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Chapter.5 題名の無い本
主従契約
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強烈な登場の仕方をしたアンドロイドに呆気に捕られる僕を余所に、横合いから今度は工場の従業員らしき人物が飛び出して来た。
「待てコラ! お前は余計な事をするなと、あれ程……」
と、ここで、呆然と見つめる僕達の存在に気が付いて慌てて頭を下げる。
「ああ、ご来客中でしたか! 失礼致しました!」
ほっそりとしたその従業員の登場で、我に返ったように工場長が叱咤した。
「またか! 全く……拘束しておけと言っただろう!」
「それが……どんなに厳重に繋いでおいても、簡単に抜け出してしまうんですよ」
「たくっ……怪力めが」
苦々しく吐き捨てる工場長。対する件のアンドロイドは、そちらには頓着せず血で汚れた手袋を頻りに気にしている。
僕達に全くお構いなしに交わされるそのやりとりに焦れたように、遂には畠山が声を上げた。
「あの……」
説明を促すニュアンスのそれに、工場長と従業員がはっとして振り返る。
「ああ、お見苦しい所を、申し訳ありません」
それから、緑色の青年アンドロイドを示して……。
「こいつは、失敗作でして……。元々は、ボディガード機能搭載の新型執事アンドロイドの試作品として造られたのですが……製造過程で何を間違えたのか、どうも何をやらせても失敗ばかりで。その癖ボディガード機能ばかりが変に働いてしまい、妙に腕っぷしが強いというか……。これでは、執事というより、戦闘アンドロイドです」
汗を拭き拭き、工場長が弁明する。
「当然、この型は製造中止。こいつも、危険なんで、明日廃棄処分する所なのですが……不思議な事に、電源を切っても動いてるんですよ。困ったもんです」
「……ふむ」
――失敗作の戦闘アンドロイド、か。
「気に入った。そいつを貰おう」
「えぇ⁉」
「坊ちゃま⁉」
僕の発言に、畠山も工場長達も驚きを顕にする。
「ですが、これは先程も申したように、失敗作の不良品でして……お売りするわけには……」
「売り物じゃないのなら、タダで貰っていこう。どうせ捨てる物なら、僕が拾ったって構わないだろう?」
「ですが、危険で……」
「僕に何かあったとしても、お前らに責任を問うつもりはない」
畳掛けるように言うと、工場長も終いには口籠った。その隙を逃さず、僕は戦闘アンドロイドに向けて宣告した。
「決まりだ。今日から、お前は僕の執事だ。僕と共に、来い」
すると、相変わらず手袋の汚れを気にしていたアンドロイドが、初めてこちらを振り向いた。
暫くはきょとんした様子で僕を見つめていたが、やがて、理解が及んだようで……。
「畏まりました、ご主人様。私は今日から、あなたの執事です。誠心誠意、お仕え致します」
最新型を思わせる実に滑らかな笑顔を作り、胸に手を当てて礼をした。
これが、僕とそのポンコツアンドロイドとの出逢いだった。
「待てコラ! お前は余計な事をするなと、あれ程……」
と、ここで、呆然と見つめる僕達の存在に気が付いて慌てて頭を下げる。
「ああ、ご来客中でしたか! 失礼致しました!」
ほっそりとしたその従業員の登場で、我に返ったように工場長が叱咤した。
「またか! 全く……拘束しておけと言っただろう!」
「それが……どんなに厳重に繋いでおいても、簡単に抜け出してしまうんですよ」
「たくっ……怪力めが」
苦々しく吐き捨てる工場長。対する件のアンドロイドは、そちらには頓着せず血で汚れた手袋を頻りに気にしている。
僕達に全くお構いなしに交わされるそのやりとりに焦れたように、遂には畠山が声を上げた。
「あの……」
説明を促すニュアンスのそれに、工場長と従業員がはっとして振り返る。
「ああ、お見苦しい所を、申し訳ありません」
それから、緑色の青年アンドロイドを示して……。
「こいつは、失敗作でして……。元々は、ボディガード機能搭載の新型執事アンドロイドの試作品として造られたのですが……製造過程で何を間違えたのか、どうも何をやらせても失敗ばかりで。その癖ボディガード機能ばかりが変に働いてしまい、妙に腕っぷしが強いというか……。これでは、執事というより、戦闘アンドロイドです」
汗を拭き拭き、工場長が弁明する。
「当然、この型は製造中止。こいつも、危険なんで、明日廃棄処分する所なのですが……不思議な事に、電源を切っても動いてるんですよ。困ったもんです」
「……ふむ」
――失敗作の戦闘アンドロイド、か。
「気に入った。そいつを貰おう」
「えぇ⁉」
「坊ちゃま⁉」
僕の発言に、畠山も工場長達も驚きを顕にする。
「ですが、これは先程も申したように、失敗作の不良品でして……お売りするわけには……」
「売り物じゃないのなら、タダで貰っていこう。どうせ捨てる物なら、僕が拾ったって構わないだろう?」
「ですが、危険で……」
「僕に何かあったとしても、お前らに責任を問うつもりはない」
畳掛けるように言うと、工場長も終いには口籠った。その隙を逃さず、僕は戦闘アンドロイドに向けて宣告した。
「決まりだ。今日から、お前は僕の執事だ。僕と共に、来い」
すると、相変わらず手袋の汚れを気にしていたアンドロイドが、初めてこちらを振り向いた。
暫くはきょとんした様子で僕を見つめていたが、やがて、理解が及んだようで……。
「畏まりました、ご主人様。私は今日から、あなたの執事です。誠心誠意、お仕え致します」
最新型を思わせる実に滑らかな笑顔を作り、胸に手を当てて礼をした。
これが、僕とそのポンコツアンドロイドとの出逢いだった。
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