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14.穴場の商家
しおりを挟む「おい、結花勝手にうろうろするな。置いちっまうぞ。」
呉服屋で葉凛と別れて間もなく、目の前の通りには露店が並び活気ずいている。お祭りの際にある出店は心惹かれたものだが、時代が違うと賑わいが盛んで誘われるかの様に脚が向いてしまっている。······のを背から止められた。
「たくっな。目を離した隙にこれたぁ。先に行けねぇだろうが!この人混みのなか迷子になりなくなきゃ付いて来いよ」
「·····はい」
置いて行かれまいと思う固めた傍から目移りしてしまった。 言い返す言葉もなくしゅんと肩を落としとぼとぼついて行くがなにか御返ししなくてはとモヤモヤする····。
こういう時は、幼地味にもよくやっていた手をすれば少しは驚くだろうか。
晋の袖を引き上目遣いをしつつ晋が振り向き目が合ってから首を傾げながら微笑む。
少し可愛小ぶり過ぎただろうか?
「······ほ~、結花あんたも以外と艶かしい顔ができんだな。仮にも俺を誘ってんだったら乗るが?」
一瞬目を見張ったも束の間、ニヤッと不敵に笑いを返して来た。
そして耳元で囁く。
「勿論、情交を、な」
全身の血が一気に沸騰するように熱が込み上がってくる。
顔を赤く染め上げ言葉を発することもできず口をパクパクさせていた。
「なんだ?誘ったのは結花だろ。おれは、乗っても良いと言ったんだが····聞こえてるか?」
「····あっ·····あっ······の、わたし、そんなさ···誘うなんて、そんなつもりじゃ······ただ····晋さんを少し驚かしたかっただけで······」
「ふんっ、そんなこったろうな」
「········」
まさか挑発と分かった上で乗り更にからかってくるとは·····意地悪だ。
ささやかな悪戯ではあったが晋にはお見通しのようで結花は頬を膨らませそっぽを向くことでしか抗えれない。
ピンッと額を弾かれたかと思いきや子供をあやす様に頭を撫でられる。
結花も成人は疾うに過ぎていて子供扱いされる歳ではないし、嫌いだ。けれども晋に撫でられるのはどうも嫌いではなかった。
「まぁ何でもいいが、ここら辺は混雑しているからなはぐれたら面倒だ。俺の袖を掴んでいろ」
晋のからかいを含んだ言葉にそっぽを向きつつ従う。決してはぐれてしまいそうとは口を滑らせれないが。
袖を掴んだところで「んじゃあ、行くぞ····」と呟きながら歩きだした。
晋の後ろを袖を掴みながら進んではいるものの人波に呑まれる行き良いにぶつかりながら後を追うも晋との間が人垣の様に犇めきあう。こちらに来てからは極力避けていた。人混みの中に居ると暗闇に呑まれる感覚が押し寄せ存在が薄れて行くようだ。身体はお春なのだから存在自体は消えはしないが結花は元に戻れる保証ないし、戻り方も知らない。
いつの間にか足も止まり晋の袖を掴んでいたはずの手には何もない····。
─····これは怒られる····よね確実に
周りを窺うと前方から見覚えのある人影が真っ直ぐ険しい血相で近づいて来ていた。目の前に影が落ち、怒られる覚悟でいるも自然と目線が下がっていた。
けれど返って来たのは手の温もりだった。
「·····んっな顔すんな、何も言えんだろうが。これでも割と気にはかけているつもりだ。····あー、だから俺を頼れ、分かったか」
返事を返す間もなく頭を撫でられ、歩き出した。その後を追いかけそっと袖をつかみ直した。
それは嫌な空気ではなく暖かく心落ち着くもので心寂しさを消し去ってくれていた。
─晋さんとは数回会っただけなのに、側に居るだけで落ち着くなんて変だな。
不思議なものだと思う。
そうして訪れたのは盛況たる通りの小路を抜けた先に構えた店屋に着いた。
「じゃますんぞ。おぉ、グラバー表に出てんのか。大体裏に引っ込んで奴が珍しいこともある」
「······人を見て第一に言うことがそれですか。私は商会の長として多いに仕事があるので表ではできないことがあるだけですよ、それに今日新しく仕入れた物がありましたから。·····けれども珍しいですね一人でこの時間に来られるのは?」
「いや、今回のとこは一人じゃねぇよ。ちぃっと買いに来た次いでに顔出しただけだ。あぁすまん。紹介する、こいつがグラバーだ。んッでここの店主」
店に入るやいなや表に居たグラバーと話だしてしまい晋の背に隠れる位置に立ってしまっていた結花は出る機会を失ってしまっていた。
区切りが着いたところで紹介もされたので後ろから横にずれて取り敢えず挨拶をする。
「はじめまして。あいさつが遅れましたが結花と申します」
「ご丁寧なあいさつ痛み入ります。申し遅れました。トーマス・ブレーク・グラバーと申します。以後お見知りおきを。」
一瞬目を見張ったも、社交辞令と共に営業スマイルを浮かべた。
「晋作さんのお連れ様としては珍しい部類の女性ですね。こちらにお連れするのも」
問いかけは晋に向けるものだったが視線の先は結花に向けられていた。見定めるかのグラバーの目に息が詰まる。グラバーの問が晋を指しではない分かると庇うように間に立つ。
「お、グラバーこいつが気になんのか?残念だか、こいつはお前でも負えねえだろうよ。今んとこ俺もだがな」
「·····いえ、どこかで拝見したと思いましたが、見間違いだったようですね。失礼しました」
「それだけこいつと似てたわけか。まぁ、今日は趣向を変えたもんを買い寄ったんだよ。何か目新しいのあるか?」
「機を見計らったかに来ますね。·····丁度お連れ様もいますし女性の意見も欲しかったとこです。少し中でお待ちください」
考え込む素振りをして奥へと戻ってしまったグラバーを待ちながらも扉先に居たこともあり中に入らせてもらうことにした。
慣れた様子の晋はさっさと奥の店の間に座りだし寛ぐが、一方の結花は見知らぬ店の上南蛮品の並ぶ店内に好奇心が入り目が釘付けだ。この時代には珍しく両端に棚を拵え他の商家よりも個々の量を並べていない。厳選しているのだろうがまた品の良さが人選してるとも言える。
レトロ感を覚える空間に懐かしさとも言える感覚になる。
だからこそ、南蛮被れのお店は町人には馴染み入り難いだろう。
今はまだ日本は厳格さから珍奇を嫌い鎖国に固執して技術、武力共に遅れを受け入れないでいるのだろう。
こうして南蛮品見るだけでも劣っていることは、この時代に生活を置くと感じる。結花に関しては現代の便利さが加わっている性もあるだろう。とは言え結花がどうこうできるはずもいし、したいとも思わない。ただ、変革時を傍から拝みたい───とは常々思っている。
思惑を傍らに置き棚に揃えられてある品の中に懐中電灯、望遠鏡、更にはカメラまでもがありる。
─この時代からカメラがあったんだ。形からしてダゲレオタイプの銀板に焼き付ける物だったかな?
