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♂♀奇策
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なんだかんだで自分の力だけで頑張ってるみたいね。
一方的に力の差を見せつけられて速攻白旗あげるか、泣きつくようにあの力を使うかの展開になると予想してたんだけど、意外に粘っている。
あの力とは"メギド"だ。
メギドとは2人の魔力を融合し、個人の魔力の上限限界を超える力を生み出すエルフ族における裏技的秘術だ。
例えば、5の魔力を持った2人が通常の魔力攻撃をしたとする。
相手の魔力耐性が4の場合、差分の1がダメージになるので合計2のダメージになる所が、
メギドを使うと2人の魔力が掛け合わさる事で10の魔力攻撃が可能になり、差分の6がダメージとなる。
つまり、お互いの魔力を掛け合わせ一つの大きな魔力として使う技だ。
今回はこれを応用し、魔力のない一希と魔力融合する事で、私の魔力は変わらないけど、魔力のない一希でも私の魔力を持つことになる。
という事は、一希は私の魔力を備えた魔法戦士となるわけだ。
つまり、テレボ・ロアは2人の敵と戦っている事と相応しい事になる。
ただ一つ不安材料となるのは、一希が魔法戦慣れしていないという事だ。
レーティアさんとの特訓で多少なり魔法の練習もしたみたいだから大丈夫だとは思うんだけどね。
この膠着した、ひと区切り着いたと言う感じの間は"前半戦終了"と言ったところかな。
それに、あの一希の目を見る限りだと"奥の手で一気にとどめを刺す"と言った感じだろう。
でもあの両手を上にあげているのはなんだろ・・・・・・
と考えていると上空に魔力の粒が無数に留まっているのを感じた。
「ふざけたまま死にやがれ!」
ロアは大声で叫ぶとその場から姿を消した。
その瞬間一希は両手を地面に向かって一気に振り下ろした。
すると空から小さな火球が雨のように降り注いだ。
ドドドドドドドド·····
辺りは火球が地面を貫き無数の穴が空いていた。
そうか、どこにどう動くかわからないロアに対して面による無差別攻撃って訳か。
その作戦は見事ハマったようで、姿を消したロアは一希の前方で全身傷だらけになり膝を着いていた。
「貴様・・・一体何を・・・」
あの口ぶりだとロアは"何が起きたかわからない"という感じだね。
つまり、時間を飛んでいる間の出来事は自分にも認識出来ないと言ったところか。
「お前が時間移動でどこに出てくる場所が分からないから絶対当たるように辺り一面無差別攻撃しただけさ」
「ック・・・。貴様のどこにそんな魔力が・・・」
「それはお前が勝手に、魔法での攻撃はないと思い込んでただけだろう」
「・・・・・・」
う~ん・・・一希がやや優勢な感じはあるけど、勝負ありって所までは行かないかな。
ロアも何か切り札を持ってそうだしね。
「ふぅ~。そろそろ白黒つけようか」
落ち着いた口調でそういったのはロアの方だった。
「そんなにボロボロなのにまだ、やる気なのか?」
「確かに想定外の攻撃でダメージは受けたが、どれも致命傷には至ってねぇ。ちょっとでかい蚊に刺されたってところだ」
口が減らない上に、ロアの目はまだ死んでない。
これは絶対奥の手があるはずだと確信する。
今の範囲攻撃に対抗するなら接近戦を仕掛けてくることは考えにくい。
恐らく間合いの外からの遠距離攻撃。
もしくは、逆にあの攻撃を食らう前に接近できる超接近技があるのか・・・。
まあ、それが出来きるならここまで戦いが長引いて無いはずだ。
できるがとても大きなリスクを伴うため渋ってると言うのも有り得なくはないが、
あいつの性格を考えるとその可能性は少ないか。
どちらかと言うと、リスクを背負ってでも実行するタイプだ。
などと考えているとロアが動いた。
体を右側に半分ひねり、左手を突き出し、右手を後ろに隠すような構えをとった。
あの体制から突進はかんがえにくい。
『しゃぁぁあ!!』
大きな雄叫びを上げた瞬間、目に入ったのは超高速で飛んでくるナイフだ。
それを認識した瞬間もロアが移動した気配がない。
奥の手って言うのはノーモーションからの高速スローイングナイフ・・・か?
