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♂♀剣にかける想い
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「ふぅー、最近トイレが近くなってしもうたわい」
そう言いながらモルドフが戻ってきた。
!!!
「なんと、一希殿ではないか!?」
「・・・・・・」
一希は呆然としていた。
「それにその姿、何があったんじゃ??」
クラリアスとの別れ際に委ねられた魔族の根源。
一希はそれを取り出す時の血しぶきにまみれていた。
パァン!
モルドフは一希の背中に強烈なのを1発入れた。
「イダダダダ・・・」
一希は我に返った。
「痛ったーー!いきなり何するんですか!・・・とここは元の世界か!?」
「うーむ、色々聞きたいことはあるんじゃが・・・皆を待ってからにしようかの」
一希は何も分からないままことが起きたのでやや錯乱状態だ。
「とりあえず休め。水を持ってくるからそこにかけて待っておれ」
「は、はい。ありがとうございます」
そう言われて一息ついた。
ハァー・・・。
ため息しか出ない。
クラリアスは本当に死んでしまったんだろうか。
あの腹の立つ物言いでひょっこりどこからか出てくるような気がしてならない。
しかし、この手の中にある根源と呼ばれた結晶体が答えであり事実だ。
ドゴァン!
二、三個隣の部屋からすごい音が聞こえてきた。
「なんだ今の音は!?」
一希は立ち上がり、様子を見ようとドアの隙間を覗きに行った。
ガツンッ!!
ドアに近づいた瞬間ドアが開いた。
もちろん開いたドアは一希の顔面を直撃。
クラリアスの青い血と、額から流れ落ちる赤い血が混じり紫色になる・・・かと思いきや、二色が入り交じるマーブル状になっていた。
!!!
「一希!?」
レーティアは思わず叫んだ。
「うわーゾンビみたい・・・」
ミューは思わず本音が出た。
「ともかく、何があったのか話してもらえますか?」
一希は頷いた。
「はい・・・」
モルドフも戻り三人で一希を囲んだ。
━━━━━━。
一希は運命の世界の事、クラリアスの事、龍神のこと、そこであった事全て話した。
そして、話を終えるとクラリアスから託された根源を見せた。
「にわかに信じ難いのぉ・・・」
「そうですね。でも、この根源を見る限りクラリアスはもう・・・・・・」
レーティアの目には涙が浮かんでいた。
転生してからずっとそばにいてくれた兄のような存在だった。
「この根源を一希さんに託したという事は、何か使い道があるって事ですよね?」
レーティアに問いかけた。
「ご、ごめんなさい。私にはよく分かりません」
「エルフの私も魔族に関してはあまり詳しくありませんし・・・」
「もちろんワシにもさっぱりわからん!」
モルドフは腕を組み偉そうな態度で言った。
「クラリアスは体内から取り出していたから、やはり、体内に埋め込んで使うものなんだろうか?」
「その可能性もありますね。埋め込むと言っても魔力の結晶体の様な物だと思いますから、エネルギーを吸収する様なかんじでしょうか?」
「人間の一希にそれを使っても大丈夫なのかの?」
「クラリアスは他になにか言ってませんでしたか?」
目をつぶって、首をひねりながら思い返していた。
「これに関しては特に何も・・・」
ミューがふと疑問に思ったのかすぐさま聞き返してきた。
「これに関してはという事は、根源の事以外には何かあるのですか?」
!!!
「そうだ!ウラクムモロス!」
「「ウラクムモロス!?」」
3人はハモる用にその名を繰り返した。
「クラリアスが気づいたんだよ!」
???
皆よく分からない顔をしていた。
「"命草"だ!命草」
「メイソウ・・・?」
「メイソウって、あの、心を落ち着かせて心を無にするって言うあれですか?」
ミューは聞き返した。
「いや、違う違う。"いのちのくさ"と書いて命草だ」
「その命草とは一体なんなんじゃ?」
「龍神・・・ウラクムモロスはこの世界と存在を繋ぐ運命の糸みたいなものを命草と呼び、それを食べると言っていた」
「なるほど、そういう事ですか」
さすが切れ者のミューだ。
察しがよく気がついたようだ。
「つまり、例の殺された村の人もウラクムモロスによってその糸を食われてしまい、世界からその存在事実が失われたという事ですね」
「多分・・・」
「それと一つ引っかかることが・・・」
「引っかかることってなんですか?」
レーティアはクラリアスの事かと思い聞き返した。
「その、ウラクムモロスは俺の事知っていたような節があったんだ」
"お前・・・なぜここにいる?"
