12 / 19
12.三味線の音色と強引
しおりを挟む─────
季布と町で別れ当てもなく散策してお店を廻る。可愛い簪が並ぶ小間物のお店に立ち寄ってみてもいつもなら楽しいはずの装飾鑑賞ですら今日は上の空で直ぐに出てきてしまっていた。幸助は薬で落ち着いたとは分かっていても心配なのだけど季布等はどうも結花に知られたくないことがあるらしく出掛けるように言いくるめられた手前戻るにも直ぐには戻れず何もする気になれないでいた。どちらせよ場所を移動しよう。どこに行こうか、気が向くまま歩みを進める。何も考えずに歩いていると見覚えのある通りに来ていた。そうだ、うんと賑わう通りの先の脇道を曲がると石畳が並び鳥居が見えて来た。考えず歩いていたら何時しか辿り着いていたのは吉原近くの神社にきていた。大分遠くまで歩いていたらしい。無意識に社の同じ場所に腰を下ろしただぼんやりと眺めていた。朝から慌ただしくしていたのと陽の暖かさに眼が抗うことができずいつの間にか寝ていた。こういうとこが無防備と言うか気が抜けているとは気づいていない。静かな寝息を零し眠る結花の隣には一刻前に神社に訪れた着流しを着崩し何食わぬ顔で男が静かに座っている。男は結花をちらりと見るや否や持っていた三味線を奏でだした。緩やかな音色でいて子守唄のように心地よいくさらに眠気を深める音のせいか座って寝ていた結花は身体が揺れる。お大きく左右に揺れ行き良いよく柱に頭をぶつけた。
「いっっったぁぁ····」
頭を強打した痛みで目が覚めた結花はぶつけた部分を抑えた。痛さに涙が出る。悶えてるその隣からはくつくつと笑いを抑え漏れる声と共に眠気を誘うような音色奏でる三味線を弾く男が居た。
「くっくっくっ···腹痛いってぇぇ。あんた女子としてそれは色気がねぇなぁ。そんなんだと良い人もいないだろ···ふっははっっ···」
「うっ····いっ──。えっ、な··何で晋さんがここに?」
痛さと寝起きで寝ぼけており頭が追いつかず状況を理解できない。
「あぁ、最近はよくここに気晴らしに来るだがなぁ───。まぁ、それとなんだ誰かさんが来るのを待っていたっとゆうことだ。」
「そうなんですか?私、お邪魔そうですのでと暇しますね。それでは失礼します。」
こ、恋仲と逢い引きなのかな·····。覗き見するような無粋な真似はしたくない。一言邪魔はしない旨を伝え他に休めるとこに移動するため鳥居に向かい歩き出すが晋に掴まれ阻まれた。
「·····はぁ~、あんたには遠回しに言っても無駄のようだな。まぁなんだ···結花、あんたに会いたくって待ってたんだよ。」
「·····何で?」
晋と会う約束なんてしてはいない。だが、別れ際に「またな 」とは言われたような気もするがそれがいつをさを指している訳でもないのて結局は約束した心当たりは結花にはなのだ。
「あの、約束なんてしてましたか?」
覚えがないことをいくら考えてもしかないので晋に尋ねてみるもあっけらかんとした受け答えがかえる。
「いや、そんなもんしていない。それかどうしたんだ? 」
「えっ、それじゃあいつ来るか分からない私を待っていたってことですよね。時間の無駄じゃないですか。」
「お··おう。なかなかはっきり言うじゃねぇか、あんた。」
思っていたことをつい口からこぼれでてしまい、晋は驚きはしたもとのの軽く口角を上げ笑う。
「やっぱし、結花はおもしれぇな。俺にはっきり言い返す女なんぞあんたぐれぇ
だ。···ここでまた会えたのはなんかの縁だ。丁度今日一日暇してたとこだったからな、ちょいと付き合え。」
「すいません、今日は遠慮します──。」
正直、晋の誘いは嬉しかった。元々幸助と行くはずだった商業街に幸助と来れず一人ここで感情の整理していたものの気が晴れないでいた。
ぽつりぽつりと胸の内に留めてたことを晋に口をついてでていた。この前もそうだ。初めて会ったはずなのにも関わらず彼と居ると落ち着くというのとか気が緩んでしまい様々なことを打ち明けてしまっていた。
「····そうか。親父思いだな。そんなら土産でも買って帰れば喜ぶだろう。んじゃ行くか。」
「ちょ、話し聞いてましたか?私、気分が乗らないんです。」
「んでもよー。心配掛けたくなくって親父さんはあんたを#外に行かせた____外出#んだろう。なのに暗ぇまま帰ってみろよ、それこそ可哀想じゃねぇか。」
晋の言い分も一理ある。気鬱したまま帰ったとしたら当然幸助に心配され気に病まむだろう。けれども買い物に行く気には到底慣れそうにない····。
「····ですが、行っても晋さんに迷惑かけるだけですよ───」
「っあぁぁ、もうなぁ。辛気臭ったらねぇ。んなもんあんたが心配すんな。ただ、行くと言って俺に付き合えば良いんだ。俺にここまで言わせる者は滅多に居ない。んで、素直に口説かれとけ。」
「はぁ·····」
─これは一向に話しが膠着状態どころか晋は帰ってくれないとろうな。─
もうどちらかが引くしかないどう、と結花は諦め折れ苦笑が零れた。晋と会ってからというもの振り回されっ放しだがこの時代で気兼ねなく話せれる唯一の人物とも言える。
今の憂鬱なまま帰っても心配事を増やしかねないだろう。いっそ晋の誘いに乗って暗い空気を少しでも晴らす方いい。
「それでは、存分に口説かれてあげますよ。」
「なんだ。大分偉そうだな。だが、行く気になんったんなら都合が良い。·····んじゃ、行くか結花。」
誘いを受けると言った途端結花の腕を掴み、ぐいぐいと大通りに歩みだした───。
※ 小間物店=江戸時代の町場にあった装飾品や化粧品といった日用品を扱っていたお店。今ていうところの雑貨店の旧称。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる