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♂覚醒
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ここが会議室か。
部屋は学校の体育館ほどの広さはあるだろうか。
たた無駄に広く部屋の真ん中に円卓がポツンとあるだけだった。
しかし、さすが魔界と言うのかその椅子やテーブルは骨やら爪やら牙などを想像されるようなデザインで、殺風景なこの部屋の雰囲気がそれらを引き立たせているようにも感じ取れる。
部屋には誰もいないので、とりあえず俺たち四人は勝手に席に着く。
しばらくすると召使い的な魔族が数名入ってきた。
見たことも無い料理を円卓に並べ始め、会議と言うよりは食事会でも始まるような雰囲気だ。
続いて、見たことの無い"俺天才だぜ"的な奴とザルババ、カルヴァーニュ、テレボ・ロア、それと、いかにもと言わんばかりの体格のごつい奴、そして最後に魔王がはいってきた。
「人間たちよ、待たせたな」
上過ぎず下過ぎずなトーンで魔王が言う。
「こちらこそご協力頂き恐縮でございます」
さすがハイエルフ、場馴れした感が出ている。
「まずは皆に言いっておきたい」
その言葉に全員が魔王に視線を向ける。
「この度の話し合いではつまらぬ探り合い、化かし合いは一切やめようではないか。遅かれ早かれ自身の身命に関わる事だ、頭から腹を割って話がしたい」
冒頭からとんでもないジャブを入れてくるものだ。
肝が据わってると言うのか、実直なのか・・・。
「ええ、もちろんでございます。むしろそのような事をしている余裕が無い・・・と言うのが正直なところです」
「ははは。本当に後がないわけだな。ならもう1つ・・・」
なんだよさっきから話の前からあれこれ条件ばかり出しやがって・・・。
「言いたいことが言いやすいよう、敬語は止め友として気軽に話そうや」
!?
魔王らしからぬ言葉に一瞬みな戸惑った
「さすがだぜ魔王さん!そう来なくちゃな」
大きな声で言ったのはザルババだった。
「何が流石だ。貴様は1度でもワシを敬うような言葉遣いで話した事があるのか?」
「いたたた・・・そこは黙っててくれよ面目まるつぶれだぜ」
アハハハハ!
ザルババのつまらない一言で一気に場は和んだ。
こういう時あいつのああゆう性格が羨ましい。
そんなとこを考えていると一人立ち上がった。
「私は魔王軍参謀を務めております"ジェロール"と申します。以後お見知り置きを」
ジェロールは軽くお辞儀をした。
「で、ジェロールさんの質問は何?自ら発言するからには何か聞きたいんですよね?」
ジェロールはフフっと笑った。
「貴方なかなか頭がキレる方のようですね。ズバリ私が聞きたいのは貴方方と我々が手を組めば、敵は倒せるのか?です」
「そうだな・・・。今俺たちの持っている情報だけで判断するならば"倒せない"だ。ともあれ、まずはここに来た目的と具体的な敵の正体を説明したいと思う」
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
俺は元の世界からこちらの世界へ飛ばされて来た事から、みゆの事、ベルゾディア、レグジュポット、クラリアスの事全て包み隠さず話した。
「なるほど、そのベルゾディアと言うのがクラリアスを・・・・・・万死に値する!」
魔王は怒りを抑えきれず大きな声で叫んだ。
「魔王さんよ、俺は絶対にそいつを殺るぜ!」
ザルババも魔王の怒気に飲まれ大きな声を出した。
「"倒せない"と言い切る根拠は何かあるのかな?」
カルヴァーニュが入ってくる。
「1つは自らの事を"龍神"と言っていた。神かどうかは分からないがそう言うだけの強さだったのは間違いない。手も足も出なかった・・・。あの負けず嫌いのクラリアスでさえ逃げの一手しかなく、それにさえ命をかけるほどだった。あの強さが1つ、もうひとつは"時間の流れを操る"という事」
!!!
!!!