と思った瞬間、右太もも、左肩、左の足先の3箇所にナイフが刺さった。
驚きで一瞬フリーズしたが冷静に正面から飛んでくるナイフをかわし、すぐさまロアを見る。
全く動いた気配がない上に、向かってくる感じもない。
あの技の後は動けないんだろうか?
いや、それよりこのナイフはどういう訳でこうなった??
理解できないままそのナイフを眺めていると全てのナイフがちがう角度から刺さっている事に気がついた。
まるでナイフが多方向からワープしてきたかのような不自然さだ。
まずい、これはまずいぞ・・・・・・。
焦りを覚えた俺は無意識に二、三歩後ずさりしていた。
今の技はなんだろう・・・。
あのナイフの刺さり方からして正面からの攻撃ではないと言う事だけは分かるんだけどねぇ・・・。
よく見ると地面に無数の足跡と思わしき痕跡がある。
!!!
そうか、ロアは"時間を飛んでる間に、別の場所へ移動し、すかさずナイフを投げ、また元の位置に戻る"これを繰り返していたんだ。
私たちは時間を飛び終わり元の位置戻ったロアを見続けていたため、動いていないように見えたわけか!
正面からナイフを投げと、あの何をするのかわからない異様な構えは、注意を正面に引き付けておく為か。
だけど、飛んでる時間の間に刺さるナイフなんて避けようがないんじゃ・・・。
いや、飛んでる時間はロアにも認識できないはず。
という事はナイフがどう飛んでるかまではわからない、つまり"勘"で投げているという事。
辺りに一希に向かって投げたであろうナイフが数本岩や地面に向かってささっている事からそう判断できる。
と、それがわかったところで回避する方法がある訳ではないんだけどね・・・。
勘の良い一希の事だ、似たような事に気づいて、打つ手がなくて二の足踏んでいるはずだ。
少し手を貸してあげようか。
"今の攻撃の正体は「飛んでる時間の間に移動と投擲を行い元の位置に戻る」これを繰り返して、あたかも動いてない謎の攻撃に見せかけたってところ"
!!!
頭の中にミューの声が・・・。
そうか、魔力融合しているせいで思考も同調してる訳か。
"見えない攻撃を見ようとすることに意味は無い。ただ、相手の技そのものを超える攻撃をすればいいだけの事"
それが聞こえた俺は、やつを倒すには"回避不能の広範囲攻撃"しかないと踏んだ。
理想を言えば足を殺したい。
何がヒントがないかと辺りを見回した。
そこには不安そうに見ているレーティアの顔があった。
レーティアの顔を見た瞬間あの特訓の日々を思い出した。
俺は思わずレーティアに向かって親指を立てグーッと余裕があるところを見せ、ロアの方へ向きを変えた。
次に口を開いたのは俺だった。
「お前さっきの技をもう一回やったらお前の負けだぞ。来るなら別の技で来いよ」
「・・・・・・」
ロアはしばらく口を閉じていた。
きっと、今の言葉が本当にそうなのか、もう一度出されたらヤバいのでハッタリを噛ましてるのかって迷ってるってとこだろう。
その間に俺はポケットやポーチの中から小石を取り出し辺りに無作為に投げ捨てた。
「石なんか投げやがってなんの真似だ?」
何かあると疑心暗鬼になっているようだ。
「なにかに使えるかと思って持っていたんだが役に立ちそうもないんでな。お前のナイフを避けるために少しでも身を軽くしてるだけだよ」
それを聞いたロアは口元をニヤッとさせた。
その表情からするに"奴は避けることの出来ないナイフの攻撃を避ける"と言った。つまりハッタリだと確信し勝利を意識したって所だろう。
それを見たミューも笑顔で顔が緩んでいた。
「残念だけど一希の勝ちだね」
心の声ではなく、思わず声が出た。
そう、思考が同調してると言うことは一希が考えている事もミューに伝わるという事だ。
小石を捨て終わった所で奴はまたあの不気味な構えをとった。
「その技は止めとけって警告したはずだが?
