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第六章 壊れた、小さな世界。
6-8 同情と喪失と、置き去りにされた携帯電話 ◆
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「――ッんぁ、あ!?」
深く貫かれた衝撃で目を覚ました。もう何度目か、オレはまた気を失っていたのだと悟る。
「トキさん、何勝手に休んでるんですか? 僕の気の済むまで付き合ってくれるんでしょう? まだまだ、全然足りませんよ」
「しの……っぁ、ん!」
オレの準備を待たず、四ノ宮は奥を容赦なく穿った。パンパンと肉と肉のぶつかる湿った音が鳴り響き、身体が小刻みに揺さぶられる。抱え上げられた両脚ががくがくと震え、指先に知らず力が入る。
「まっ、あん、はぁッ……ぁ、ちょ、待っ、て!」
「待ちません」
「ひッ、ゃあ!」
制止するように伸ばした手は届かず、与えられる快楽に負けてぱたりと落下した。そのまま行き場なく床に爪を立てて堪える。
接合部からは血と汗とローションと四ノ宮の出したものが溢れ出し、抽挿の度じゅぼじゅぼと掻き混ぜられては畳の目に飛び散って周囲を汚した。
「ィク……! またイっちゃ! ちょ、止まッ――~~!!」
握り込んでいた足の指先がピンと張った。びくびくと陸に打ち上げられた魚みたいに跳ねて果てても、全身に広がった快楽の波は引いてはくれない。もうずっと頂に昇ったまま降りてこられずに、ふわふわと漂っていた。
オレが果てたところで、四ノ宮はお構い無しに突き続ける。イってるのに、もうずっとイってるのに、止まらない。
こんなんじゃ、まともに会話も出来ない。伝えたいことが、あるのに。
「ふッ、ぅっ……しの、ッみや!」
「何ですか? さっきみたいに〝郁〟って呼んでくださいよ」
「呼んでなっ、ぁあ!」
――プラグよりもずっと長くて太い四ノ宮のそれは、たっぷりとローションを使っても挿入の際激痛を伴った。段階を踏まず一足飛びに最小から極大サイズに切り替えたようなものだ。入り口は耐え切れずに裂け、出血に見舞われた。
内部の圧迫感もプラグの比ではなく、息をするのも苦しいレベルでお腹の上の方までぽっこり膨らんだ。そのまま動かれたらそれだけで軽く意識が飛んだが、激しい痛みにすぐに引き戻され、行為は当然の如く続行された。
その内に傷みに慣れてくると、今度は別の感覚に苛まれた。
奥の、弱い所。そこを擦られるとゾクゾクと背筋に電流が走り、それまで苦悶に喘いでいた声が途端に甘いものに変わった。オレの苦手なその場所を四ノ宮はすぐに覚えたらしく、そこばかりを執拗に責め立てられた。
一度達したらもう回路が繋がってしまったのか、敏感になった身体は以降簡単に絶頂まで突き上げられるようになった。
四ノ宮はそれが面白いらしく、何度も何度もオレをイかせて飛ばした。激し過ぎる責めに意識を失うと、その度体勢を変えて別角度から強い刺激を与えられて目を覚ます。そうして、そのまままた揺さぶられては果てる。――もうずっと、それの繰り返しだ。
時間感覚が危うくなる。
「ぃま、なんっ、ァ、あッ! ……なん、じっ」
「え、まさかこの状態で時間を気にしてるんですか? 結構余裕そうですね。前も一緒に扱いてあげましょうか?」
「ちが……ッいらな! っヤだ!」
四ノ宮は自分で言っていた通り、どうやら絶倫のようだ。初っ端から抜かずに三発くらい立て続けに射たれ、その後も出しても出しても、ちっとも萎えない。
一応「中は嫌だ」と抗議はしたものの、やっぱり徒労に終わり、嫌がらせのように最奥に幾度も精を注ぎ込まれた。
「妊娠しないんだから、別に良いでしょう?」って、そういう問題じゃない。洗う時どうすんだよ。どうやって掻き出すんだよ、そんな凄い奥深く。
ていうか、何だよその量。どんだけ出るんだよ。とにかく、止まれ。待ってくれ。
「ここ、のえ……ッここのえが!」
九重の名前を出したら、ようやく四ノ宮の動きが止まった。この隙にオレは必死に訴え掛ける。
「ハァ、九重がっ……オレ、帰り……遅くなると、心配……っす、じ……じぃぴーえしゅっ、ここ、特定ッ……される」
ダメだ、息が上がってて単語でしか喋れねえ。しかも盛大に噛んだ。それでも四ノ宮は理解してくれたようだ。怪訝げに眉根を寄せて返してきた。
「え? トキさん、まさか会長と同棲してるんですか? 他の男を想ってるのに?」
確かにタカのことを想ってはいるが、四ノ宮の言っているのとはちょっと違う。でも、ここで友達だって主張したら何だかタカを傷付ける気がして、言葉に詰まった。
「GPSで特定? 会長の愛、重っ。確かに、それは面倒ですね。あの人財力がある上に、トキさんと違ってそれを私利私欲の為に行使することを全く厭わないタイプの人間じゃないですか。僕がトキさんの初めてを奪ったなんて知られたら、社会的に抹殺されるか実際に抹殺されるかもしれませんよね」
物騒なことを言いながらも、四ノ宮は何だか愉しそうだ。それにしても、九重の表の顔しか見てない筈なのに、アイツのことよく分かってるな。やっぱ、類友だから思考パターンが読めるのか?
