体力の少ない俺は、すぐにばててしまって座り込んでしまう。
すると「もっと、もっと遊んでぇ」と上に乗っかってくる。
可愛いんだが、子供の相手はかなり疲れる。

スノウは子供たちにも大人気で、暇なときは書庫を抜け出して仲良く遊んでいる。
こちらは圧倒的に素早い、子供たちを翻弄して楽しんでいるようだ。

銀狼族の人々は陽気で純粋な人達なので、俺はすぐに馴染んでしまった。
よく考えればこれまで一緒にいたのは、エクレール、セフィアルとレクイルそれにスノウだけだ。
俺を加えても四人と一匹というのは、結構さみしかったのかもしれない。

仲間と呼べる人達が大勢増えて、俺の周りは一気に、にぎやかになった。


銀狼族の里が移転してきてからしばらくして、若手のリーダー格の一人、ベルモンが俺の所にやって来た。

「タケル殿、ご報告したいことがあります。
森の東で遺跡が見つかりました。既に廃墟となっているようですが、周囲にはスケルトンがうろついているそうです。」
「スケルトン?」
「ハイ、スケルトン兵が数体いて、遺跡の入り口付近を警護しているようです。」

スケルトンにはいままでお目にかかったことはない。
こういった話はやはりエクレールに相談するのが一番だろう。

「遺跡といっても話を聞く限りでは、それほど大きな物ではないようです。
周囲にスケルトンがうろついているとのことですが、
死霊系の魔術師、ネクロマンサーなどはスケルトンを警護に使うのを好みます。」

「すると魔術師が隠れて住んでいるってことか」

「いえ、廃墟となっているということは、たぶん召喚主が死んでスケルトンだけが残されたのでしょう。
タケルさん、これはチャンスですよ。
スケルトンを大量召喚できるほどの魔導士となれば、かなりの実力者でしょう。
当然、魔道具もたくさん持っていたはずです。
所有者がいないのならば、私たちがいただいておきましょう。」

見方によっては、盗賊的な発想のような気もするが、俺も激しく同意する。
貴重な魔法の道具は、有効活用しなくてはもったいない。

俺達は早速、遺跡攻略の準備に取り掛かるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ディミオルゴ=プリェダーニエ

《シンボル》
ファンタジー
良くも悪くもない平凡な高校生のトシジは自分の日々の生活を持て余していた。そんなトシジが非現実的で奇妙な運命に巻き込まれることとなる。 ーこれは平凡な高校生が後に伝説的な人物になるまでの物語であるー 何話か主人公が違う部分があります。 ジャンルを変更する事がありますが、この世界は異世界と現実世界がごっちゃになっていますのでご了承ください。 《二重投稿》 ・カクヨム ・小説家になろう

ずっと…

twilight
ファンタジー
魔法、剣術、戦術、いろんなジャンルが飛び交う世界。 この世界は不平等で、そして、 いろんな考えを持った人達がいる。 人の不幸を楽しむもの。 人を傷つけることに喜びを感じるもの。 自分の命よりも他人の命を優先するもの。 己を磨き続けることに人生を費やすもの。 1人の女の為に人生を費やす男の物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

聖者を偽る暗器使い、現代ダンジョンを行く。

たうめりる
ファンタジー
会社を衝動的に辞めた人間不信気味の主人公、田中速人は、ハローワークの勧めで職業訓練校冒険者コースへと入校することを決意した。 ダンジョン攻略に心血を注ぐ者、配信をして人気を獲得する者、一獲千金を狙う者…様々な人間が存在し、日々ドロドロとした人間関係が紡がれている冒険者業という特殊な世界で、速人は一人離れた場所で今日も気ままにダンジョンを攻略する。 ダンジョンで戦い、気が向けば人助け、たまに好きなものを食べる。そんな日常が始まるのだった。 ※リアルタイムで書いている都合上、頻繁な書き直しがあります。ご理解の程よろしくお願いします。

スウィートカース(Ⅶ):逆吸血鬼・エリーの異世界捕食

湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
ファンタジー
夜の眷属たちが〝彼女〟に恐怖する時間はやってきた。 異世界にしか存在しないはずの凶悪な吸血鬼は、謎の力によってつぎつぎと現代の赤務市に忍び込みつつあった。 いにしえに滅びたはずの伝説の影に、人々はなすすべもなくひれ伏す。 だが、現代には彼女という天敵がいた。 彼女はエリー。〝吸血鬼の血を吸う吸血鬼〟だ。もちまえの超反射神経と最新鋭の科学技術を駆使し、〝逆吸血鬼〟エリーは吸血鬼召喚の謎を追う。そしてエリーは、事件の裏側にひそむ大いなる陰謀へと迫ることに…… 舞台がめまぐるしく現実と異世界に切り変わるスタイリッシュ・ブラッドアクション。 「わらわが運ぼう、死と恐怖を」

処理中です...