「うるせぇよけれるもんなら避けてみやがれ!」
ロアはそう言葉を吐き捨て技を発動させた。
その場を動かず多方向からのナイフ投げと見せかける技のはずなのに、ロアの体は一希の左側で足を止めていた。
!?
ロアは一体何が起きたかわからず混乱している。
俺はロアに向かって足元を指さした。
!!!
ロアの右足は足の付け根まで凍りついていた。
「なんだこれは!?一体何をしやがった??」
ロアは何とか動こうとするが凍りついている足が言う事を聞かない。
「敵に対して技のネタばらしはナンセンスだが、もう勝負はついたので教えてやるよ」
「・・・ック・・・」
グゥの音も出ないとはこう言うことなんだろう。
ロアは悔しさと、焦りと、混乱で顔が引きつっていた。
「答えはさっき撒いた石だよ。投げ捨てて見せたのはほんの数個だが、ポーチの中で小さく砕いて無数の破片にし、その破片1個1個に凍結爆弾(アイスボム)の魔法をかけておいた。だが触れるだけでそれだけ凍りつく凍結魔法だ、そんなものをバラ撒いたらさすがに魔法使いでなくても何かヤバい違和感を感じるのは明白。だから存在消滅魔法(エスコンデール)をかけアイスボムごと石の存在を認識できないように消してばら撒いた訳さ。つまりこの辺り一帯は触れたら凍りつく見えないアイスボムの地雷地帯になってるってわけだ」
「嘘だ!!ただの石の欠片に触れるだけでここまで凍結できる程の魔力の存在を消すなんて単なる人間ごときにできる技じゃない!それを無数に行なうなど絶対に有り得ない!なにかのイカサマだ!イカサマに違いない!!」
俺はポーチからアイスボムの石片を指でつまみ、手を突き出しロアにみせた。
「今、この指の中にアイスボムの石片がある訳だが」
「無い無い無い!騙されんぞ!そんなペテンにかけられてたまるかぁ!!」
「そうか、なら証明するには実際試してみるしか無いな」
そう言うとロアに向かってそれを投げるた。
ロアは何かが当たった感触を感じる事もなく突如右手が氷漬けになった。
「うわぁぁぁぁあぁぁ!!!」
俺はもう1つ見えない欠片を取り出しロアに向かって投げた。
すると左足が凍結した。
「うぅぅぅ・・・・・・」
ロアの戦意は消失し大人しくなった。
「まだ信じられないか・・・ならこれでどうだ?」
そう言うとエスコンデールの魔法を解除した。
すると指の間に小石が現れた。
「なっ・・・」
辺りにもおびただしい魔力を帯びた小石がゴロゴロその姿を見せる。
俺は指の中にある小石投げつけた。
その小石がロアの左手に触れた瞬間手は凍結した。
「 かぐぁあ・・・」
驚きと苦痛で聞いた事の無い悲鳴をあげた。
「まだ信じられないか?ではもう1つ」
今度は体が凍りついた。
「あと頭だけだな・・・」
「うぅ・・・・・・」
「ん?何か言ったか?」
「たとえ全身氷漬けになっても負けは認めん!自力で氷を溶かして貴様を殺してやる」
確かにあいつの性格ならそう言うわな・・・
俺はロアに向かって歩き始めた。
そして手の届く所まで行くと一言言った。
「俺は魔族を倒すためでも、滅ぼすわけでもなく、ただ、俺たちだけでは手に負えない化け物を倒す為に魔族の力を借りに来た。だからお前に死なれたら困るんだ。むしろ力を貸してほしいと思ってる」
「はぁ?いきなり何を訳の分からんことを・・・」
「そういう理由だからお前を殺す訳にはいかないんだ。かと言ってお前が自力で氷を解くまで待ってる訳にもいかない」
「・・・てめぇ何が言いたい?」
「2人の誇りを賭けた戦いは引き分けって事にしておいて、この試合には負けてくれないか。そしてベルゾディアを倒した後に決着をつけるってのはダメか?」
「・・・・・・ベルゾディアってのはそんなに強いのか?」
