機械仕掛けの執事と異形の都市

夜薙 実寿

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Chapter.6 真実

祈り

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 最後に一言、零すように呟いてから終は黙り込んだ。

 虚ろな骸骨を見つめる彼の顔は――無表情。

 だが、痛い程にその気持ちは伝わって来る。

 ――『終は、悲しい時程、無表情になる』

 坊ちゃまの日記に書かれていた言葉を思い出す。

 こいつが人間だったら、良かったのに。
 ……そう、思った。

 こいつが、人間だったなら……思い切り涙を流して、悲しみを多少でも和らげる事が出来ただろうに。

 思い切り、叫んで……言葉で気持ちを、誰かと共有する事も出来ただろうに。

 こいつは、涙を流せない。悲哀を言葉にする術も知らない。

 ……ああ、今この時だけでも、こいつが人間だったなら……。

「――終」

 声を掛けるが、彼はこちらを振り向かない。

 それでも、あたしは続けた。

「明日、晴れたら……坊ちゃまの墓を作ってやろう。このままじゃ、坊ちゃまも浮かばれねえよ」

 すると彼は、白骨を凝視したまま小さく頷いた。

 あたしも、坊ちゃまだったその骸に視線を遣る。

 最後まで、自らの意志で人間ヒトである事を貫いた坊ちゃま。

 ――これで、良かったのか?

 胸中での問い掛けには、答える声など無かった。

 どうどうと窓を打ち付けていた雨は、いつの間にか静かに控えめな音へと変わっていた。……もう、小降りだ。

 明日は、晴れるといいな。
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