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第四章 就任!波乱の生徒会マスコット
4-5 運命的な再会!?
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驚愕に目を見張るオレ。驚きの表情を浮かべていたのは向こうも同じだったけど、オレよりも早くその子の方が金縛りから解けたようで、次の瞬間には整った容顔に可憐な笑みを刻んだ。
「トキさん!」
――お?
「え? オレのこと知ってるのか?」
「勿論です! トキさん有名人ですから。『艶☆DAN』毎月見てます! 僕、トキさんのファンなんです! カッコイイですよね!」
え? マジでマジで? 何だよ、嬉しーじゃん。
「トキさんが同じ生徒会役員になるって聞いて、僕楽しみにしてたんですよ! 今日から、よろしくお願いします!」
「お、おう! よろしく! えっと、君は……」
ついつい照れ照れそわそわしてしまうオレ。美少女は最高級の笑顔で以て、改めて名乗った。
「僕は、四ノ宮 郁といいます。生徒会では『書記』を担当しています。トキさんの担当になる『広報』の仕事も兼ねていたので、これから全力でサポートさせて頂きますね!」
明るい挨拶と共に、差し出される手。どうやら握手を求められていると知って、オレはズボンで手汗を拭いてからそれに応じた。白くて細くて柔らかい手指。うわぁ、何かドキドキするな……。
萌絵ちゃんにときめいていた矢先に直ぐに他の女の子にもドキドキするなんて、我ながら不誠実だとも思うが……しょうがないよな、オレだって男の子だし!
「四ノ宮には紹介の必要は無かったみたいだな。改めて、今日から『広報』として俺達の仲間に加わる、花鏡 鴇真。……芸名は〝トキ〟だったな。皆、仲良くしてやってくれ」
九重の総括に「はい!」と歯切れよく応じたのは女の子達二人で、八雲と呼ばれた同級生の会計男子は相変わらず素っ気なくツンとしている。
「てか、アレ? 副会長来てないけど、いいのか?」
「ああ……副会長は五十鈴 響也という三年の先輩なんだが。基本的にサボりがちであまり顔を出さないから、気にしなくていい」
「えっ、生徒会ってそんなサボっていいもんなのか?」
「まぁ、この時期はあまり仕事もないし、元来副会長は会長のサポート役だから、閑職ではあるしな」
マジかよ……何か副会長って、影の実力者的な強い印象あったんだけど……その実、暇なの? 知らなかった……。
「せやから、手ぇ空いてる奴が居んのに、何でわざわざ新たな役職を設けるんや! 明らかに無駄やろが!」
「八雲、そうは言っても、五十鈴先輩が広報の仕事をやってくれると思うか?」
「思わへんけど!」
「だろ?」
九重によって八雲氏が論破された。副会長、そんなにも信用無いのか。逆にちょっと会ってみたくなってきたぞ。
「定例会議は週に一回。水曜日だ。敢えて週の真ん中に設定してある」
「てことは、昨日……」
「ああ、花鏡の加入の件が議題だった。それで、今日は顔合わせの為にまた臨時で皆に集まって貰った訳だ」
九重の言うには、文化祭等の多忙な時期以外は基本会議のない日は自由だが、大体誰かしらは放課後ここに居るらしい。
「一般生徒からいきなり生徒会へ相談が来ることもあるので、私なんかは極力ここに居るようにしてます」
そう口を添えたのは、萌絵ちゃんだ。
「それにここ、冷暖房も完備されているので、過ごしやすいんですよ」
「七瀬は原稿持ち込んで作業しとるだけやろ」
「あっ! ちゃんと生徒会の仕事もしてますぅ!」
「原稿?」
「あんな、コイツごっつやらしい漫画描いとんねん。見たら引くで~」
「や、やらしい!?」
「もう! やらしいんじゃなくて、純愛なんです!」
萌絵ちゃんが……やらしい漫画を!? 何だそれ……超見たい……!!
「生徒会室の鍵は役員達一人一人が所持するようになっている。花鏡のも、その内出来たら渡すな」
九重が全く動じずに通常営業でそう付け加えた時、不意に外から扉がノックされた。
萌絵ちゃんが応対すると、尋ねてきたのは数人の一般生徒達だった。何でも、園芸部の管理していた温室が何者かに荒らされて、被害が出ているのだとか。
「様子を見てくる。八雲も来い。被害状況に応じて修繕費を見繕う必要があるからな」
「そんなのまで、生徒会の仕事なのか?」
「基本、部活関連はそうだな。部費の調整なんかも担ってるから、まずは俺達で見て、それから学校の事務方に報告、相談する形になる。まぁ、学校にもよるだろうけど」
「へぇ……」
何か小難しいな。
「花鏡の仕事は、四ノ宮と七瀬に聞け。二人共、花鏡を頼んだ」
「はい!」
そうして、九重と八雲は慌ただしく生徒会室を後にした。残されたのは、女の子二人と、オレ。
え? 何気にラッキーじゃね?
ふわふわ心が踊り始めたオレに、萌絵ちゃんが改まった口調で声を掛けてきた。
「ところで、花鏡先輩」
「うん?」
「会長とは、どういったご関係ですか?」
「ふぁっ!?」
思わず声が裏返っちまった。萌絵ちゃんはメガネの面を光らせながら、ずずいとこちらに迫ってくる。
「あの会長が自ら推薦ですよ!? 何でも自分で出来ちゃうから、滅多に人のことを頼らないような人が!! 花鏡先輩のこと、よっぽど信頼してるってことですよ!!」
「え、えぇ……?」
「どうなんですか、実際のところ!! 私の見立てでは会長攻めで、レン×トキって感じなんですけど!! それとも、意外と会長は好きな人の前でだけは受けになったりするんですか!? 実はトキ×レンなんですか!? ねぇ!?」
「ま、待って萌絵ちゃん!! 何の話!? 何の呪文!?」
萌絵ちゃんの勢いに怯むオレを助けてくれたのは、もう一人の女の子、四ノ宮さんだった。(何となくさん付けにしたくなる雰囲気がある)
「七瀬さん、トキさん怖がってますから、程々に……」
「ハッ! いけない、私ったら!」
そんな、「てへっ☆」てされても……。いや、可愛いけどさ。
「それと、七瀬さんに少しお願いが」
コソッと、四ノ宮さんが萌絵ちゃんに何かを耳打ちすると、萌絵ちゃんはキュピーンと瞳を輝かせて満面の笑みを浮かべた。
「分かりました! そういうことなら!」
え? 何の話だ?
「私! 急用を思い出したので、今日は帰らせて頂きますね! 花鏡先輩、あとは四ノ宮くんに色々教えて貰ってください!」
「え、え!? そんな急に!?」
「それでは! 是非その後のお話を聞かせてくださいねー!」
「その後のお話って何!? 萌絵ちゃん!?」
オレの疑問は完全スルーで、萌絵ちゃんは意気揚々と去っていった。えぇ……マジで何だよ。結構不思議ちゃんだな、萌絵ちゃん……。いや、可愛いけどさ。
「トキさん」
四ノ宮さんの遠慮がちな呼び掛けに、オレは改めて彼女の方を向いた。四ノ宮さんは少し言いづらそうに、長い睫毛を伏せ気味にして話し始めた。
「七瀬さんには僕からお願いしたんです。僕……トキさんと二人でお話したいことがあったので」
「えっ!?」
心臓が跳ね上がった。四ノ宮さんが……こんな可愛い子が、オレと!?
「あの……今朝のこと、すみませんでした。ご迷惑をお掛けしてしまって」
「へぁっ!? あ、ああ、そんなの!」
それか! そうだ、今朝の痴漢の真の被害者は、彼女だったもんな……。
「こっちこそ、勝手に突っ走って、ごめん……。君の気持ちも聞かずに」
「いいえ! 僕、嬉しかったんです。怖くて、声も出せなかったから……。でも、そのせいで憧れのトキさんにまで、迷惑を……あの、校内で変な噂になってるの、聞いてしまって……」
「ああ……」
何故かオレが痴漢被害者ってことになってる件な。
「いいよ、そんなの。君が噂の的にならずに済んだのなら、オレが居た甲斐もあったよ」
気にすんな! って歯を見せて豪快に笑い掛ける。四ノ宮さんはややキョトンとして見せた後に、ぽそりと小さく何事かを呟いた。
「……いいな、それ。剥がしてみたいなぁ」
「ん?」
オレの耳には届かなかったので、聞き返してみたところ四ノ宮さんはニコリと微笑んで、「いいえ。トキさん、優しいんですね! ますます惚れ直しました!」なんて言うもんだから、オレの頬はもうゆるゆるになってしまった。
「や、優しいだなんて、そんな! い、いやぁ、男たるもの! 女の子を守るのは、当然っていうか!?」
なっはっは、照れるぜ~!!
有頂天になったオレを、四ノ宮さんは次の一言で叩き落とした。
「あ、僕男ですよ」
――はい?
虚を衝かれて間抜け面を向けた先、四ノ宮さんは全く意に介した風もなく続けた。
「男です、僕。よく間違われるんですけどね」
「改めて、よろしくお願いします。トキさん」そう言って、彼女……いや、彼は、一層可憐に微笑んだ。
「トキさん!」
――お?
「え? オレのこと知ってるのか?」
「勿論です! トキさん有名人ですから。『艶☆DAN』毎月見てます! 僕、トキさんのファンなんです! カッコイイですよね!」
え? マジでマジで? 何だよ、嬉しーじゃん。
「トキさんが同じ生徒会役員になるって聞いて、僕楽しみにしてたんですよ! 今日から、よろしくお願いします!」
「お、おう! よろしく! えっと、君は……」
ついつい照れ照れそわそわしてしまうオレ。美少女は最高級の笑顔で以て、改めて名乗った。
「僕は、四ノ宮 郁といいます。生徒会では『書記』を担当しています。トキさんの担当になる『広報』の仕事も兼ねていたので、これから全力でサポートさせて頂きますね!」
明るい挨拶と共に、差し出される手。どうやら握手を求められていると知って、オレはズボンで手汗を拭いてからそれに応じた。白くて細くて柔らかい手指。うわぁ、何かドキドキするな……。
萌絵ちゃんにときめいていた矢先に直ぐに他の女の子にもドキドキするなんて、我ながら不誠実だとも思うが……しょうがないよな、オレだって男の子だし!
「四ノ宮には紹介の必要は無かったみたいだな。改めて、今日から『広報』として俺達の仲間に加わる、花鏡 鴇真。……芸名は〝トキ〟だったな。皆、仲良くしてやってくれ」
九重の総括に「はい!」と歯切れよく応じたのは女の子達二人で、八雲と呼ばれた同級生の会計男子は相変わらず素っ気なくツンとしている。
「てか、アレ? 副会長来てないけど、いいのか?」
「ああ……副会長は五十鈴 響也という三年の先輩なんだが。基本的にサボりがちであまり顔を出さないから、気にしなくていい」
「えっ、生徒会ってそんなサボっていいもんなのか?」
「まぁ、この時期はあまり仕事もないし、元来副会長は会長のサポート役だから、閑職ではあるしな」
マジかよ……何か副会長って、影の実力者的な強い印象あったんだけど……その実、暇なの? 知らなかった……。
「せやから、手ぇ空いてる奴が居んのに、何でわざわざ新たな役職を設けるんや! 明らかに無駄やろが!」
「八雲、そうは言っても、五十鈴先輩が広報の仕事をやってくれると思うか?」
「思わへんけど!」
「だろ?」
九重によって八雲氏が論破された。副会長、そんなにも信用無いのか。逆にちょっと会ってみたくなってきたぞ。
「定例会議は週に一回。水曜日だ。敢えて週の真ん中に設定してある」
「てことは、昨日……」
「ああ、花鏡の加入の件が議題だった。それで、今日は顔合わせの為にまた臨時で皆に集まって貰った訳だ」
九重の言うには、文化祭等の多忙な時期以外は基本会議のない日は自由だが、大体誰かしらは放課後ここに居るらしい。
「一般生徒からいきなり生徒会へ相談が来ることもあるので、私なんかは極力ここに居るようにしてます」
そう口を添えたのは、萌絵ちゃんだ。
「それにここ、冷暖房も完備されているので、過ごしやすいんですよ」
「七瀬は原稿持ち込んで作業しとるだけやろ」
「あっ! ちゃんと生徒会の仕事もしてますぅ!」
「原稿?」
「あんな、コイツごっつやらしい漫画描いとんねん。見たら引くで~」
「や、やらしい!?」
「もう! やらしいんじゃなくて、純愛なんです!」
萌絵ちゃんが……やらしい漫画を!? 何だそれ……超見たい……!!
「生徒会室の鍵は役員達一人一人が所持するようになっている。花鏡のも、その内出来たら渡すな」
九重が全く動じずに通常営業でそう付け加えた時、不意に外から扉がノックされた。
萌絵ちゃんが応対すると、尋ねてきたのは数人の一般生徒達だった。何でも、園芸部の管理していた温室が何者かに荒らされて、被害が出ているのだとか。
「様子を見てくる。八雲も来い。被害状況に応じて修繕費を見繕う必要があるからな」
「そんなのまで、生徒会の仕事なのか?」
「基本、部活関連はそうだな。部費の調整なんかも担ってるから、まずは俺達で見て、それから学校の事務方に報告、相談する形になる。まぁ、学校にもよるだろうけど」
「へぇ……」
何か小難しいな。
「花鏡の仕事は、四ノ宮と七瀬に聞け。二人共、花鏡を頼んだ」
「はい!」
そうして、九重と八雲は慌ただしく生徒会室を後にした。残されたのは、女の子二人と、オレ。
え? 何気にラッキーじゃね?
ふわふわ心が踊り始めたオレに、萌絵ちゃんが改まった口調で声を掛けてきた。
「ところで、花鏡先輩」
「うん?」
「会長とは、どういったご関係ですか?」
「ふぁっ!?」
思わず声が裏返っちまった。萌絵ちゃんはメガネの面を光らせながら、ずずいとこちらに迫ってくる。
「あの会長が自ら推薦ですよ!? 何でも自分で出来ちゃうから、滅多に人のことを頼らないような人が!! 花鏡先輩のこと、よっぽど信頼してるってことですよ!!」
「え、えぇ……?」
「どうなんですか、実際のところ!! 私の見立てでは会長攻めで、レン×トキって感じなんですけど!! それとも、意外と会長は好きな人の前でだけは受けになったりするんですか!? 実はトキ×レンなんですか!? ねぇ!?」
「ま、待って萌絵ちゃん!! 何の話!? 何の呪文!?」
萌絵ちゃんの勢いに怯むオレを助けてくれたのは、もう一人の女の子、四ノ宮さんだった。(何となくさん付けにしたくなる雰囲気がある)
「七瀬さん、トキさん怖がってますから、程々に……」
「ハッ! いけない、私ったら!」
そんな、「てへっ☆」てされても……。いや、可愛いけどさ。
「それと、七瀬さんに少しお願いが」
コソッと、四ノ宮さんが萌絵ちゃんに何かを耳打ちすると、萌絵ちゃんはキュピーンと瞳を輝かせて満面の笑みを浮かべた。
「分かりました! そういうことなら!」
え? 何の話だ?
「私! 急用を思い出したので、今日は帰らせて頂きますね! 花鏡先輩、あとは四ノ宮くんに色々教えて貰ってください!」
「え、え!? そんな急に!?」
「それでは! 是非その後のお話を聞かせてくださいねー!」
「その後のお話って何!? 萌絵ちゃん!?」
オレの疑問は完全スルーで、萌絵ちゃんは意気揚々と去っていった。えぇ……マジで何だよ。結構不思議ちゃんだな、萌絵ちゃん……。いや、可愛いけどさ。
「トキさん」
四ノ宮さんの遠慮がちな呼び掛けに、オレは改めて彼女の方を向いた。四ノ宮さんは少し言いづらそうに、長い睫毛を伏せ気味にして話し始めた。
「七瀬さんには僕からお願いしたんです。僕……トキさんと二人でお話したいことがあったので」
「えっ!?」
心臓が跳ね上がった。四ノ宮さんが……こんな可愛い子が、オレと!?
「あの……今朝のこと、すみませんでした。ご迷惑をお掛けしてしまって」
「へぁっ!? あ、ああ、そんなの!」
それか! そうだ、今朝の痴漢の真の被害者は、彼女だったもんな……。
「こっちこそ、勝手に突っ走って、ごめん……。君の気持ちも聞かずに」
「いいえ! 僕、嬉しかったんです。怖くて、声も出せなかったから……。でも、そのせいで憧れのトキさんにまで、迷惑を……あの、校内で変な噂になってるの、聞いてしまって……」
「ああ……」
何故かオレが痴漢被害者ってことになってる件な。
「いいよ、そんなの。君が噂の的にならずに済んだのなら、オレが居た甲斐もあったよ」
気にすんな! って歯を見せて豪快に笑い掛ける。四ノ宮さんはややキョトンとして見せた後に、ぽそりと小さく何事かを呟いた。
「……いいな、それ。剥がしてみたいなぁ」
「ん?」
オレの耳には届かなかったので、聞き返してみたところ四ノ宮さんはニコリと微笑んで、「いいえ。トキさん、優しいんですね! ますます惚れ直しました!」なんて言うもんだから、オレの頬はもうゆるゆるになってしまった。
「や、優しいだなんて、そんな! い、いやぁ、男たるもの! 女の子を守るのは、当然っていうか!?」
なっはっは、照れるぜ~!!
有頂天になったオレを、四ノ宮さんは次の一言で叩き落とした。
「あ、僕男ですよ」
――はい?
虚を衝かれて間抜け面を向けた先、四ノ宮さんは全く意に介した風もなく続けた。
「男です、僕。よく間違われるんですけどね」
「改めて、よろしくお願いします。トキさん」そう言って、彼女……いや、彼は、一層可憐に微笑んだ。
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