カメラを眺めながらひとりほくそ笑みを浮かべていた。
「····これが気になりますか?」
「えっ?ま、まぁ珍しい物だなっと思っていたところです」
「あなたは南蛮品に興味がおありのようですね。京都に店を構えたものの客足が寂しいく、特に婦女の方の反応は乏しいのです。·····良ければ結花さんあなたの意見を聞かせて貰えませんか?」
─····は、い?
思わず結花は固まってしまった。いくら南蛮品に興味を持ったからにしては性急過ぎではないだろうか。意見が欲しいならそこに寛ぐ晋が居るのだからそちらに聞けばいいでしょ。だから結花に振らないで欲しい。滅多なことをしては後々も関わらないとは言いきれない。どうにか断ろうとしていると晋に声がかけられた。
「良いじゃねぇか。気になることがあるなら今話しちゃった方ご先決それにグラバーは執拗いぞ、飽きないに関しては特に」
「········」
「さぁ、どうぞ遠慮なくおっしゃてください」
諦めととれるため息をこぼし、今回だけと言い聞かせ後は───晋に任せ結花ははぐらかせよう。
「······戯言と取られても構いません。こちらは戸を締め切っていらっりますが、私が訪れる店屋は戸は取られてのれんをかけてあります。ですが日光に弱い品も多いことでしょうから外からでも商品が見える様に戸の横の壁を格子窓に変え、外からでも見えるように窓際に小物を置くのはいかがでしょう」
「ほぅ、他には····ありそうですね」
目を見張った姿は感心ともとれるが結花を見て何か感ずく。
「後は····紙ですかね。お菓子の入れ物としてガラスだとまだ馴染みがありませんし高価ですから。そこで紙でお菓子を包んでみては?紙は紙でも薄葉紙で名前の通り薄い紙ですけど薄いからこそ外からでも薄らお菓子の色が見えて可愛いと思うのです」
「いやはや婦女と侮ってしまっていましたが、結花さんには先程から驚かされてばかりです。良い意見が聞けました。壁とお菓子の包みの件とさせていただきます。あぁ、そうそう、こちらが本日入荷させたビスケットと言うお菓子なんです。お礼として受け取ってください」
お礼を兼ねてビスケットの他にもかぼちゃに卵までも渡された。小物屋では?ここは八百屋かっ!
思い付きを口にしただけでビスケットはお礼品としてありがたく頂くとして、かぼちゃそれに卵は頂けない。まだ物価的に『卵』は高価の部類に入るだろう。そんな物を貰う訳には行かない。
「いえ、小話をしただけなのでお礼はいいです。けれどビスケットを少し頂けますか?」
お礼品を受けないと言ったそばからビスケットをねだっては意味がない。それでもお菓子には目がない結花は恥ずかしくもお願いする。
「明達そうに見えますが、やはり婦女は甘い物を好みますね。ビスケットはほんの心ばかりのつもりですから貰って頂ければ。後、卵とかぼちゃは栄養価の高い物ですよ」
グラバーの呟きに瞠目する。
事情の出処は一目瞭然だ。ちらりと晋に向けるも煙管をふかせてるだけだったが手が省けて良かったかも知れない。微苦笑浮かべありがたく卵とかぼちゃを頂いた。
「結花さんと良き縁に出会えたことに感謝します。···新作さん、また後ほどお伺いいたします」
グラバーの店であら方の買い物を済ませることができたのが幸いして市井では珍しく栄養のある食材が手に入った。
傍から見ても上機嫌の結花は夕刻ともあり浮き足立っちながらも神社までの道の中「そんなに菓子が良かったか?俺が贈った着物より喜んでるな····」と漏れるが結花には届いていなかった、幸いにも。神社に着き、社には見覚えある着物が置かれてあった。きれいに畳まれ風呂しに包まれた着物を抱え日暮れを背に後にする。
予定より遅くなった帰路になった。
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