「強い。それも次元がちがう。俺たちの戦いなんかやつから見たら子供のごっこ遊びに等しいだろう」
「馬鹿げた話だ。馬鹿げた話だがそんなに強え奴がいるなら俺様がそいつをぶっ殺して俺が最強だ」
「ああ。そして、その最強のお前を倒して俺が最強だ」
「上等だ!」
その答えを聞くと、俺はロアの氷を解いた。
「そんなに強いってのに俺はベルゾディアって名を聞いたことがない。本当にそんな奴いるのか?」
「ああ・・・。詳しい対事は、俺たちがこの試合に勝って魔族の協力を得られたら話すよ。ただ、なぜその名を知らないかと言うと、そいつは相手の運命そのものを糧として生きている。やつに運命を食われると、世の中の運命の歯車から切り離され存在そのものが無かった事になる。つまりやつとの関わりを持った者は、この世の中から存在ごと消されてしまうというわけだ」
「そんな理解出来ねえ嘘くさい話があってたまるか!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・その目は本当なのか?」
「ああ」
「ちっ・・・まぁいい。もしそれが本当であれ嘘であれ、最終的にお前をぶっ倒して俺が最強になればいいだけだ」
そう吐き捨てるとロアは魔王の方を向き「降参だ」と告げた。
その言葉に会場はザワついていたが、最後の氷漬けの攻撃を目の当たりにしていた観衆たちからプーイングが出ることは無かった。
「勝者一希!」
勝利の宣言がされると共に俺は静かに控え室に向かった。
一方的に力の差を見せつけられて速攻白旗あげるか、泣きつくようにあの力を使うかの展開になると予想してたんだけど、意外に粘っている。
あの力とは"メギド"だ。
メギドとは2人の魔力を融合し、個人の魔力の上限限界を超える力を生み出すエルフ族における裏技的秘術だ。
例えば、5の魔力を持った2人が通常の魔力攻撃をしたとする。
相手の魔力耐性が4の場合、差分の1がダメージになるので合計2のダメージになる所が、
メギドを使うと2人の魔力が掛け合わさる事で10の魔力攻撃が可能になり、差分の6がダメージとなる。
つまり、お互いの魔力を掛け合わせ一つの大きな魔力として使う技だ。
今回はこれを応用し、魔力のない一希と魔力融合する事で、私の魔力は変わらないけど、魔力のない一希でも私の魔力を持つことになる。
という事は、一希は私の魔力を備えた魔法戦士となるわけだ。
つまり、テレボ・ロアは2人の敵と戦っている事と相応しい事になる。
ただ一つ不安材料となるのは、一希が魔法戦慣れしていないという事だ。
レーティアさんとの特訓で多少なり魔法の練習もしたみたいだから大丈夫だとは思うんだけどね。
この膠着した、ひと区切り着いたと言う感じの間は"前半戦終了"と言ったところかな。
それに、あの一希の目を見る限りだと"奥の手で一気にとどめを刺す"と言った感じだろう。
でもあの両手を上にあげているのはなんだろ・・・・・・
と考えていると上空に魔力の粒が無数に留まっているのを感じた。
「ふざけたまま死にやがれ!」
ロアは大声で叫ぶとその場から姿を消した。
その瞬間一希は両手を地面に向かって一気に振り下ろした。
すると空から小さな火球が雨のように降り注いだ。
ドドドドドドドド·····
辺りは火球が地面を貫き無数の穴が空いていた。
そうか、どこにどう動くかわからないロアに対して面による無差別攻撃って訳か。
その作戦は見事ハマったようで、姿を消したロアは一希の前方で全身傷だらけになり膝を着いていた。
「貴様・・・一体何を・・・」
あの口ぶりだとロアは"何が起きたかわからない"という感じだね。
つまり、時間を飛んでいる間の出来事は自分にも認識出来ないと言ったところか。
