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オーガの戦士
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里の人達を追って走り続けること約3時間、動きの速いセフィアルとスノウはどんどん進んで行ってしまう。
里の仲間を救う為に、幼いレクイルも必死で走っている。
俺も遅れるわけにはいかない。なんとかついて行く。
前方に大型の荷馬車が止まっているのが見えた。
荷台は厚い木材による箱型、窓には鉄格子がはめられて監獄のような作りになっている。
あれが、銀狼族の人達を連れ去った馬車で間違いないだろう。
近くに狐族らしき者が6名と銀狼族らしき男がいる。
あの男がセフィアルの話に出てきた裏切り者、バルナドのようだ。
休息を取っている彼らの近くにもう一人、大きな肉の塊に噛り付いている男がいる。
<大きい、3メートル近くあるんじゃないか>
身長だけではない、太い腕と太ももは筋肉で膨れ上がっている。
全身が筋肉でできているような、文字通り筋骨隆々で鬼のような顔をした男、明らかに他とは違う。
周囲を圧倒するかのような存在感を放っている。
近くに置いてある盾と棍棒は俺の身長より大きい。
「いけません。オーガの戦士がいます。
彼らの腕力と耐久力は並外れたものがあり、その上、魔法にも強い耐性を持っています。」
オーガの戦士を見てセフィアルは顔を青くする。
「あれがオーガか、そんな奴を相手にどうやって戦おうか?」
「やむを得ません。私が先行して、敵をかく乱します。
タケルさん、もしもの時はレクイルを連れて逃げてください。」
あ、こらッ
セフィアルが返事も待たずに突っ込んでいってしまう。
セフィアルといい、スノウといい、いざという時に一人で突っ走るのはやめてもらいたい。
狼の本能だろうか?
セフィアルは休んでいた狐族の一団へ突進していくと、あっという間に3人をノックアウトしてしまう。
それを見てオーガの戦士が動き出した。
いきなりセフィアルに向かって、ドでかい棍棒を振り回してくる。
彼女はなんとか両手の短剣で受けたが、そのまま弾き飛ばされてしまう。
「セフィアルッ!」
セフィアルはすぐに立ち上がってきたが、ダメージが残っているのかふらついている。
「良かった大丈夫そうだ。だけどアイツの相手は俺がするしかなさそうだな。
レクイル、どこか安全な場所に隠れているんだ。」
「うん。気をつけてね。タケルお兄ちゃん」
「ああ。いくぞ、スノウ」
「ウォン!」
まずはオーガの狙いをこちらに向ける。
「フォトン・ブラスト!」
セフィアルに向かっていたオーガは、俺の魔法に気が付くと
「グヌゥ」と呻きながらも、手持ちの大型の盾でフォトン・ブラストを受けきった。
狙い通りにターゲットを変えたオーガは、俺に向かって突進して巨大な棍棒を振り回してくる。
もろに直撃を受けた俺は、もの凄い衝撃でプロテクション・スフィアごとポーンと弾き飛ばされる。
なんてパワーだ、普通じゃないぞ。
オーガはそのまま追撃に入ろうとするが、スノウが間に立ちはだかる。
オーガの棍棒をうまくかわしながら、雷で威嚇して時間を稼いでくれた。
「ウィンド・トルネード」
オーガの足元から小さなつむじ風が発生すると、あっという間に大きな竜巻に成長して敵を包み込む。
だが、驚いたことにオーガは飛ばされもせず、その場に踏みとどまった。
「ウヌゥ、人族がこれほど強力な魔法を使うとは・・・」
ウィンド・トルネードに耐えるなんて、確かにセフィアルの言う通り魔法耐性は高いみたいだ。
敵とはいってもオーガは亜人。
魔物ではない相手に威力のありすぎるアステル系魔法は使いたくなかったが、この状況ではそうも言っていられない。
「メテオ・サークル!」
これまで出番のなかったアステル系第三階梯魔法、メテオ・サークルを起動する。
スペルを唱えると召喚された隕石が、俺の周囲を旋回し始める。
初めて見る魔法であろう、オーガの戦士は警戒して動きが止まった。
「リリース!」
俺の合図で二つある隕石の一つが軌道を離れた。
隕鉄を大量に含んだメテオは、見た目は岩に似ているが、岩よりもはるかに重くて固い。
人の半身ほどもある隕石は、高速で飛び出してオーガの戦士を捉える。
「ウグゥ、お、おのれ」
盾の上から受けたが、さしものオーガもその衝撃の重さに膝をつく。
「ウィンド・トルネード」
そこに再度のウィンド・トルネードを放つと、オーガは今度はこらえきれずに空中高くに巻き上げられた。
「ファイア・ジャベリン」
落ちてきた敵にファイア・ジャベリンを喰らわせる、炎の槍は敵の分厚い盾を鎧もろとも貫いた。
「グワァ!」
苦痛のあまり唸り声を上げて、オーガは意識を失った。
