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Chapter.6 真実

籠城

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 終は、アレが畠山だとはわからなかったようだ。
 突然行方を眩ませた老執事の姿を不思議そうに探していたので、「畠山は職を辞した」とだけ説明した。

 あまり腑に落ちない様子の彼だったが……終に本当の事は言わない方がいいだろう。自分が畠山だったモノを手に掛けたと知ったら、この感情を持つ稀有なアンドロイドはおそらく傷付くに違いない。

 畠山を喪った喪失感は、その後数日掛けてようやく訪れた。

 屋敷の何処にも、彼が存在しない。……そのぽっかりと空いた空虚さが、徐々に染み入って来たのだ。

 それでも、畠山が異形の怪物と化してしまった事実は、いつまで経っても受け入れられなかった。脳での理解を、心が拒む。……信じたくなかった。

 その間も、世界は急速に混沌に包まれていく。

 いつからか報道も止み、電気の供給も止まっていた。
 海外の父とも連絡は取れず、どうしているのかと今更になって父の事をよく考えるようになった。

 ……人の事は言えないな。僕も充分、薄情な息子だった。

 僕は、終と二人この家に閉じ籠っていた。

 外は最早、異形の巣窟……。家の中の方が少しは安全だ。食糧などの生活品もそれなりに蓄えがあったので、すぐに尽きる心配は無い。

 終は相変わらず状況をあまり把握していない様子で、平常時と同じように暢気に過ごしている。
 その姿に、僕の心も幾分か救われた。

「坊ちゃまは、この所、あまり元気が無いように見受けられます。終は心配です」

 夜、ベッドの中で震える僕に、枕元に控えた終が言った。僕はいつものように「大丈夫だ」と強がりを返す。

 本当は、何も大丈夫なんかじゃない。一人で夜を過ごす事も、怖くて出来なくなっていた。それを知ってか知らずか、終は僕を励ました。

「坊ちゃま。終がお傍におります。ずっと、坊ちゃまのお傍に」

 終の存在とその言葉に、ようやく眠りに就ける。……そんな夜が続いた。
 
 言いようのない恐怖と不安と絶望が胸を占める中、ただ、一日一日とやり過ごしていく。

 それだけの日々が、漫然と流れ……。

 ――そして、遂に僕の番が訪れる。

 それは、畠山の時と同じように、本当に何の前触れも無く、唐突だった。
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