「お前が時間移動でどこに出てくる場所が分からないから絶対当たるように辺り一面無差別攻撃しただけさ」
「ック・・・。貴様のどこにそんな魔力が・・・」
「それはお前が勝手に、魔法での攻撃はないと思い込んでただけだろう」
「・・・・・・」
う~ん・・・一希がやや優勢な感じはあるけど、勝負ありって所までは行かないかな。
ロアも何か切り札を持ってそうだしね。
「ふぅ~。そろそろ白黒つけようか」
落ち着いた口調でそういったのはロアの方だった。
「そんなにボロボロなのにまだ、やる気なのか?」
「確かに想定外の攻撃でダメージは受けたが、どれも致命傷には至ってねぇ。ちょっとでかい蚊に刺されたってところだ」
口が減らない上に、ロアの目はまだ死んでない。
これは絶対奥の手があるはずだと確信する。
今の範囲攻撃に対抗するなら接近戦を仕掛けてくることは考えにくい。
恐らく間合いの外からの遠距離攻撃。
もしくは、逆にあの攻撃を食らう前に接近できる超接近技があるのか・・・。
まあ、それが出来きるならここまで戦いが長引いて無いはずだ。
できるがとても大きなリスクを伴うため渋ってると言うのも有り得なくはないが、
あいつの性格を考えるとその可能性は少ないか。
どちらかと言うと、リスクを背負ってでも実行するタイプだ。
などと考えているとロアが動いた。
体を右側に半分ひねり、左手を突き出し、右手を後ろに隠すような構えをとった。
あの体制から突進はかんがえにくい。
『しゃぁぁあ!!』
大きな雄叫びを上げた瞬間、目に入ったのは超高速で飛んでくるナイフだ。
それを認識した瞬間もロアが移動した気配がない。
奥の手って言うのはノーモーションからの高速スローイングナイフ・・・か?
と思った瞬間、右太もも、左肩、左の足先の3箇所にナイフが刺さった。
驚きで一瞬フリーズしたが冷静に正面から飛んでくるナイフをかわし、すぐさまロアを見る。
全く動いた気配がない上に、向かってくる感じもない。
あの技の後は動けないんだろうか?
いや、それよりこのナイフはどういう訳でこうなった??
理解できないままそのナイフを眺めていると全てのナイフがちがう角度から刺さっている事に気がついた。
まるでナイフが多方向からワープしてきたかのような不自然さだ。
まずい、これはまずいぞ・・・・・・。
焦りを覚えた俺は無意識に二、三歩後ずさりしていた。
今の技はなんだろう・・・。
あのナイフの刺さり方からして正面からの攻撃ではないと言う事だけは分かるんだけどねぇ・・・。
よく見ると地面に無数の足跡と思わしき痕跡がある。
!!!
そうか、ロアは"時間を飛んでる間に、別の場所へ移動し、すかさずナイフを投げ、また元の位置に戻る"これを繰り返していたんだ。
私たちは時間を飛び終わり元の位置戻ったロアを見続けていたため、動いていないように見えたわけか!
正面からナイフを投げと、あの何をするのかわからない異様な構えは、注意を正面に引き付けておく為か。
だけど、飛んでる時間の間に刺さるナイフなんて避けようがないんじゃ・・・。
いや、飛んでる時間はロアにも認識できないはず。
という事はナイフがどう飛んでるかまではわからない、つまり"勘"で投げているという事。
辺りに一希に向かって投げたであろうナイフが数本岩や地面に向かってささっている事からそう判断できる。
と、それがわかったところで回避する方法がある訳ではないんだけどね・・・。
勘の良い一希の事だ、似たような事に気づいて、打つ手がなくて二の足踏んでいるはずだ。
少し手を貸してあげようか。
"今の攻撃の正体は「飛んでる時間の間に移動と投擲を行い元の位置に戻る」これを繰り返して、あたかも動いてない謎の攻撃に見せかけたってところ"
!!!