それを見て残っていた狐族たちは、あれよという間に逃げ出してしまった。
里の仲間を救う為に、幼いレクイルも必死で走っている。
俺も遅れるわけにはいかない。なんとかついて行く。
前方に大型の荷馬車が止まっているのが見えた。
荷台は厚い木材による箱型、窓には鉄格子がはめられて監獄のような作りになっている。
あれが、銀狼族の人達を連れ去った馬車で間違いないだろう。
近くに狐族らしき者が6名と銀狼族らしき男がいる。
あの男がセフィアルの話に出てきた裏切り者、バルナドのようだ。
休息を取っている彼らの近くにもう一人、大きな肉の塊に噛り付いている男がいる。
<大きい、3メートル近くあるんじゃないか>
身長だけではない、太い腕と太ももは筋肉で膨れ上がっている。
全身が筋肉でできているような、文字通り筋骨隆々で鬼のような顔をした男、明らかに他とは違う。
周囲を圧倒するかのような存在感を放っている。
近くに置いてある盾と棍棒は俺の身長より大きい。
「いけません。オーガの戦士がいます。
彼らの腕力と耐久力は並外れたものがあり、その上、魔法にも強い耐性を持っています。」
オーガの戦士を見てセフィアルは顔を青くする。
「あれがオーガか、そんな奴を相手にどうやって戦おうか?」
「やむを得ません。私が先行して、敵をかく乱します。
タケルさん、もしもの時はレクイルを連れて逃げてください。」
あ、こらッ
セフィアルが返事も待たずに突っ込んでいってしまう。
セフィアルといい、スノウといい、いざという時に一人で突っ走るのはやめてもらいたい。
狼の本能だろうか?
セフィアルは休んでいた狐族の一団へ突進していくと、あっという間に3人をノックアウトしてしまう。
それを見てオーガの戦士が動き出した。
いきなりセフィアルに向かって、ドでかい棍棒を振り回してくる。
彼女はなんとか両手の短剣で受けたが、そのまま弾き飛ばされてしまう。
「セフィアルッ!」
セフィアルはすぐに立ち上がってきたが、ダメージが残っているのかふらついている。
「良かった大丈夫そうだ。だけどアイツの相手は俺がするしかなさそうだな。
レクイル、どこか安全な場所に隠れているんだ。」
「うん。気をつけてね。タケルお兄ちゃん」
「ああ。いくぞ、スノウ」
「ウォン!」
まずはオーガの狙いをこちらに向ける。
「フォトン・ブラスト!」
セフィアルに向かっていたオーガは、俺の魔法に気が付くと
「グヌゥ」と呻きながらも、手持ちの大型の盾でフォトン・ブラストを受けきった。
狙い通りにターゲットを変えたオーガは、俺に向かって突進して巨大な棍棒を振り回してくる。
もろに直撃を受けた俺は、もの凄い衝撃でプロテクション・スフィアごとポーンと弾き飛ばされる。
なんてパワーだ、普通じゃないぞ。
オーガはそのまま追撃に入ろうとするが、スノウが間に立ちはだかる。
オーガの棍棒をうまくかわしながら、雷で威嚇して時間を稼いでくれた。
「ウィンド・トルネード」
オーガの足元から小さなつむじ風が発生すると、あっという間に大きな竜巻に成長して敵を包み込む。
だが、驚いたことにオーガは飛ばされもせず、その場に踏みとどまった。
「ウヌゥ、人族がこれほど強力な魔法を使うとは・・・」
ウィンド・トルネードに耐えるなんて、確かにセフィアルの言う通り魔法耐性は高いみたいだ。
敵とはいってもオーガは亜人。
魔物ではない相手に威力のありすぎるアステル系魔法は使いたくなかったが、この状況ではそうも言っていられない。
「メテオ・サークル!」
これまで出番のなかったアステル系第三階梯魔法、メテオ・サークルを起動する。
スペルを唱えると召喚された隕石が、俺の周囲を旋回し始める。
初めて見る魔法であろう、オーガの戦士は警戒して動きが止まった。
「リリース!」
俺の合図で二つある隕石の一つが軌道を離れた。
隕鉄を大量に含んだメテオは、見た目は岩に似ているが、岩よりもはるかに重くて固い。
人の半身ほどもある隕石は、高速で飛び出してオーガの戦士を捉える。
「ウグゥ、お、おのれ」
盾の上から受けたが、さしものオーガもその衝撃の重さに膝をつく。
「ウィンド・トルネード」
そこに再度のウィンド・トルネードを放つと、オーガは今度はこらえきれずに空中高くに巻き上げられた。
「ファイア・ジャベリン」
落ちてきた敵にファイア・ジャベリンを喰らわせる、炎の槍は敵の分厚い盾を鎧もろとも貫いた。
「グワァ!」
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それを見て残っていた狐族たちは、あれよという間に逃げ出してしまった。
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