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第四章 就任!波乱の生徒会マスコット
4-6 可愛いあの子は、男の子!?
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「え……? 四ノ宮さん、お、男……?」
「四ノ宮でいいですよ。僕、年下なので」
言われてみれば、彼女……じゃなくて、彼の上履きのカラーは緑、一個下の一年生だ。ついでに言うなら、ボトムスはスカートじゃなくて、ズボン。……いや、でもだって! うちの学校割と自由な校風で! 女の子でも好んでズボンを穿いてる子多いし!? 四ノ宮さんくらい可愛ければ、朝みたいな奴への対策として敢えてズボンにしてるのかもって、思うじゃん!? 思うよな!?
改めてオレは、目の前のお人形さんのように愛らしい容貌をした美少女……いや、美少年を見た。嘘だろ……こんなに可愛い子が、男……?
「マジかよ……」
勝手に打ちひしがれるオレに、四ノ宮さんこと四ノ宮は眉を下げて申し訳なさそうに告げた。
「ごめんなさい……トキさんは、男の僕では嫌ですか?」
八の字眉毛、うるうるのお目目で上目遣いに見上げてくるその仕草は、きゅるんって効果音が聞こえてきそうな程に、ハチャメチャにあざと可愛い。
うっ、マジで可愛いな!?
「い、いや! そんなことは! 全然!」
男だと分かっても、ついときめいちまった……。慌ててぶんぶん首を左右に振るオレは今、たぶんめっちゃ赤面してる。
「本当ですか!? 良かった……トキさんにだけは、嫌われたくないんです、僕」
ホッと胸を撫で下ろして微笑むその様もまた、超絶に可愛いな!? ていうか、何でそんなオレのこと好きみたいな言い方すんの!? いや、読モとしてのオレのファンとは言ってたけど!! 何かそんな風に言われるとドキドキするじゃん!? ドキドキしちゃうじゃん!? 男!! 相手なのに!! しっかりしろ、オレ!!
「あ、そうだトキさん、広報のお仕事に関してなんですけど」
「ふぁ !? はい!?」
「今日は早速、トキさん新加入のお報せを載せましょうか。公式ホームページとSNS、あとは生徒会報ですね」
「そんなにあんの!?」
「月一発行の生徒会新聞なんてのもありますよ。これは新聞部からの取材形式で作られているものですけど」
「生徒会報ってのと、どう違うんだ?」
「生徒会報は新聞部の手を借りず、生徒会執行部自らで出している告知みたいなものですね。学校掲示板に張り出したり、生徒達に配布したりもします」
「ぬぇえ、結構大変そうだな、広報の仕事……」
「ご安心を。今まで通り僕や七瀬さんも全力でトキさんをサポートしますから!」
おぉ、頼もしい。握り拳をぎゅっとして見せる四ノ宮もやっぱり可愛いな……つら。これで男とか辛い。
「それでは、早速記事に掲載する為の写真を撮りましょうか。僕がカメラマンしますので、トキさんはいつも通りお願いします」
「え? 今から?」
「はい、今から。あ、撮影に集中出来るように、入口鍵掛けておきますね」
え、今から撮影って……大丈夫かな。オレまだリストバンドの下の痣とか、チョーカーの下の首輪痕とか、その……色々残ってっけど……。まぁ、外せとは言われない……よな?
いそいそと扉の施錠をして準備を済ませると、四ノ宮は自身の携帯を取り出して構えた。飾り気のない純白の端末。
「携帯カメラで撮るんだ?」
「今日日の携帯カメラは性能がいいですからね。文化祭準備なんかの写真を撮る際は写真部から本格的なカメラを借りたりもしますが、基本はこれですよ」
「ふぅん」
「さぁ、トキさん。撮りますよ。はい、チーズ」
パシャ、と機械音が鳴った。反射的に読モスマイルを浮かべてポーズを取るオレ。四ノ宮は一枚と言わず鬼連射した。
「いいですよー、トキさん! めちゃくちゃカッコイイです!」
「え、マジで?」
照れるじゃん!
「折角なので、何パターンか撮りましょう! ……ああ、いいですね、そのポーズも! でも、もう少し身体をこっちに向けて、あ、そっちじゃなくて、えっと……ちょっと触りますね」
熱の入った四ノ宮のポーズ指導が始まる。手の位置をこう、とか。腰の角度をこう、とか。椅子に座って、とか。四ノ宮の白くて綺麗な手指がその度にオレに触れて、何だか少しこそばゆい。距離もやけに近くて、撮影の緊張とは別個のドキドキで心臓が忙しなくなる。
「胸元……もう少し開いてみましょうか」
「っ……」
不意に、四ノ宮の指先がオレの首筋から胸元までのラインを、つぅっと撫で下ろした。陶器に触れるようなソフトタッチに、オレは思わずぞくりとして息を詰めてしまう。四ノ宮がふふっと小さく笑った。
「トキさん、そんなに固くならないでください」
「あ、ご、ごめん……」
でも、あれ? 胸元開く意味なんてあるか? とやや疑問に思いつつ、四ノ宮が一生懸命なので、水を差すのも悪い気がして何も言えなくなる。
ぷちぷちとオレのシャツの釦を外しながら、ふと気になった風に四ノ宮はオレの首に嵌められたチョーカーをもう一方の手指で持ち上げて見せた。
「これ……外していいですか?」
「え!? いや、それは」
「駄目なんですか?」
「あっ、と……チョーカー痕、ついちゃってると思うから」
「そうですか……それなら、リストバンドの方、外しますね。アンバランスなので」
「えっ!? いや、それはちょっと!!」
手首に掛けられた四ノ宮の手を、オレは慌てて制止した。
「これも駄目なんですか?」
「あー……っと、その……リ、リストバンド痕! ついてっと思うから!」
「ふふっ、おかしなトキさん」
あ、あは、あは……。我ながら不審な笑みが漏れる。
「そんなに必死になって……何が隠されてるんですか? その下」
「え」
――カチャン。
そんな音がして、瞬間虚を衝かれた。直後、同じような音が今一度鳴り、その出処を探って視線を落とす。……手首。リストバンドの上に、銀の輪っかが嵌ってる。そっから短い鉄状の鎖が伸びて……もう一方の輪っかが、椅子の背もたれのパイプ部分に嵌められている。は? え? 何だこれ、もしかして、手錠……?
困惑している内に、またカチャンカチャンと音がして、もう片方の手も同じように封じられてしまったと遅まきながらに気付く。
え? え? 何? なんだ?
「し、四ノ宮……これ、何?」
どういうコンセプトの写真を撮るつもりだ? いや、たぶんただの冗談とか……ドッキリとか、だよな?
苦笑いを浮かべるオレには構わず、四ノ宮はオレの手首を留めた銀環の位置をずらし、ついでに下のリストバンドを捲った。あっと思った時にはもう遅い。止める間もない刹那の行動。四ノ宮は興味深そうにオレの手首についた例の縄痕(薄くなり始めてはいたけど)を眺めて「ふぅん」と鼻を鳴らした。
「トキさん、普段からこういうことをしてたんですか? 意外ですね」
「こ、こういうって……いや、違……四ノ宮?」
「お相手は、もしかして会長ですか?」
鼓動が跳ね上がった。
「な、何でそんな?」
「そうですよね。今朝も一緒に電車通学してましたし。随分仲良さそうでしたし。第一、あの腹の黒そうな会長が自ら推薦して寄越すなんて、絶対ただならぬ関係ですよね。もしかして、恋人ですか?」
「ち、違う!!」
「へぇ? 違うんですか。じゃあ、セフレかな。恋人の方が奪う楽しみがあるんですけどね」
四ノ宮の可憐な唇から、次々に信じられない単語が出てくる。何だこれは……現実か?
オレの手首から視線を上げると、四ノ宮は至近距離で見上げてきた。ゾッとする程、美しい顔が間近に迫る。
「信じられないって顔してますね。……ねぇ、トキさん。僕ね、怒ってるんですよ」
「お、怒る……?」
「今朝のこと。次の駅であの男を捕まえて脅して奴隷にして遊ぶつもりだったのに、トキさんが逃がしちゃうから」
今朝の……痴漢リーマンのこと?
ぽたり、冷や汗が頬を伝って顎から流れ落ちた。リノリウムの床を点々と濡らしていく。愕然とするオレに、四ノ宮はあくまでも可憐な笑みを湛えて告げた。
「責任……取って頂けますか? あの男の代わりに、トキさんが僕の〝遊び相手〟になって下さい」
「四ノ宮でいいですよ。僕、年下なので」
言われてみれば、彼女……じゃなくて、彼の上履きのカラーは緑、一個下の一年生だ。ついでに言うなら、ボトムスはスカートじゃなくて、ズボン。……いや、でもだって! うちの学校割と自由な校風で! 女の子でも好んでズボンを穿いてる子多いし!? 四ノ宮さんくらい可愛ければ、朝みたいな奴への対策として敢えてズボンにしてるのかもって、思うじゃん!? 思うよな!?
改めてオレは、目の前のお人形さんのように愛らしい容貌をした美少女……いや、美少年を見た。嘘だろ……こんなに可愛い子が、男……?
「マジかよ……」
勝手に打ちひしがれるオレに、四ノ宮さんこと四ノ宮は眉を下げて申し訳なさそうに告げた。
「ごめんなさい……トキさんは、男の僕では嫌ですか?」
八の字眉毛、うるうるのお目目で上目遣いに見上げてくるその仕草は、きゅるんって効果音が聞こえてきそうな程に、ハチャメチャにあざと可愛い。
うっ、マジで可愛いな!?
「い、いや! そんなことは! 全然!」
男だと分かっても、ついときめいちまった……。慌ててぶんぶん首を左右に振るオレは今、たぶんめっちゃ赤面してる。
「本当ですか!? 良かった……トキさんにだけは、嫌われたくないんです、僕」
ホッと胸を撫で下ろして微笑むその様もまた、超絶に可愛いな!? ていうか、何でそんなオレのこと好きみたいな言い方すんの!? いや、読モとしてのオレのファンとは言ってたけど!! 何かそんな風に言われるとドキドキするじゃん!? ドキドキしちゃうじゃん!? 男!! 相手なのに!! しっかりしろ、オレ!!
「あ、そうだトキさん、広報のお仕事に関してなんですけど」
「ふぁ !? はい!?」
「今日は早速、トキさん新加入のお報せを載せましょうか。公式ホームページとSNS、あとは生徒会報ですね」
「そんなにあんの!?」
「月一発行の生徒会新聞なんてのもありますよ。これは新聞部からの取材形式で作られているものですけど」
「生徒会報ってのと、どう違うんだ?」
「生徒会報は新聞部の手を借りず、生徒会執行部自らで出している告知みたいなものですね。学校掲示板に張り出したり、生徒達に配布したりもします」
「ぬぇえ、結構大変そうだな、広報の仕事……」
「ご安心を。今まで通り僕や七瀬さんも全力でトキさんをサポートしますから!」
おぉ、頼もしい。握り拳をぎゅっとして見せる四ノ宮もやっぱり可愛いな……つら。これで男とか辛い。
「それでは、早速記事に掲載する為の写真を撮りましょうか。僕がカメラマンしますので、トキさんはいつも通りお願いします」
「え? 今から?」
「はい、今から。あ、撮影に集中出来るように、入口鍵掛けておきますね」
え、今から撮影って……大丈夫かな。オレまだリストバンドの下の痣とか、チョーカーの下の首輪痕とか、その……色々残ってっけど……。まぁ、外せとは言われない……よな?
いそいそと扉の施錠をして準備を済ませると、四ノ宮は自身の携帯を取り出して構えた。飾り気のない純白の端末。
「携帯カメラで撮るんだ?」
「今日日の携帯カメラは性能がいいですからね。文化祭準備なんかの写真を撮る際は写真部から本格的なカメラを借りたりもしますが、基本はこれですよ」
「ふぅん」
「さぁ、トキさん。撮りますよ。はい、チーズ」
パシャ、と機械音が鳴った。反射的に読モスマイルを浮かべてポーズを取るオレ。四ノ宮は一枚と言わず鬼連射した。
「いいですよー、トキさん! めちゃくちゃカッコイイです!」
「え、マジで?」
照れるじゃん!
「折角なので、何パターンか撮りましょう! ……ああ、いいですね、そのポーズも! でも、もう少し身体をこっちに向けて、あ、そっちじゃなくて、えっと……ちょっと触りますね」
熱の入った四ノ宮のポーズ指導が始まる。手の位置をこう、とか。腰の角度をこう、とか。椅子に座って、とか。四ノ宮の白くて綺麗な手指がその度にオレに触れて、何だか少しこそばゆい。距離もやけに近くて、撮影の緊張とは別個のドキドキで心臓が忙しなくなる。
「胸元……もう少し開いてみましょうか」
「っ……」
不意に、四ノ宮の指先がオレの首筋から胸元までのラインを、つぅっと撫で下ろした。陶器に触れるようなソフトタッチに、オレは思わずぞくりとして息を詰めてしまう。四ノ宮がふふっと小さく笑った。
「トキさん、そんなに固くならないでください」
「あ、ご、ごめん……」
でも、あれ? 胸元開く意味なんてあるか? とやや疑問に思いつつ、四ノ宮が一生懸命なので、水を差すのも悪い気がして何も言えなくなる。
ぷちぷちとオレのシャツの釦を外しながら、ふと気になった風に四ノ宮はオレの首に嵌められたチョーカーをもう一方の手指で持ち上げて見せた。
「これ……外していいですか?」
「え!? いや、それは」
「駄目なんですか?」
「あっ、と……チョーカー痕、ついちゃってると思うから」
「そうですか……それなら、リストバンドの方、外しますね。アンバランスなので」
「えっ!? いや、それはちょっと!!」
手首に掛けられた四ノ宮の手を、オレは慌てて制止した。
「これも駄目なんですか?」
「あー……っと、その……リ、リストバンド痕! ついてっと思うから!」
「ふふっ、おかしなトキさん」
あ、あは、あは……。我ながら不審な笑みが漏れる。
「そんなに必死になって……何が隠されてるんですか? その下」
「え」
――カチャン。
そんな音がして、瞬間虚を衝かれた。直後、同じような音が今一度鳴り、その出処を探って視線を落とす。……手首。リストバンドの上に、銀の輪っかが嵌ってる。そっから短い鉄状の鎖が伸びて……もう一方の輪っかが、椅子の背もたれのパイプ部分に嵌められている。は? え? 何だこれ、もしかして、手錠……?
困惑している内に、またカチャンカチャンと音がして、もう片方の手も同じように封じられてしまったと遅まきながらに気付く。
え? え? 何? なんだ?
「し、四ノ宮……これ、何?」
どういうコンセプトの写真を撮るつもりだ? いや、たぶんただの冗談とか……ドッキリとか、だよな?
苦笑いを浮かべるオレには構わず、四ノ宮はオレの手首を留めた銀環の位置をずらし、ついでに下のリストバンドを捲った。あっと思った時にはもう遅い。止める間もない刹那の行動。四ノ宮は興味深そうにオレの手首についた例の縄痕(薄くなり始めてはいたけど)を眺めて「ふぅん」と鼻を鳴らした。
「トキさん、普段からこういうことをしてたんですか? 意外ですね」
「こ、こういうって……いや、違……四ノ宮?」
「お相手は、もしかして会長ですか?」
鼓動が跳ね上がった。
「な、何でそんな?」
「そうですよね。今朝も一緒に電車通学してましたし。随分仲良さそうでしたし。第一、あの腹の黒そうな会長が自ら推薦して寄越すなんて、絶対ただならぬ関係ですよね。もしかして、恋人ですか?」
「ち、違う!!」
「へぇ? 違うんですか。じゃあ、セフレかな。恋人の方が奪う楽しみがあるんですけどね」
四ノ宮の可憐な唇から、次々に信じられない単語が出てくる。何だこれは……現実か?
オレの手首から視線を上げると、四ノ宮は至近距離で見上げてきた。ゾッとする程、美しい顔が間近に迫る。
「信じられないって顔してますね。……ねぇ、トキさん。僕ね、怒ってるんですよ」
「お、怒る……?」
「今朝のこと。次の駅であの男を捕まえて脅して奴隷にして遊ぶつもりだったのに、トキさんが逃がしちゃうから」
今朝の……痴漢リーマンのこと?
ぽたり、冷や汗が頬を伝って顎から流れ落ちた。リノリウムの床を点々と濡らしていく。愕然とするオレに、四ノ宮はあくまでも可憐な笑みを湛えて告げた。
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