四ノ宮は壁に掛かった飾り気のないアナログ時計に目を遣った。釣られて見上げたけど、視界がぼやけてて針の位置はよく分かんねぇ。
「そうですね。そろそろ本来のトキさんの退勤時間になる頃ですし、会長に連絡を入れておいた方が良いかもしれませんね」
お許しが出た為、オレは九重に電話を掛けることになった。悪趣味な四ノ宮は、挿れたままの状態でオレを膝に座らせて、その体勢での通話を強いた。気まぐれで動かれでもしたらマズイ。失敗は許されない。
端末を操作する指先が震えて、危うく別の所に掛けそうになった。そういやオレ、九重のアドレスを前に『バカ』で登録したままだったなって、その二文字を見た時皮肉にも笑みが漏れた。
それが四ノ宮の気に障ったらしく、「何笑ってるんです?」って下から激しく突かれて泣いて啼いた。
再び呼吸を落ち着けて準備を整えてから、改めてチャレンジする。九重はコールしてすぐに出た。まだ心の準備が、とか言ってる場合でもなく。緊張に喉が乾いて声が掠れる。ていうか、ただでさえ啼き過ぎで枯れてる。大丈夫か? コレ。
「ぁっ……九重? あ゛のっ、」
『花鏡、どうした? 声が変だぞ』
ほら、一発で怪しまれてる。つーか、九重の声聞いたら急に喉の奥がギュッてなって、鼻の奥がツンてなって、泣きそうだ。ダメだ、堪えろ。
「ちょ、ちょっと仕事でっが、頑張り過ぎて潰したかな! ははっ! ハァ……あのっ、さ! 今日……バイト先に、四ノ宮が来て……相談、されたんだけど」
『四ノ宮が?』
「んッ、ぅん……」
その四ノ宮が、後ろから急にオレの胸の突起を弄り始めた。走る刺激に思わず締め付けて、内部の四ノ宮を一層感じてしまう。やめろバカ、バレるって!