時間の流れを操ると言う言葉に反応したのは2人、魔王とジェロールだ。
「"時間の流れ"と言いましたが、具体的にはどのような力なのです?」
ジェロールは平静を装っているがやや焦りの色が隠せないようだ。
「私の師匠が以前ベルゾディアと対峙した時の話になりますが、ベルゾディアの能力は"時間の流れの速さ"を操るものと言うことです」
フッ・・・
ジェロールはホットした様子だ。
「実はジェロールも時使いの一人でな」
「そう、私は時間を戻すことが出来る"時逆(ときさか)の歯車"と言う能力を持っているのですよ」
ん~・・・なんだか魔族とは似つかわしくない中二病的な名前の技だな。
「それは凄いです!時間を戻すと言うのは結果を知った上で戻せるのですか?」
意外と反応したのはレーティアだった。
「ええ。結果を知ったまま時を戻せるのですよ!」
「どのくらい戻せるのですか?」
ジェロールは数秒考え込んだ。
「精神状態にもよりますが、絶好調な時で7分と言った所でしょうか?」
「精神力?魔力じゃないのか?」
「ええ。私のこの力は魔法ではありませんので」
俺、ミュー、レーティアは頭の上にハテナがついた。
「魔法じゃないってどういうことなんだ?」
「そうですね、それは"イマジネーションパワー"とでも言うのでしょうか?"想像の具現化"と言うわつですよ」
!?
そんな簡単な事で時間を戻すとかえげつない事ができるのか?
「簡単ではありませんよ」
!?
「俺今声出てたか?」
「いえいえ、声には出てませんが、顔がそう言っていましたよ」
なんだよ・・・心の中まで読めるのかと驚いた。
「想像の具現化と言っても綿密にイメージを具体化出来ないとダメなのです。非現実をいかに現実的に想像できるかと言う一点に尽きるので、想像力を無限大に広げれる者でないと難しいでしょう。つまり魔法使いのような理論的な思考の持ち主には難しいと言うことです」
「率直に聞くが俺にもできるのか?」
「先の戦いを見る限り貴方はかなり高度な魔法の使い手。イマジネーションパワーとは対極にいると思われるので、習得は難しいでしょう」
あれはミューの力を借りたもので俺の力じゃない・・・なんていまさら言えないわな・・・。
と言うか逆にオタクの俺にはその素質が200%あるって事じゃないのか?
むしろ魔法使いと思われてるこの状況下で、イマジネーションパワーが使えるとなったらまさに大賢者と称えられること間違いなしだ。
「実は俺、そのイマジネーションパワーってのに向いてる気がするんだよね。一度教えてくれないか?」
「ええ、構いませんよ。無理だとは思いますけど」
「そうだな。いかに優れた魔力を備えてると言ってもこればっかりは資質が伴う能力だからなぁ・・・と、話がそれたな」
魔王は被せるように言った。
「一希さんのイマジネーションパワーはともかく、これでこちらの時使いは2人、やや有利かもしれませんね」
レーティアがそう呟いたところ、ミューは強い口調で答えた。
「確かに、ジェロールさんのやり直しの力で殺られる可能性は激減すると思いますが"倒す"という事には直結しない・・・」
・・・・・・確かに。
ジェロールの能力は敵を倒す為の力ではない。
いや、使い方によるのか?
「時間を戻せるって事は、逆に言うとこの後相手がどう行動するのか分かるって事だよな?」
「確かにそうとも言えるでしょう」
「そこを狙いうって全員で一斉に攻撃を仕掛ければ回避も難しいんじゃないか?」
「確かにそれならやれるぜ!お前冴えてるな!」
賛同してくれたのは意外にもザルババだった。
「うーん・・・。それは少し難しいかもしれません」
「なんでだよ!?」
ザルババはテーブルを叩きながら聞き返した。
「単純に術者の私以外、時間が戻った事を認識出来ないからですよ」
そうか、俺たちの時間も戻るからか・・・・・・。
やはり、俺がイマジネーションパワーで何とか決定打を生み出すしかないか・・・。
「ここは1つみんなに考えて貰いたいことがある」
「・・・オレ、カンガエル、ニガテ・・・」
あの名前のわからんゴツイ奴が喋った。
「そ、そうか・・・。もしいい考えが浮かんだら言ってくれ」
それを聞き声を出さずに頷いていた。
「で、何を考えればいいんですか?」
ミューはため息をつきながら聞き返す。
「単純だ。"ベルゾディアを倒せる能力"だ」
バァン!
