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第九章 水面に立つ波紋
9-4 山積みの問題と膠着状態
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翌日も大事を取って、九重には学校を休ませた。当人は行くと言い張ってたけど、昨夜の調子じゃまだ無理だろ。
四ノ宮の言ってたように温室育ち云々じゃねーけど、普段滅多に風邪を引かない(本人談)九重は、どうやら一度引いたら長引くタイプのようだ。
オレはといえば、一人での登校は二日目以降は車田さんのお世話になっていた。初日の四ノ宮との痴漢ごっこで、流石に電車はもう懲りた。
例によって学校から少し離れた場所で下車して、車田さんに行ってきますをした時だった。――須崎にばったり会った。
「あ、須崎!」
「……おう」
「そっか、須崎んち、こっち方面だもんな。はよ!」
小走りに駆け寄りながら挨拶すると、須崎は小さく首肯を返してくれた。それから、こちらをじっと見て、
「喉、すっかり良さそうだな」
と、少し安堵したように言った。オレは先日の一件を思い出して、申し訳ないやら恥ずかしいやら、何とも複雑な気持ちになった。
「おかげさまで。その節は、さんきゅな!」
諸々を吹き飛ばすようにオレが努めて明るく告げると、須崎は微かに口元を緩ませて笑った。……コイツ、無意識ならこういう優しい顔も出来るんだよな。バイト中にこれが出来ればな、なんて思いつつ、須崎と並んで道を歩く。
人目を避けて停めた人通りの少ない細い路地だ。須崎と二人きりなのを見て取り、ふとオレはあることを思いついた。
「そうだ、須崎」
「あ?」
呼び掛けて、抱き締めた。須崎のガタイの良い身体。ゴツゴツした感触。……九重よりもタカに近いな。
ただでさえ硬いのに、須崎は一瞬にして硬直し、ガッチガチになった。動揺に開かれた口腔から、「かっかかか」と笑い声にも似た吃音が漏れる。たぶん、〝花鏡〟って言いたいんだと思う。
「どうだ? ドキドキするか?」
「どっ!? どどど」
〝ドキドキ〟なのか、〝どうした〟なのか。本人から聞き出すのは難しそうなので、五十鈴センパイがやってたみたいに、オレも須崎の心臓の辺りに手を添えてみた。途端、びくりと反る須崎の背中。
……ふむ、明らかに鼓動速いな? むっちゃバクバクゆってる。
「そうだよな……別に好きな相手じゃなくても、こんだけ接近すれば普通嫌でもドキドキするもんだよな? うん!」
そうだな! やっぱこれが普通なんだ!
「ありがとな、須崎! 急に悪かった!」
満足して身を離すと、須崎は鯉のぼりのお母さんみたいに真っ赤になって大口を開けたまま固まっていた。何か言いたげに喉を震わせているけれど、その振動は言葉にはならず、ただの意味を成さない奇声として周囲に巻き散らかされただけだった。
「おい、須崎? 大丈夫か?」
流石に様子が変だと、焦って問い掛けた次の瞬間、須崎はボウリングのピンよろしく、直立したまま突如後方に倒れ込んだ。
「わぁあッ!! 須崎ぃいー~~!?」
朝の閑静な住宅街に、須崎の石頭がアスファルトに直撃する轟音と、オレの慌てた叫声が響き渡った。
◆◇◆
……ということがあったせいだろうな。オレはその後休み時間に、タカが諸用で居ない隙を狙って、須崎の取り巻きーSに呼び出された。場所は体育館倉庫裏。大分お怒りの様子なのが空気から伝わる取り巻きーSは、到着早々オレを壁際に押いやり、詰め寄ってきた。
「花鏡、てめぇ……須崎さんに何した?」
「何って……ちょっとした検証?」
なんて説明すればいいんだ、あれは。オレの困惑などお構い無しに、取り巻きーSは至近距離から凄んでくる。