「しのみゃ、今ッ……す、ストーカーに、悩まされてるっぽくて……それで、めっちゃ、怖がっててッ」
『ストーカー?』
「オレ、ほっとけなぃ……から、んっ、今夜……泊まる……一人に、出来ない……ハァ、ごめッ」
『おい、花鏡。お前またお節介』
「ごめん……九重、ごめん……っ、朝、ちゃんと、帰るッ……お前んとこ、帰る、から……」
嘘偽りのない本心だった。それが伝わったのか、九重は少しの間考えるように黙した後、小さく溜息を吐いて、「分かった」と言ってくれた。
『でも、危ないことはするなよ。何かあったらすぐに連絡しろ』
「んッ、ありが、と……ハァ、九重……」
『何だ?』
「おや、すみ……っう、ぁんッ!」
間一髪、嬌声を聴かせる前に通話を切った。終話を待たずに四ノ宮が下から腰を打ち付けてきていた。手から鴇色の端末が滑り落ち、畳の上に落下する。そのまま再び激しく抽挿を送られ、後はもう思考の余地もなくひたすら喘いだ。
床の上にポツリと置き去りにされた携帯電話。視界の隅に映るそれに、あの広い部屋でたった一人残された九重の姿を重ねてしまい、胸が張り裂けそうで、沢山泣いた。
【続】
深く貫かれた衝撃で目を覚ました。もう何度目か、オレはまた気を失っていたのだと悟る。
「トキさん、何勝手に休んでるんですか? 僕の気の済むまで付き合ってくれるんでしょう? まだまだ、全然足りませんよ」
「しの……っぁ、ん!」
オレの準備を待たず、四ノ宮は奥を容赦なく穿った。パンパンと肉と肉のぶつかる湿った音が鳴り響き、身体が小刻みに揺さぶられる。抱え上げられた両脚ががくがくと震え、指先に知らず力が入る。
「まっ、あん、はぁッ……ぁ、ちょ、待っ、て!」
「待ちません」
「ひッ、ゃあ!」
制止するように伸ばした手は届かず、与えられる快楽に負けてぱたりと落下した。そのまま行き場なく床に爪を立てて堪える。
接合部からは血と汗とローションと四ノ宮の出したものが溢れ出し、抽挿の度じゅぼじゅぼと掻き混ぜられては畳の目に飛び散って周囲を汚した。
「ィク……! またイっちゃ! ちょ、止まッ――~~!!」
握り込んでいた足の指先がピンと張った。びくびくと陸に打ち上げられた魚みたいに跳ねて果てても、全身に広がった快楽の波は引いてはくれない。もうずっと頂に昇ったまま降りてこられずに、ふわふわと漂っていた。
オレが果てたところで、四ノ宮はお構い無しに突き続ける。イってるのに、もうずっとイってるのに、止まらない。
こんなんじゃ、まともに会話も出来ない。伝えたいことが、あるのに。
「ふッ、ぅっ……しの、ッみや!」
「何ですか? さっきみたいに〝郁〟って呼んでくださいよ」
「呼んでなっ、ぁあ!」
――プラグよりもずっと長くて太い四ノ宮のそれは、たっぷりとローションを使っても挿入の際激痛を伴った。段階を踏まず一足飛びに最小から極大サイズに切り替えたようなものだ。入り口は耐え切れずに裂け、出血に見舞われた。
内部の圧迫感もプラグの比ではなく、息をするのも苦しいレベルでお腹の上の方までぽっこり膨らんだ。そのまま動かれたらそれだけで軽く意識が飛んだが、激しい痛みにすぐに引き戻され、行為は当然の如く続行された。
その内に傷みに慣れてくると、今度は別の感覚に苛まれた。
奥の、弱い所。そこを擦られるとゾクゾクと背筋に電流が走り、それまで苦悶に喘いでいた声が途端に甘いものに変わった。オレの苦手なその場所を四ノ宮はすぐに覚えたらしく、そこばかりを執拗に責め立てられた。
一度達したらもう回路が繋がってしまったのか、敏感になった身体は以降簡単に絶頂まで突き上げられるようになった。
四ノ宮はそれが面白いらしく、何度も何度もオレをイかせて飛ばした。激し過ぎる責めに意識を失うと、その度体勢を変えて別角度から強い刺激を与えられて目を覚ます。そうして、そのまままた揺さぶられては果てる。――もうずっと、それの繰り返しだ。
時間感覚が危うくなる。
「ぃま、なんっ、ァ、あッ! ……なん、じっ」
「え、まさかこの状態で時間を気にしてるんですか? 結構余裕そうですね。前も一緒に扱いてあげましょうか?」
「ちが……ッいらな! っヤだ!」
四ノ宮は自分で言っていた通り、どうやら絶倫のようだ。初っ端から抜かずに三発くらい立て続けに射たれ、その後も出しても出しても、ちっとも萎えない。
一応「中は嫌だ」と抗議はしたものの、やっぱり徒労に終わり、嫌がらせのように最奥に幾度も精を注ぎ込まれた。
「妊娠しないんだから、別に良いでしょう?」って、そういう問題じゃない。洗う時どうすんだよ。どうやって掻き出すんだよ、そんな凄い奥深く。
ていうか、何だよその量。どんだけ出るんだよ。とにかく、止まれ。待ってくれ。
「ここ、のえ……ッここのえが!」
九重の名前を出したら、ようやく四ノ宮の動きが止まった。この隙にオレは必死に訴え掛ける。
「ハァ、九重がっ……オレ、帰り……遅くなると、心配……っす、じ……じぃぴーえしゅっ、ここ、特定ッ……される」
ダメだ、息が上がってて単語でしか喋れねえ。しかも盛大に噛んだ。それでも四ノ宮は理解してくれたようだ。怪訝げに眉根を寄せて返してきた。
「え? トキさん、まさか会長と同棲してるんですか? 他の男を想ってるのに?」
確かにタカのことを想ってはいるが、四ノ宮の言っているのとはちょっと違う。でも、ここで友達だって主張したら何だかタカを傷付ける気がして、言葉に詰まった。
「GPSで特定? 会長の愛、重っ。確かに、それは面倒ですね。あの人財力がある上に、トキさんと違ってそれを私利私欲の為に行使することを全く厭わないタイプの人間じゃないですか。僕がトキさんの初めてを奪ったなんて知られたら、社会的に抹殺されるか実際に抹殺されるかもしれませんよね」
物騒なことを言いながらも、四ノ宮は何だか愉しそうだ。それにしても、九重の表の顔しか見てない筈なのに、アイツのことよく分かってるな。やっぱ、類友だから思考パターンが読めるのか?
