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銀狼族の里への帰還 その3
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セフィアルが里を抜け出した経緯を聞いて、俺も衝撃を受けた。
「そんなことがあったのか。そのバルナドとかいう奴は、どうしてそんなことを?」
「わかりません。ただバルナドが族長代理なってからは、里の空気が大きく変わってしまいました。
以前は皆が助け合い、明るくて活気のある里だったのですが・・・」
セフィアルが悔しそうに唇を噛む。
「お姉ちゃん、ごめんなさい。私の為に」
里のことを思い出して、レクイルも泣きそうな顔になる。
「それでセフィアルは里に戻ったらどうしたいんだ。」
「クラスチェンジして私の力は大きく上昇しました。
今なら、里のみんなにも話を聞いてもらえると思うんです。」
銀狼族は狩猟民族だ。より強い者の意見が尊重される。
部族の中で自分の意見を通そうと思ったら、実力を示すしかないらしい。
「タケルさん申し訳ありません。眷属である私たちが、主であるタケルさんに迷惑をかけることになってしまいました。」
「は、何言ってんの、そんなの全然気にしてないぞ。」
「ふふふ、やっぱりタケルさんは変わっていますね。」
笑われてしまったが、なんだか悪い気はしない。
野営となれば見張りが必要となる。しかし昼間、目一杯行動して夜も寝ずの番というのはつらい。
そこで俺は、新たなる秘策を思いついたのだ。
プロテクション・スフィアを、最大限まで大きくしてその中で眠るというアイデアだ。
スフィアの光体は頑丈だ、このあたりの魔物にはまず破ることはできない。
それにスノウは眠っていても、敵が近づけばすぐに目を覚まして教えてくれる。
スノウのセンサーとプロテクション・スフィアの守りで、夜もゆっくり眠れるというわけだ。
ただ一つの難点はスフィアは目一杯大きくしても、俺達三人と一匹が入るにはちょっと狭いということ。
俺とセフィアルが横になって、その間にレクイルが入るいわゆる川の字になって寝るというやつだ。
スノウは何故か俺のお腹の上に乗っかっている。
これじゃあ、寝返りが打てないし、結構重たいんだが、まあ仕方ない。
セフィアルの顔が目の前に来る。
夜着に着替えた彼女は、昼間とは違う色気があってなんだか落ち着かない。
「なあ、これも言いたくなければ言わなくても良いんだが、どうしておまえたちは出会ったばかりの俺の眷属になることを受け入れたんだ。」
俺は緊張を紛らわす為か、もう一つの疑問も尋ねてみた。
「そうですね。・・・」
セフィアルはしばらく黙り込んでいたが、
「ふふ、教えてあげません。」
「んな?!」
「おやすみなさい。タケルさん。」
「あ、ああ、おやすみ。セフィアル。」
<人族の間では亜人、とくに獣人に対する差別が横行している。
だけどタケルさんは違った、初めて会ったときから私たちをもの珍しそうに見ていることはあっても、蔑視したりすることは一度もなかった。
それどころか出会ったばかりの私たちの為に、本気でエクレールさんとも交渉してくれた。
どうしてだろう、狼の本能だろうか?
私はタケルさんを最初から自然に受け入れていた。>
そうセフィアルはタケルとの出会いに、最初から運命的な物を感じていた。
ただそれを言葉にするのは、まだ恥ずかしくてできそうもなかった。
「そんなことがあったのか。そのバルナドとかいう奴は、どうしてそんなことを?」
「わかりません。ただバルナドが族長代理なってからは、里の空気が大きく変わってしまいました。
以前は皆が助け合い、明るくて活気のある里だったのですが・・・」
セフィアルが悔しそうに唇を噛む。
「お姉ちゃん、ごめんなさい。私の為に」
里のことを思い出して、レクイルも泣きそうな顔になる。
「それでセフィアルは里に戻ったらどうしたいんだ。」
「クラスチェンジして私の力は大きく上昇しました。
今なら、里のみんなにも話を聞いてもらえると思うんです。」
銀狼族は狩猟民族だ。より強い者の意見が尊重される。
部族の中で自分の意見を通そうと思ったら、実力を示すしかないらしい。
「タケルさん申し訳ありません。眷属である私たちが、主であるタケルさんに迷惑をかけることになってしまいました。」
「は、何言ってんの、そんなの全然気にしてないぞ。」
「ふふふ、やっぱりタケルさんは変わっていますね。」
笑われてしまったが、なんだか悪い気はしない。
野営となれば見張りが必要となる。しかし昼間、目一杯行動して夜も寝ずの番というのはつらい。
そこで俺は、新たなる秘策を思いついたのだ。
プロテクション・スフィアを、最大限まで大きくしてその中で眠るというアイデアだ。
スフィアの光体は頑丈だ、このあたりの魔物にはまず破ることはできない。
それにスノウは眠っていても、敵が近づけばすぐに目を覚まして教えてくれる。
スノウのセンサーとプロテクション・スフィアの守りで、夜もゆっくり眠れるというわけだ。
ただ一つの難点はスフィアは目一杯大きくしても、俺達三人と一匹が入るにはちょっと狭いということ。
俺とセフィアルが横になって、その間にレクイルが入るいわゆる川の字になって寝るというやつだ。
スノウは何故か俺のお腹の上に乗っかっている。
これじゃあ、寝返りが打てないし、結構重たいんだが、まあ仕方ない。
セフィアルの顔が目の前に来る。
夜着に着替えた彼女は、昼間とは違う色気があってなんだか落ち着かない。
「なあ、これも言いたくなければ言わなくても良いんだが、どうしておまえたちは出会ったばかりの俺の眷属になることを受け入れたんだ。」
俺は緊張を紛らわす為か、もう一つの疑問も尋ねてみた。
「そうですね。・・・」
セフィアルはしばらく黙り込んでいたが、
「ふふ、教えてあげません。」
「んな?!」
「おやすみなさい。タケルさん。」
「あ、ああ、おやすみ。セフィアル。」
<人族の間では亜人、とくに獣人に対する差別が横行している。
だけどタケルさんは違った、初めて会ったときから私たちをもの珍しそうに見ていることはあっても、蔑視したりすることは一度もなかった。
それどころか出会ったばかりの私たちの為に、本気でエクレールさんとも交渉してくれた。
どうしてだろう、狼の本能だろうか?
私はタケルさんを最初から自然に受け入れていた。>
そうセフィアルはタケルとの出会いに、最初から運命的な物を感じていた。
ただそれを言葉にするのは、まだ恥ずかしくてできそうもなかった。
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