「てめえ、もう金輪際須崎さんと関わんなよ」
「はぁ? 今朝の件は、悪かったって」
「それだけじゃねー! てめえと話すようになってから、須崎さんの様子がおかしい!」
須崎の様子が……? 怪訝に思っていると、取り巻き2が説明してくれた。
「そうだそうだ! 切れ味抜群のナイフみたいにギラギラ尖っていたあの人が、あんなふにゃふにゃなゴム製のペーパーナイフみたいになっちまうなんて、どういうことだ!」
「んなこと言われても……それだけ優しくなったってことじゃねーの? いいことなんじゃねーのか?」
「良くない! あんなダセェ須崎さん、俺らは認めねえ!!」
「そうだそうだ! 最強にクールでカッケェ俺らの須崎さんを返せ!」
〝ダサい〟? ――何か、ムッとした。
「ダサくはねーだろ。いいじゃねえか、優しい須崎。お前らこそ、アイツのことちゃんと見てなかったんじゃねーのか。アイツが本当はいいお兄ちゃんだってことも、何も知らねーだろ」
「なにぃ!?」
須崎はこれまで、家に友達を連れてくることもなかったって弟Sが言ってたもんな。コイツらがこんなんだから、見せられなかったんだろう。
眉間に皺を寄せる取り巻きーSに、オレは決然と述べた。
「とにかく、須崎はもうオレのダチだ。ダチと会うなとか、外野に言われる筋合いねーし!」
「んだと!?」
「てめえッ!!」
激昂した取り巻き1の拳が大きく振りかぶられるのを見て、思わず身構える。しかし、その拳は当たることなく、取り巻き2によって取り押さえられた。
「待て! 殴んのはマズイ! 怪我させたのがバレたら、須崎さんに大目玉食らうぞ!」
「そ、そうか……でもよぉ!」
「こういうのは、バレないように上手くやんだよ。そうだな……ちょっと脱がせて、恥ずかしい写真でも撮るか。そうすりゃ、コイツも言うこと聞かざるを得ないだろ」
「成程!」
「はぁあ!?」
大人しく聞いてりゃ、またそれかよ!! 内心ツッコむオレにはやはり構わず、取り巻きーSの四本の手がこちらに伸びてくる。
悲鳴を発しようとした口を掌で遮られ、残った三つの手の内二つが身体を押さえ付けると、最後の一つがオレのシャツを掴んだ。
直後、裂かれたのはシャツではなく、空気だった。凄まじい速度で飛んできた何かが、取り巻き2の脳天を抉るように直撃した。
「ぐわぁっ!」
「!? だ、誰だ!?」
拘束が緩んだ。その隙に壁際から脱し、その何か――サッカーボールだ。の、飛んできた方を見遣る。そこには、仁王像並の怒りの形相を浮かべたタカ、その人が居た。
「タカ!」
「トキ! 大丈夫か!?」
駆け寄ってきたタカに肩を揺すられ、オレは呆気に取られつつ、こくこくと頷いた。それを受けてタカは少しホッとしたように一瞬だけ表情を緩めてから、すぐさま仁王に戻って取り巻きーSを睨んだ。
「お前ら……トキに何をしていた」
「まっまだ何もしてねーよ!!」
「嘘を吐け!」
「た、タカ、いいよ! 本当にまだ何もされてない!」
このままだと取り巻きーSがボコボコにされそうな勢いだったので、タカの袖を引いて慌てて制止する。
「トキ、こんな奴らを庇う必要は」
「それに、オレがコイツらの親分に怪我させちまったのが原因だしさ! ごめんな、本当」
とにかく今は逃げろ、と目顔で促すと、取り巻きーSは「ちくしょう!」「覚えてろよ!」と、小気味よいくらい如何にもな捨て台詞を吐いて、その場からバタバタと駆け去っていった。
タカは後は追わずに、逃走する彼らの背を一頻り不穏な表情で睨み据えた後、くるりとこちらに向き直った。その頃には、もうすっかりいつもの心配性な幼馴染の顔に戻っていた。
「トキ、怪我は無いか?」
オレはまたこくこく頷いたけれど、タカの目はオレの乱れたシャツの襟ぐりから覗く鎖骨の下の絆創膏を捉えたようだった。