四ノ宮は壁に掛かった飾り気のないアナログ時計に目を遣った。釣られて見上げたけど、視界がぼやけてて針の位置はよく分かんねぇ。
「そうですね。そろそろ本来のトキさんの退勤時間になる頃ですし、会長に連絡を入れておいた方が良いかもしれませんね」
お許しが出た為、オレは九重に電話を掛けることになった。悪趣味な四ノ宮は、挿れたままの状態でオレを膝に座らせて、その体勢での通話を強いた。気まぐれで動かれでもしたらマズイ。失敗は許されない。
端末を操作する指先が震えて、危うく別の所に掛けそうになった。そういやオレ、九重のアドレスを前に『バカ』で登録したままだったなって、その二文字を見た時皮肉にも笑みが漏れた。
それが四ノ宮の気に障ったらしく、「何笑ってるんです?」って下から激しく突かれて泣いて啼いた。
再び呼吸を落ち着けて準備を整えてから、改めてチャレンジする。九重はコールしてすぐに出た。まだ心の準備が、とか言ってる場合でもなく。緊張に喉が乾いて声が掠れる。ていうか、ただでさえ啼き過ぎで枯れてる。大丈夫か? コレ。
「ぁっ……九重? あ゛のっ、」
『花鏡、どうした? 声が変だぞ』
ほら、一発で怪しまれてる。つーか、九重の声聞いたら急に喉の奥がギュッてなって、鼻の奥がツンてなって、泣きそうだ。ダメだ、堪えろ。
「ちょ、ちょっと仕事でっが、頑張り過ぎて潰したかな! ははっ! ハァ……あのっ、さ! 今日……バイト先に、四ノ宮が来て……相談、されたんだけど」
『四ノ宮が?』
「んッ、ぅん……」
その四ノ宮が、後ろから急にオレの胸の突起を弄り始めた。走る刺激に思わず締め付けて、内部の四ノ宮を一層感じてしまう。やめろバカ、バレるって!
「しのみゃ、今ッ……す、ストーカーに、悩まされてるっぽくて……それで、めっちゃ、怖がっててッ」
『ストーカー?』
「オレ、ほっとけなぃ……から、んっ、今夜……泊まる……一人に、出来ない……ハァ、ごめッ」
『おい、花鏡。お前またお節介』
「ごめん……九重、ごめん……っ、朝、ちゃんと、帰るッ……お前んとこ、帰る、から……」
嘘偽りのない本心だった。それが伝わったのか、九重は少しの間考えるように黙した後、小さく溜息を吐いて、「分かった」と言ってくれた。
『でも、危ないことはするなよ。何かあったらすぐに連絡しろ』
「んッ、ありが、と……ハァ、九重……」
『何だ?』
「おや、すみ……っう、ぁんッ!」
間一髪、嬌声を聴かせる前に通話を切った。終話を待たずに四ノ宮が下から腰を打ち付けてきていた。手から鴇色の端末が滑り落ち、畳の上に落下する。そのまま再び激しく抽挿を送られ、後はもう思考の余地もなくひたすら喘いだ。
床の上にポツリと置き去りにされた携帯電話。視界の隅に映るそれに、あの広い部屋でたった一人残された九重の姿を重ねてしまい、胸が張り裂けそうで、沢山泣いた。
【続】
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