インテリジェンス(INT)に一点振りしても地頭(ぢあたま)は良くなりませんよ。

江戸川 陸

文字の大きさ
上 下
34 / 75

連れ去られた銀狼族

しおりを挟む
セフィアルの案内で、銀狼族の里までたどり着いた俺達を待っていたのは、変わり果てた里の姿だった。
里にある小さな小屋のような家屋のほとんどは、破壊されて原型をとどめていない。

「そ、そんなッ、里が?!
ミリアル、セプトル、誰かッ!いないのですかッ?!」

セフィアルがあちこちを走り回って、仲間の名を呼ぶが返事はない。
里はもぬけの殻になっていた。

「お姉ちゃん、里のみんなはどうしちゃったの?」
「わかりません。何者かに襲撃されたようですが・・・」

俺達が残された人はいないかと探し回っていると、里の中央にあって唯一原型を留めている大きな小屋から何者かが姿を現した。

亜人のようだか狼族ではない。
細長い顔つきから見て狐の亜人だろうか、暗く嫌な雰囲気を漂わせている。

「おや、おや、まだ隠れている者がいたようですね。」

「あなたは何者です。里の皆はどこに行ったのですか?」

「彼らには、ここから移動していただきましたよ。」

「移動とはどういう事です?」

「彼らにはここから離れて、オーガ族の砦に移ってもらう事にしたのです。
まあ、奴隷としてですがね。」

「奴隷・・・」

オーガ族
彼らは人、エルフ、ドワーフなどおよそ理性ある種族のほとんどと敵対している。
当然、銀狼族も例外ではない。
凶暴で残虐な破壊衝動に支配されたオーガにとってみれば、自分たち以外の種族は餌か奴隷、
どちらかの価値しかない。

狡猾な狐族の一部には、奴隷商としてオーガ族と手を組んでいる者もいると言うが、
この男もそのようだ。

「そんなことより。どうやら、あなた達がバルナドの言っていた族長の娘のようですね。
今回、この里の銀狼族が連れていかれたのも、元はといえばあなた方のせいなのですよ。」

「どういうことです?」

「バルナドが、レアな銀狼族の娘を愛玩用に差し出す約束であったのに、
まんまと逃げられてしまったというではありませんか。
かわりに部族全員を奴隷にすることで償ってもらったという訳ですよ。」

<なんてこと、あの男がまさかそこまでの裏切りをしていたなんて>
セフィアルは悔しさと怒りで体を震わせた。

「皆を連れ去った方向を教えなさい。」

オーガ族の砦に連れていかれてはもう助けるすべはないが、里の者達が捕まってからまださほど時間が経っていないようだ。
今からすぐに追いかければ何とかなるかもしれない。

「タケルさん。今すぐ追いかければ間に合うかもしれません。
力を貸していただけますか?」

「もちらん手を貸すよ。セフィアル」
よく分からないが、セフィアルの仲間たちを連れ去ったのは、悪党共のようだ。手助けしない理由はない。

「おい、お前、いますぐ里の人達の行く先を教えろ。」

「何をバカなことを言っているのですか、人族ふぜいが。
オマエに用はありません。消えなさい。」

「タケルさん!気を付けてください。狐族は魔術に長けた種族です。
特に精神系の魔法を得意としています。」

「教えたところで、どうなるというのです。フィアー・スプレッド!」
狐族の男が呪文を唱えると薄い霧のようなものが俺の周囲に発生した。
だけれどもすぐに消え去ってしまう。

「ん・・・」
何も感じないぞ。失敗か?

「なッ?それならばコンヒュージョン・スプレッド!」
同じ様な霧が再度俺の周りに漂うが、またもすぐに消えてしまう。

「おい、こっちまで届いてないぞ。」
プロテクション・スフィアが防いでいるわけではない。
スフィアの光体に当たる前に、魔法が自然に霧散して消滅してしまうようだ。

「そ、そんなッ、バカなッ!」

狐族の男は呆然として、アングリと口を開けている。

「まあいいか。じゃあ、今度はこっちの番だな。アイスバレット!」
アイス・バレットをもろに受けると、狐族の男は一瞬で氷漬けになった。

「おい、銀狼族の人達をどこに連れ去ったんだ。」

「・・・・・・」

「そうか、なら、スノウ!」

「ウォン!」
スノウが額の結晶石から電撃を発生させると男に浴びせかける。

「アババババババッ!!」

「どうだ 話す気になったか?」

「こ、これくらいのことで」

「スノウ」

「ウォン!」

「アババババババババババババババッッッッ!!!」

「このくらいの・・・」

「スノウ」

「ま、待って、わ、分かりました。
彼らはまとめて荷馬車に乗せて、砦のある南東の方向に連れて行きました。
は、早くこの獣を遠ざけてくださいッ!」

「本当か?もし嘘だったら、戻って来た時に死ぬまで電撃を浴びせ続けるからな」

「う、嘘ではありません。本当です。信じてください。」

「レクイル、どう思う?」

「嘘を言っているようではないようです。」

「よし、なら今すぐ後を追うぞ
スノウ!彼らの匂いをたどれるか?」

「ウォン!ウォン!」

スノウは任せろというように吠えると、すぐに匂いの痕跡をたどって走り始めた。

狐族の男を縄でグルグル巻きにして近くの木に縛り付けると、俺たちは全速で荷馬車を追った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺の娘、チョロインじゃん!

ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ? 乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……? 男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?  アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね? ざまぁされること必至じゃね? でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん! 「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」 余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた! え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ! 【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

処理中です...