「トキ、それは……?」
「あっ、いや、これは違う! 別件で、ちょっと引っ掻いて!」
九重に付けられたキスマーク! ヒヤッとしたが、流石に絆創膏を外せとは言われなかった。タカは依然として心配そうな眼差しで、改めてオレの目を見た。
「トキ……須崎と関わるのは、もうやめた方がいいんじゃないか」
瞬間、絶句した。
「タカまでそんなこと言うのかよ」
「危険だろう。また今回みたいに因縁をつけられたら」
「やだよ、オレ。折角仲良くなれたのにさ」
オレがぶんむくれて返すと、タカは何か言いたげに口を開いたが、思い直したように今一度閉ざして、小さく頭を降った。
「そうだな……悪い。俺がトキの交友関係にまで口出しするのはおかしいよな。恋人でもないのに」
「えっ……」
ドキリとした。
そうだ。オレ……タカのことこそ、ちゃんと考えなきゃいけないのに。何で、気付いたら九重のことばっかり――。
「タカ……ごめん、オレ」
タカはハッとしたように瞠目した。それから、申し訳なさげに眉を下げて言う。
「悪い。急かすようなつもりはないんだ。……とにかく、アイツらには気を付けろよ」
大きな手が、優しくくしりゃりとオレの頭を撫でた。謝るのは、オレの方なのに。でもそれ以上は何も言えず、緩慢に首肯して、俯いた。
タカの優しさに甘えてばかりいた自分が、酷く恥ずかしい。だけど、タカの告白に返事をするとしたら、どちらに転んでも、きっともう今までみたいな関係性ではいられなくなる。
そう思うと後込みしてしまって、軽々に答えも出せないまま時間ばかりが無為に過ぎ去っていき――やがて、水泳大会がやってきた。
四ノ宮の言ってたように温室育ち云々じゃねーけど、普段滅多に風邪を引かない(本人談)九重は、どうやら一度引いたら長引くタイプのようだ。
オレはといえば、一人での登校は二日目以降は車田さんのお世話になっていた。初日の四ノ宮との痴漢ごっこで、流石に電車はもう懲りた。
例によって学校から少し離れた場所で下車して、車田さんに行ってきますをした時だった。――須崎にばったり会った。
「あ、須崎!」
「……おう」
「そっか、須崎んち、こっち方面だもんな。はよ!」
小走りに駆け寄りながら挨拶すると、須崎は小さく首肯を返してくれた。それから、こちらをじっと見て、
「喉、すっかり良さそうだな」
と、少し安堵したように言った。オレは先日の一件を思い出して、申し訳ないやら恥ずかしいやら、何とも複雑な気持ちになった。
「おかげさまで。その節は、さんきゅな!」
諸々を吹き飛ばすようにオレが努めて明るく告げると、須崎は微かに口元を緩ませて笑った。……コイツ、無意識ならこういう優しい顔も出来るんだよな。バイト中にこれが出来ればな、なんて思いつつ、須崎と並んで道を歩く。
人目を避けて停めた人通りの少ない細い路地だ。須崎と二人きりなのを見て取り、ふとオレはあることを思いついた。
「そうだ、須崎」
「あ?」
呼び掛けて、抱き締めた。須崎のガタイの良い身体。ゴツゴツした感触。……九重よりもタカに近いな。
ただでさえ硬いのに、須崎は一瞬にして硬直し、ガッチガチになった。動揺に開かれた口腔から、「かっかかか」と笑い声にも似た吃音が漏れる。たぶん、〝花鏡〟って言いたいんだと思う。
「どうだ? ドキドキするか?」
「どっ!? どどど」
〝ドキドキ〟なのか、〝どうした〟なのか。本人から聞き出すのは難しそうなので、五十鈴センパイがやってたみたいに、オレも須崎の心臓の辺りに手を添えてみた。途端、びくりと反る須崎の背中。
……ふむ、明らかに鼓動速いな? むっちゃバクバクゆってる。
「そうだよな……別に好きな相手じゃなくても、こんだけ接近すれば普通嫌でもドキドキするもんだよな? うん!」
そうだな! やっぱこれが普通なんだ!
「ありがとな、須崎! 急に悪かった!」
満足して身を離すと、須崎は鯉のぼりのお母さんみたいに真っ赤になって大口を開けたまま固まっていた。何か言いたげに喉を震わせているけれど、その振動は言葉にはならず、ただの意味を成さない奇声として周囲に巻き散らかされただけだった。
「おい、須崎? 大丈夫か?」
流石に様子が変だと、焦って問い掛けた次の瞬間、須崎はボウリングのピンよろしく、直立したまま突如後方に倒れ込んだ。
「わぁあッ!! 須崎ぃいー~~!?」
朝の閑静な住宅街に、須崎の石頭がアスファルトに直撃する轟音と、オレの慌てた叫声が響き渡った。
◆◇◆
……ということがあったせいだろうな。オレはその後休み時間に、タカが諸用で居ない隙を狙って、須崎の取り巻きーSに呼び出された。場所は体育館倉庫裏。大分お怒りの様子なのが空気から伝わる取り巻きーSは、到着早々オレを壁際に押いやり、詰め寄ってきた。
「花鏡、てめぇ……須崎さんに何した?」
「何って……ちょっとした検証?」
なんて説明すればいいんだ、あれは。オレの困惑などお構い無しに、取り巻きーSは至近距離から凄んでくる。
「てめえ、もう金輪際須崎さんと関わんなよ」
「はぁ? 今朝の件は、悪かったって」
「それだけじゃねー! てめえと話すようになってから、須崎さんの様子がおかしい!」
須崎の様子が……? 怪訝に思っていると、取り巻き2が説明してくれた。
「そうだそうだ! 切れ味抜群のナイフみたいにギラギラ尖っていたあの人が、あんなふにゃふにゃなゴム製のペーパーナイフみたいになっちまうなんて、どういうことだ!」
「んなこと言われても……それだけ優しくなったってことじゃねーの? いいことなんじゃねーのか?」
「良くない! あんなダセェ須崎さん、俺らは認めねえ!!」
「そうだそうだ! 最強にクールでカッケェ俺らの須崎さんを返せ!」
〝ダサい〟? ――何か、ムッとした。
「ダサくはねーだろ。いいじゃねえか、優しい須崎。お前らこそ、アイツのことちゃんと見てなかったんじゃねーのか。アイツが本当はいいお兄ちゃんだってことも、何も知らねーだろ」
「なにぃ!?」
須崎はこれまで、家に友達を連れてくることもなかったって弟Sが言ってたもんな。コイツらがこんなんだから、見せられなかったんだろう。
眉間に皺を寄せる取り巻きーSに、オレは決然と述べた。
「とにかく、須崎はもうオレのダチだ。ダチと会うなとか、外野に言われる筋合いねーし!」
「んだと!?」
「てめえッ!!」
激昂した取り巻き1の拳が大きく振りかぶられるのを見て、思わず身構える。しかし、その拳は当たることなく、取り巻き2によって取り押さえられた。
「待て! 殴んのはマズイ! 怪我させたのがバレたら、須崎さんに大目玉食らうぞ!」
「そ、そうか……でもよぉ!」
「こういうのは、バレないように上手くやんだよ。そうだな……ちょっと脱がせて、恥ずかしい写真でも撮るか。そうすりゃ、コイツも言うこと聞かざるを得ないだろ」
「成程!」
「はぁあ!?」
大人しく聞いてりゃ、またそれかよ!! 内心ツッコむオレにはやはり構わず、取り巻きーSの四本の手がこちらに伸びてくる。
悲鳴を発しようとした口を掌で遮られ、残った三つの手の内二つが身体を押さえ付けると、最後の一つがオレのシャツを掴んだ。