頭の中にミューの声が・・・。
そうか、魔力融合しているせいで思考も同調してる訳か。
"見えない攻撃を見ようとすることに意味は無い。ただ、相手の技そのものを超える攻撃をすればいいだけの事"
それが聞こえた俺は、やつを倒すには"回避不能の広範囲攻撃"しかないと踏んだ。
理想を言えば足を殺したい。
何がヒントがないかと辺りを見回した。
そこには不安そうに見ているレーティアの顔があった。
レーティアの顔を見た瞬間あの特訓の日々を思い出した。
俺は思わずレーティアに向かって親指を立てグーッと余裕があるところを見せ、ロアの方へ向きを変えた。
次に口を開いたのは俺だった。
「お前さっきの技をもう一回やったらお前の負けだぞ。来るなら別の技で来いよ」
「・・・・・・」
ロアはしばらく口を閉じていた。
きっと、今の言葉が本当にそうなのか、もう一度出されたらヤバいのでハッタリを噛ましてるのかって迷ってるってとこだろう。
その間に俺はポケットやポーチの中から小石を取り出し辺りに無作為に投げ捨てた。
「石なんか投げやがってなんの真似だ?」
何かあると疑心暗鬼になっているようだ。
「なにかに使えるかと思って持っていたんだが役に立ちそうもないんでな。お前のナイフを避けるために少しでも身を軽くしてるだけだよ」
それを聞いたロアは口元をニヤッとさせた。
その表情からするに"奴は避けることの出来ないナイフの攻撃を避ける"と言った。つまりハッタリだと確信し勝利を意識したって所だろう。
それを見たミューも笑顔で顔が緩んでいた。
「残念だけど一希の勝ちだね」
心の声ではなく、思わず声が出た。
そう、思考が同調してると言うことは一希が考えている事もミューに伝わるという事だ。
小石を捨て終わった所で奴はまたあの不気味な構えをとった。
「その技は止めとけって警告したはずだが?
「うるせぇよけれるもんなら避けてみやがれ!」
ロアはそう言葉を吐き捨て技を発動させた。
その場を動かず多方向からのナイフ投げと見せかける技のはずなのに、ロアの体は一希の左側で足を止めていた。
!?
ロアは一体何が起きたかわからず混乱している。
俺はロアに向かって足元を指さした。
!!!
ロアの右足は足の付け根まで凍りついていた。
「なんだこれは!?一体何をしやがった??」
ロアは何とか動こうとするが凍りついている足が言う事を聞かない。
「敵に対して技のネタばらしはナンセンスだが、もう勝負はついたので教えてやるよ」
「・・・ック・・・」
グゥの音も出ないとはこう言うことなんだろう。
ロアは悔しさと、焦りと、混乱で顔が引きつっていた。
「答えはさっき撒いた石だよ。投げ捨てて見せたのはほんの数個だが、ポーチの中で小さく砕いて無数の破片にし、その破片1個1個に凍結爆弾(アイスボム)の魔法をかけておいた。だが触れるだけでそれだけ凍りつく凍結魔法だ、そんなものをバラ撒いたらさすがに魔法使いでなくても何かヤバい違和感を感じるのは明白。だから存在消滅魔法(エスコンデール)をかけアイスボムごと石の存在を認識できないように消してばら撒いた訳さ。つまりこの辺り一帯は触れたら凍りつく見えないアイスボムの地雷地帯になってるってわけだ」
「嘘だ!!ただの石の欠片に触れるだけでここまで凍結できる程の魔力の存在を消すなんて単なる人間ごときにできる技じゃない!それを無数に行なうなど絶対に有り得ない!なにかのイカサマだ!イカサマに違いない!!」
俺はポーチからアイスボムの石片を指でつまみ、手を突き出しロアにみせた。
「今、この指の中にアイスボムの石片がある訳だが」
「無い無い無い!騙されんぞ!そんなペテンにかけられてたまるかぁ!!」
「そうか、なら証明するには実際試してみるしか無いな」
そう言うとロアに向かってそれを投げるた。
ロアは何かが当たった感触を感じる事もなく突如右手が氷漬けになった。
「うわぁぁぁぁあぁぁ!!!」
俺はもう1つ見えない欠片を取り出しロアに向かって投げた。
すると左足が凍結した。
「うぅぅぅ・・・・・・」
ロアの戦意は消失し大人しくなった。
「まだ信じられないか・・・ならこれでどうだ?」
そう言うとエスコンデールの魔法を解除した。
すると指の間に小石が現れた。
「なっ・・・」
辺りにもおびただしい魔力を帯びた小石がゴロゴロその姿を見せる。
俺は指の中にある小石投げつけた。
その小石がロアの左手に触れた瞬間手は凍結した。
「 かぐぁあ・・・」
驚きと苦痛で聞いた事の無い悲鳴をあげた。
「まだ信じられないか?ではもう1つ」
今度は体が凍りついた。
「あと頭だけだな・・・」
「うぅ・・・・・・」
「ん?何か言ったか?」
「たとえ全身氷漬けになっても負けは認めん!自力で氷を溶かして貴様を殺してやる」
確かにあいつの性格ならそう言うわな・・・
俺はロアに向かって歩き始めた。
そして手の届く所まで行くと一言言った。
「俺は魔族を倒すためでも、滅ぼすわけでもなく、ただ、俺たちだけでは手に負えない化け物を倒す為に魔族の力を借りに来た。だからお前に死なれたら困るんだ。むしろ力を貸してほしいと思ってる」
「はぁ?いきなり何を訳の分からんことを・・・」
「そういう理由だからお前を殺す訳にはいかないんだ。かと言ってお前が自力で氷を解くまで待ってる訳にもいかない」
「・・・てめぇ何が言いたい?」
「2人の誇りを賭けた戦いは引き分けって事にしておいて、この試合には負けてくれないか。そしてベルゾディアを倒した後に決着をつけるってのはダメか?」
「・・・・・・ベルゾディアってのはそんなに強いのか?」
「強い。それも次元がちがう。俺たちの戦いなんかやつから見たら子供のごっこ遊びに等しいだろう」
「馬鹿げた話だ。馬鹿げた話だがそんなに強え奴がいるなら俺様がそいつをぶっ殺して俺が最強だ」
「ああ。そして、その最強のお前を倒して俺が最強だ」
「上等だ!」
その答えを聞くと、俺はロアの氷を解いた。
「そんなに強いってのに俺はベルゾディアって名を聞いたことがない。本当にそんな奴いるのか?」
「ああ・・・。詳しい対事は、俺たちがこの試合に勝って魔族の協力を得られたら話すよ。ただ、なぜその名を知らないかと言うと、そいつは相手の運命そのものを糧として生きている。やつに運命を食われると、世の中の運命の歯車から切り離され存在そのものが無かった事になる。つまりやつとの関わりを持った者は、この世の中から存在ごと消されてしまうというわけだ」
「そんな理解出来ねえ嘘くさい話があってたまるか!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・その目は本当なのか?」
「ああ」
「ちっ・・・まぁいい。もしそれが本当であれ嘘であれ、最終的にお前をぶっ倒して俺が最強になればいいだけだ」
そう吐き捨てるとロアは魔王の方を向き「降参だ」と告げた。
その言葉に会場はザワついていたが、最後の氷漬けの攻撃を目の当たりにしていた観衆たちからプーイングが出ることは無かった。
「勝者一希!」
勝利の宣言がされると共に俺は静かに控え室に向かった。
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