「今それが分からねえから困ってるんだろうがよ!」
ザルババが偉くいきり立っている。
「最後まで聞けよ!」
少しイラついた俺はやや強い口調で言った。
「・・・ああ、悪かったな。続けてくれ」
ザルババの妙に素直な一面を見た。
「頭を柔らかくして考えて欲しい。今の自分達の力でどうすればではなく、非現実的でも、ありもしない力でもなんでも構わない。とにかくベルゾディアを倒せる方法を考えて欲しい」
アーハッハッハ!
「そんなの簡単だぜ!"死ね"って思ったら殺せる力を手に入れたら一瞬で終わりだ!」
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
ザルババの突拍子もない意見に皆呆れ顔だ。
ジェロールなんかは聞こえないような声の大きさで"馬鹿か"と呟いていた。
「お前は馬鹿か!」
ツッコミを入れたのは意外にも魔王だった。
「いや、なんでもいいって言ったのはあいつだせ!」
俺は席を立ち真面目な顔で答えた。
「ああ。確かに今のザルババの意見の実現は無理だが、考え方的には悪くない。現実(リアル)と言う枠を取り払って考えて欲しい」
レーティアが困り顔で質問する。
「実現できない様なことを論議してなんのメリットがあるんですか?」
「姫さんよ!楽しいじゃねえか!想像の中で奴をぶっ殺す方法を考えるんだぜ?」
「いや、でも、出来なければ意味が無いと思います」
「そんなこたぁしらねえ。奴が考えろってんだから考えてるだけだぜ」
レーティアはため息をついた。
ミューが似たような顔つきで言い放った。
「時間の無駄です」
「確かに意味があるとは思えん」
魔王もミューと同じ考えのようだ。
フフフ・・・
妙な笑い声を上げたのはジェロールだった。
「私には分かりましたよ。あなたはその妄想的な打開策をイマジネーションパワーで何とかしようと言う魂胆でしょう。しかしながらそれは無理というもの」
「なんでそう思うんだ?」
「いいでしょう。なら試してみましょうか。基本の基本、冷たい炎を出してみてください」
「いきなりやれっつってもな・・・。とにかく具体的にイメージしたらいいんだな」
「まぁ、端的に言うとそういうことですね。とてつもなく強い想いを込め、あたかもそこに存在するかのように・・・です」
・・・・・・ぐぬぬ・・・
俺は気張った。
「そんなものは作れませんよ。冷気と熱気は相対関係にある熱の力。両方の属性を併せ持つのは理論的に不可能です!」
「そう不可能なんです。理論と公式で成り立つ魔力の世界では絶対に不可能なんです。ですがイマジネーションパワーを用いればこんな感じで・・・」
ジェロールの手のひらには澄んだ蒼白い炎が現れた。
「・・・冷たい・・・。ただ、熱をもたないこれを炎と呼んで良いのかは疑問ですけどね・・・」
「なら冷気を伴うのに凍らず炎のように揺らいでるこれはどう説明するんでしょうか?」
・・・・・・。
「確かに説明しろと言われたら難しいですね・・・。あえて言うなら炎とも氷とも言えない新たな物と言うのが正しいように思います」
「全く頭が固いのか、単に負けず嫌いなのか・・・。なぜ素直に冷たい炎と言えないんでしょうか・・・。だから高尚な魔法使いにはイマジネーションパワーが使えないのですよ」
ジェロールはそれを見せつけようと一希のほうへ歩いていく。
!!!
ジェロールは一希の手の中にある物をみて二、三歩後ずさりした。
「貴方、その手にあるのは・・・黒い炎!?いや黒いと言うには生ぬるい・・・漆黒、深淵の炎と言うにふさわしい真っ黒な炎・・・」
ジェロールは恐る恐る触れてみる。
ぬぉぉぉ!!!!
「なんと!?これは冷たい所の話ではない。この世の熱という熱を完全に無にしてしまったありえない冷たさだ!冷気の温度さえ無にしてしまうとてつもない炎・・・・・・」
「へへっ・・・お前さんが"冷たい炎"と言った瞬間その青白く燃える冷気を纏う炎を思い浮かべたんだが、それでは誰もが想像する範疇でしかないと思ったのさ。だから冷気さえ感じない"無温度の炎"を思い描がいたわけさ」
ジェロールは震えていた。
「これですよ!これこそがイマジネーションパワー!私の想像を超える素晴らしいイマジネーションパワーですよ!彼ならきっと想像もできないとてつもない事をやってくれる予感がします!」
「へへっ・・・取り敢えず合格でいいんだな」
「もちろんです!むしろ賞賛に値します」
俺は全身の力が一気に抜けた。
「というわけなんで、続けてベルゾディアを倒す方法を考えてくれ」
ミューが投げやり気味な態度で一言言い放った。
「"全ての攻撃を無効にできる無敵な力"とかでいいんじゃないですか?」
「無敵は俺も考えたんだが、ベルゾディアの強さを考えたら、殺られないが倒せないなんて事になり長期戦になりそうな気がするんだよね・・・」
・・・・・・。
ミューは不貞腐れた。
「あれだ、全てを消し去る"究極最強のエクセレントな消滅魔法"みたいな物はどうだ?」
「そんな理論も魔力式もない無茶な魔法あるわけないでしょ!」
ミューはどうもイマジネーションパワーを受け入れれないようでムキになって反論する。
また、ザルババがとんでもない事を言ってるなぁ・・・・・・!?
「いや、ある!」
俺は興奮した。
なぜこんなすごい魔法を思い出せなかったのか。
「あるのか?」
「そんな魔法があるんですか?」
「なんという魔法だ?」
皆が一希の言葉に固唾をのんだ。
「その魔法とは『極大消滅呪文メドローア』だ!」
部屋は学校の体育館ほどの広さはあるだろうか。
たた無駄に広く部屋の真ん中に円卓がポツンとあるだけだった。
しかし、さすが魔界と言うのかその椅子やテーブルは骨やら爪やら牙などを想像されるようなデザインで、殺風景なこの部屋の雰囲気がそれらを引き立たせているようにも感じ取れる。
部屋には誰もいないので、とりあえず俺たち四人は勝手に席に着く。
しばらくすると召使い的な魔族が数名入ってきた。
見たことも無い料理を円卓に並べ始め、会議と言うよりは食事会でも始まるような雰囲気だ。
続いて、見たことの無い"俺天才だぜ"的な奴とザルババ、カルヴァーニュ、テレボ・ロア、それと、いかにもと言わんばかりの体格のごつい奴、そして最後に魔王がはいってきた。
「人間たちよ、待たせたな」
上過ぎず下過ぎずなトーンで魔王が言う。
「こちらこそご協力頂き恐縮でございます」
さすがハイエルフ、場馴れした感が出ている。
「まずは皆に言いっておきたい」
その言葉に全員が魔王に視線を向ける。
「この度の話し合いではつまらぬ探り合い、化かし合いは一切やめようではないか。遅かれ早かれ自身の身命に関わる事だ、頭から腹を割って話がしたい」
冒頭からとんでもないジャブを入れてくるものだ。
肝が据わってると言うのか、実直なのか・・・。
「ええ、もちろんでございます。むしろそのような事をしている余裕が無い・・・と言うのが正直なところです」
「ははは。本当に後がないわけだな。ならもう1つ・・・」
なんだよさっきから話の前からあれこれ条件ばかり出しやがって・・・。
「言いたいことが言いやすいよう、敬語は止め友として気軽に話そうや」
!?
魔王らしからぬ言葉に一瞬みな戸惑った
「さすがだぜ魔王さん!そう来なくちゃな」
大きな声で言ったのはザルババだった。
「何が流石だ。貴様は1度でもワシを敬うような言葉遣いで話した事があるのか?」
「いたたた・・・そこは黙っててくれよ面目まるつぶれだぜ」
アハハハハ!
ザルババのつまらない一言で一気に場は和んだ。
こういう時あいつのああゆう性格が羨ましい。
そんなとこを考えていると一人立ち上がった。
「私は魔王軍参謀を務めております"ジェロール"と申します。以後お見知り置きを」
ジェロールは軽くお辞儀をした。
「で、ジェロールさんの質問は何?自ら発言するからには何か聞きたいんですよね?」
ジェロールはフフっと笑った。
「貴方なかなか頭がキレる方のようですね。ズバリ私が聞きたいのは貴方方と我々が手を組めば、敵は倒せるのか?です」
「そうだな・・・。今俺たちの持っている情報だけで判断するならば"倒せない"だ。ともあれ、まずはここに来た目的と具体的な敵の正体を説明したいと思う」
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
俺は元の世界からこちらの世界へ飛ばされて来た事から、みゆの事、ベルゾディア、レグジュポット、クラリアスの事全て包み隠さず話した。
「なるほど、そのベルゾディアと言うのがクラリアスを・・・・・・万死に値する!」
魔王は怒りを抑えきれず大きな声で叫んだ。
「魔王さんよ、俺は絶対にそいつを殺るぜ!」
ザルババも魔王の怒気に飲まれ大きな声を出した。
「"倒せない"と言い切る根拠は何かあるのかな?」
カルヴァーニュが入ってくる。
「1つは自らの事を"龍神"と言っていた。神かどうかは分からないがそう言うだけの強さだったのは間違いない。手も足も出なかった・・・。あの負けず嫌いのクラリアスでさえ逃げの一手しかなく、それにさえ命をかけるほどだった。あの強さが1つ、もうひとつは"時間の流れを操る"という事」
!!!
!!!
時間の流れを操ると言う言葉に反応したのは2人、魔王とジェロールだ。
「"時間の流れ"と言いましたが、具体的にはどのような力なのです?」
ジェロールは平静を装っているがやや焦りの色が隠せないようだ。
「私の師匠が以前ベルゾディアと対峙した時の話になりますが、ベルゾディアの能力は"時間の流れの速さ"を操るものと言うことです」
フッ・・・
ジェロールはホットした様子だ。
「実はジェロールも時使いの一人でな」
「そう、私は時間を戻すことが出来る"時逆(ときさか)の歯車"と言う能力を持っているのですよ」
ん~・・・なんだか魔族とは似つかわしくない中二病的な名前の技だな。
「それは凄いです!時間を戻すと言うのは結果を知った上で戻せるのですか?」
意外と反応したのはレーティアだった。
「ええ。結果を知ったまま時を戻せるのですよ!」
「どのくらい戻せるのですか?」
ジェロールは数秒考え込んだ。
「精神状態にもよりますが、絶好調な時で7分と言った所でしょうか?」
「精神力?魔力じゃないのか?」
「ええ。私のこの力は魔法ではありませんので」
俺、ミュー、レーティアは頭の上にハテナがついた。
「魔法じゃないってどういうことなんだ?」
「そうですね、それは"イマジネーションパワー"とでも言うのでしょうか?"想像の具現化"と言うわつですよ」
!?
そんな簡単な事で時間を戻すとかえげつない事ができるのか?
「簡単ではありませんよ」
!?
「俺今声出てたか?」
「いえいえ、声には出てませんが、顔がそう言っていましたよ」
なんだよ・・・心の中まで読めるのかと驚いた。
「想像の具現化と言っても綿密にイメージを具体化出来ないとダメなのです。非現実をいかに現実的に想像できるかと言う一点に尽きるので、想像力を無限大に広げれる者でないと難しいでしょう。つまり魔法使いのような理論的な思考の持ち主には難しいと言うことです」
「率直に聞くが俺にもできるのか?」
「先の戦いを見る限り貴方はかなり高度な魔法の使い手。イマジネーションパワーとは対極にいると思われるので、習得は難しいでしょう」
あれはミューの力を借りたもので俺の力じゃない・・・なんていまさら言えないわな・・・。
と言うか逆にオタクの俺にはその素質が200%あるって事じゃないのか?
むしろ魔法使いと思われてるこの状況下で、イマジネーションパワーが使えるとなったらまさに大賢者と称えられること間違いなしだ。
「実は俺、そのイマジネーションパワーってのに向いてる気がするんだよね。一度教えてくれないか?」
「ええ、構いませんよ。無理だとは思いますけど」
「そうだな。いかに優れた魔力を備えてると言ってもこればっかりは資質が伴う能力だからなぁ・・・と、話がそれたな」
魔王は被せるように言った。
「一希さんのイマジネーションパワーはともかく、これでこちらの時使いは2人、やや有利かもしれませんね」
レーティアがそう呟いたところ、ミューは強い口調で答えた。
「確かに、ジェロールさんのやり直しの力で殺られる可能性は激減すると思いますが"倒す"という事には直結しない・・・」
・・・・・・確かに。
ジェロールの能力は敵を倒す為の力ではない。
いや、使い方によるのか?
「時間を戻せるって事は、逆に言うとこの後相手がどう行動するのか分かるって事だよな?」
「確かにそうとも言えるでしょう」
「そこを狙いうって全員で一斉に攻撃を仕掛ければ回避も難しいんじゃないか?」
「確かにそれならやれるぜ!お前冴えてるな!」
賛同してくれたのは意外にもザルババだった。
「うーん・・・。それは少し難しいかもしれません」
「なんでだよ!?」
ザルババはテーブルを叩きながら聞き返した。
「単純に術者の私以外、時間が戻った事を認識出来ないからですよ」
そうか、俺たちの時間も戻るからか・・・・・・。
やはり、俺がイマジネーションパワーで何とか決定打を生み出すしかないか・・・。
「ここは1つみんなに考えて貰いたいことがある」
「・・・オレ、カンガエル、ニガテ・・・」
あの名前のわからんゴツイ奴が喋った。
「そ、そうか・・・。もしいい考えが浮かんだら言ってくれ」
それを聞き声を出さずに頷いていた。
「で、何を考えればいいんですか?」
ミューはため息をつきながら聞き返す。
「単純だ。"ベルゾディアを倒せる能力"だ」
バァン!
「今それが分からねえから困ってるんだろうがよ!」
ザルババが偉くいきり立っている。
「最後まで聞けよ!」
少しイラついた俺はやや強い口調で言った。
「・・・ああ、悪かったな。続けてくれ」
ザルババの妙に素直な一面を見た。
「頭を柔らかくして考えて欲しい。今の自分達の力でどうすればではなく、非現実的でも、ありもしない力でもなんでも構わない。とにかくベルゾディアを倒せる方法を考えて欲しい」
アーハッハッハ!
「そんなの簡単だぜ!"死ね"って思ったら殺せる力を手に入れたら一瞬で終わりだ!」
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
ザルババの突拍子もない意見に皆呆れ顔だ。
ジェロールなんかは聞こえないような声の大きさで"馬鹿か"と呟いていた。
「お前は馬鹿か!」
ツッコミを入れたのは意外にも魔王だった。
「いや、なんでもいいって言ったのはあいつだせ!」
俺は席を立ち真面目な顔で答えた。
「ああ。確かに今のザルババの意見の実現は無理だが、考え方的には悪くない。現実(リアル)と言う枠を取り払って考えて欲しい」
レーティアが困り顔で質問する。
「実現できない様なことを論議してなんのメリットがあるんですか?」
「姫さんよ!楽しいじゃねえか!想像の中で奴をぶっ殺す方法を考えるんだぜ?」
「いや、でも、出来なければ意味が無いと思います」
「そんなこたぁしらねえ。奴が考えろってんだから考えてるだけだぜ」
レーティアはため息をついた。
ミューが似たような顔つきで言い放った。
「時間の無駄です」
「確かに意味があるとは思えん」
魔王もミューと同じ考えのようだ。
フフフ・・・
妙な笑い声を上げたのはジェロールだった。
「私には分かりましたよ。あなたはその妄想的な打開策をイマジネーションパワーで何とかしようと言う魂胆でしょう。しかしながらそれは無理というもの」
「なんでそう思うんだ?」
「いいでしょう。なら試してみましょうか。基本の基本、冷たい炎を出してみてください」
「いきなりやれっつってもな・・・。とにかく具体的にイメージしたらいいんだな」
「まぁ、端的に言うとそういうことですね。とてつもなく強い想いを込め、あたかもそこに存在するかのように・・・です」
・・・・・・ぐぬぬ・・・
俺は気張った。
「そんなものは作れませんよ。冷気と熱気は相対関係にある熱の力。両方の属性を併せ持つのは理論的に不可能です!」
「そう不可能なんです。理論と公式で成り立つ魔力の世界では絶対に不可能なんです。ですがイマジネーションパワーを用いればこんな感じで・・・」
ジェロールの手のひらには澄んだ蒼白い炎が現れた。
「・・・冷たい・・・。ただ、熱をもたないこれを炎と呼んで良いのかは疑問ですけどね・・・」
「なら冷気を伴うのに凍らず炎のように揺らいでるこれはどう説明するんでしょうか?」
・・・・・・。
「確かに説明しろと言われたら難しいですね・・・。あえて言うなら炎とも氷とも言えない新たな物と言うのが正しいように思います」
「全く頭が固いのか、単に負けず嫌いなのか・・・。なぜ素直に冷たい炎と言えないんでしょうか・・・。だから高尚な魔法使いにはイマジネーションパワーが使えないのですよ」
ジェロールはそれを見せつけようと一希のほうへ歩いていく。
!!!
ジェロールは一希の手の中にある物をみて二、三歩後ずさりした。
「貴方、その手にあるのは・・・黒い炎!?いや黒いと言うには生ぬるい・・・漆黒、深淵の炎と言うにふさわしい真っ黒な炎・・・」
ジェロールは恐る恐る触れてみる。
ぬぉぉぉ!!!!
「なんと!?これは冷たい所の話ではない。この世の熱という熱を完全に無にしてしまったありえない冷たさだ!冷気の温度さえ無にしてしまうとてつもない炎・・・・・・」
「へへっ・・・お前さんが"冷たい炎"と言った瞬間その青白く燃える冷気を纏う炎を思い浮かべたんだが、それでは誰もが想像する範疇でしかないと思ったのさ。だから冷気さえ感じない"無温度の炎"を思い描がいたわけさ」
ジェロールは震えていた。
「これですよ!これこそがイマジネーションパワー!私の想像を超える素晴らしいイマジネーションパワーですよ!彼ならきっと想像もできないとてつもない事をやってくれる予感がします!」
「へへっ・・・取り敢えず合格でいいんだな」
「もちろんです!むしろ賞賛に値します」
俺は全身の力が一気に抜けた。
「というわけなんで、続けてベルゾディアを倒す方法を考えてくれ」
ミューが投げやり気味な態度で一言言い放った。
「"全ての攻撃を無効にできる無敵な力"とかでいいんじゃないですか?」
「無敵は俺も考えたんだが、ベルゾディアの強さを考えたら、殺られないが倒せないなんて事になり長期戦になりそうな気がするんだよね・・・」
・・・・・・。
ミューは不貞腐れた。
「あれだ、全てを消し去る"究極最強のエクセレントな消滅魔法"みたいな物はどうだ?」
「そんな理論も魔力式もない無茶な魔法あるわけないでしょ!」
ミューはどうもイマジネーションパワーを受け入れれないようでムキになって反論する。
また、ザルババがとんでもない事を言ってるなぁ・・・・・・!?
「いや、ある!」
俺は興奮した。
なぜこんなすごい魔法を思い出せなかったのか。
「あるのか?」
「そんな魔法があるんですか?」
「なんという魔法だ?」
皆が一希の言葉に固唾をのんだ。
「その魔法とは『極大消滅呪文メドローア』だ!」
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