直後、裂かれたのはシャツではなく、空気だった。凄まじい速度で飛んできた何かが、取り巻き2の脳天を抉るように直撃した。
「ぐわぁっ!」
「!? だ、誰だ!?」
拘束が緩んだ。その隙に壁際から脱し、その何か――サッカーボールだ。の、飛んできた方を見遣る。そこには、仁王像並の怒りの形相を浮かべたタカ、その人が居た。
「タカ!」
「トキ! 大丈夫か!?」
駆け寄ってきたタカに肩を揺すられ、オレは呆気に取られつつ、こくこくと頷いた。それを受けてタカは少しホッとしたように一瞬だけ表情を緩めてから、すぐさま仁王に戻って取り巻きーSを睨んだ。
「お前ら……トキに何をしていた」
「まっまだ何もしてねーよ!!」
「嘘を吐け!」
「た、タカ、いいよ! 本当にまだ何もされてない!」
このままだと取り巻きーSがボコボコにされそうな勢いだったので、タカの袖を引いて慌てて制止する。
「トキ、こんな奴らを庇う必要は」
「それに、オレがコイツらの親分に怪我させちまったのが原因だしさ! ごめんな、本当」
とにかく今は逃げろ、と目顔で促すと、取り巻きーSは「ちくしょう!」「覚えてろよ!」と、小気味よいくらい如何にもな捨て台詞を吐いて、その場からバタバタと駆け去っていった。
タカは後は追わずに、逃走する彼らの背を一頻り不穏な表情で睨み据えた後、くるりとこちらに向き直った。その頃には、もうすっかりいつもの心配性な幼馴染の顔に戻っていた。
「トキ、怪我は無いか?」
オレはまたこくこく頷いたけれど、タカの目はオレの乱れたシャツの襟ぐりから覗く鎖骨の下の絆創膏を捉えたようだった。
「トキ、それは……?」
「あっ、いや、これは違う! 別件で、ちょっと引っ掻いて!」
九重に付けられたキスマーク! ヒヤッとしたが、流石に絆創膏を外せとは言われなかった。タカは依然として心配そうな眼差しで、改めてオレの目を見た。
「トキ……須崎と関わるのは、もうやめた方がいいんじゃないか」
瞬間、絶句した。
「タカまでそんなこと言うのかよ」
「危険だろう。また今回みたいに因縁をつけられたら」
「やだよ、オレ。折角仲良くなれたのにさ」
オレがぶんむくれて返すと、タカは何か言いたげに口を開いたが、思い直したように今一度閉ざして、小さく頭を降った。
「そうだな……悪い。俺がトキの交友関係にまで口出しするのはおかしいよな。恋人でもないのに」
「えっ……」
ドキリとした。
そうだ。オレ……タカのことこそ、ちゃんと考えなきゃいけないのに。何で、気付いたら九重のことばっかり――。
「タカ……ごめん、オレ」
タカはハッとしたように瞠目した。それから、申し訳なさげに眉を下げて言う。
「悪い。急かすようなつもりはないんだ。……とにかく、アイツらには気を付けろよ」
大きな手が、優しくくしりゃりとオレの頭を撫でた。謝るのは、オレの方なのに。でもそれ以上は何も言えず、緩慢に首肯して、俯いた。
タカの優しさに甘えてばかりいた自分が、酷く恥ずかしい。だけど、タカの告白に返事をするとしたら、どちらに転んでも、きっともう今までみたいな関係性ではいられなくなる。
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