「と、俺があそこにいるのがおかしい様な雰囲気で言ってきたんだ。クラリアスの事は全く知らなかったようで"何者だ?"と聞いてきたのに・・・」
レーティアはクラリアスの事でなくて肩を落としていた。
「まぁ、あれじゃな。ウラクムモロスを倒さねばならんという事になった訳じゃな」
「確かにそうですけど・・・簡単には行きませんよ。正直戦わなくていいものなら、私は戦いたくありません」
ミューは正直な意見を言った。
「私はクラリアスの仇を打ちたい!」
「わしも正直乗り気ではないが、やらねばならん使命のようなものを感じるわい!」
「ミューの力で王様たちの力を借りることは出来ないのか?」
ミューは首を左右に振りながらため息をついた。
「・・・ダメなのか・・・」
「そうではありません。勘違いしてますよ」
「勘違い?」
「恐らく事情を説明すれば援軍は頂けると思います」
「ならお願いしようぜ」
ミューは再び首を横に振った。
「ハッキリ言いますが、援軍に来てもらったところで役に立ちません。むしろ足を引っ張られることになります」
「えっ!?」
・・・・・・。
ミューの顔つきが変わった。
少し間を置いて口を開く。
「人間は弱い・・・。正直、本気になれば私ひとりで王国軍を壊滅する事も可能です・・・」
!?
一希はクラリアスが似たような事を言っていたのを思い出した。
「なら、なぜ人間は生きているんだ?そんな弱い存在なのに、魔族もエルフもドワーフもいるのになぜそんなに弱い人間がお前らと方を並べて生きているんだよ!!」
「一希さん、力だけの強さが全てではありませんよ。私が・・・そう、クラリアスさんも言いましたが人間が弱いと言うのはあくまで力に対しての話です。人間達には私たちエルフやドワーフ、ひょっとすると魔族にも持っていない力とは別の何かを持っているんです。だから一緒に生きているんですよ」
・・・・・・。
一希は状況が状況だけに精神的に追い詰められていた。
「ごめん・・・。なんか焦るというか一瞬の間に想像もできない事が起きすぎてパツパツだった」
レーティアは一希をそっと優しく抱きしめた。
「レーティア?」
「な、なんか分からないけど、こうしないと行けない気がした・・・」
レーティアは顔を赤くしながら言った。
・・・・・・。
魂の中に人間の時の記憶が残っているのかもしれない。
いや、そうでなくても、そうあって欲しいと一希は思っていた。
「ありがとう」
「ど、ど、どういたしまして・・・」
「これからは、寂しい時はレーティアさんが優しくしてくれますね」
ミューは意地悪な目つきでそう言った。
「バカ!」
レーティアはプイッとそっぽ向いた。
「と、イチャイチャするのはその辺にしてこの先の事考えんか?」
「「は、はい」」
一希とレーティアは二人揃って返事した。
ぷぷぷっ・・・
ミューは必死で笑いを堪えている。
それを見た二人は心の中で"後で覚えとけよ"と思っていた。
「と、おふざけはこのくらいにして真剣に考えましょう」
一希もレーティアもミューのおかげで少し心の中が軽くなった。
レーティアが手を挙げた。
「私、お父様にこの件の報告と相談をしたいと思います。聖域への侵入者が魔族だとしれた以上、敵視され警戒される事は必定でしょうから・・・」
「そうですね。それと私の直感でしかないのですが、一希さんと一緒に行った方が良い気がします」
!?
「俺と?」
「はい。クラリアスさんが己の根源を託した以上、もう無関係とは言えないでしょう。それにレーティアさん・・・いや、大切な姫を守らないといけないんでしょう?」
ニヤつきながら言った。
一希は何を言っても揚げ足を取られるので諦め口調で返事した。
「ハイハイ分かりました。大切な姫をお守りします」
「なんて棒読み・・・」
その事務的対応にレーティアは思わず呟いた。
「お前まで俺を叩くのか!」
「は、ひ、ごめんなさい」
「まあ・・・それだけ距離が縮まったって証拠だろうから許す!」
「それと、あわよくば魔族の方々に鍛えてもらってください」
「は?」
「ウラクムモロスは一希さんの事は知っていたようですから、クラリアスさんの事しか知り得てないはずです。そのクラリアスさんも殺られてしまってるので、すぐに何か行動を起こす事は無いでしょう。一希さんには来るべき日までに少しでも強くなってもらう必要があります」
一希の肩にズッシリと重いものが乗っかった。
「かしこまりました・・・。尽力致します・・・」
「あと、その根源をどうしたら良いのかも聞いといてくださいね!」
「・・・御意」
完全にミューの尻に敷かれていた。
モルドフが手を挙げミューに問いかけた。
「ワシにも時間を貰えんだろうか?」
「どういう事です?」
「半年・・・いや、出来れば一年欲しいかの」
「い、一年!?」
一希は一、二ヶ月で帰ってくるつもりだったのでびっくりした。
「一体何をなさるおつもりなんでしょうか?」
「鍛治職人がする事と言ったら一つしかないじゃろ」
ガッハッハッ!
「武器ですね!」
「おうともよ!一希どのにウラクムモロスと戦うための剣を打ってやろうと思ってな。元々ここに来たのも剣が目的じゃろ?」
「確かに・・・。色々あって忘れてた。でも、ウラクムモロスと戦うなら亡き勇者様の剣を拝領出来ないのかな?」
急にモルドフの顔つきが変わった。
「一希殿、お主はこの世に二本と無い真の名剣とはなにか知っておるか?」
「真の名剣ですか・・・。やっぱり絶対的な強度と、最高の切れ味を誇る剣でしょうか?」
「ふむ、間違いではないが、それだけなら探せば何百とあるじゃろ」
一希は目をつぶって考えた。
「その人が使いやすく、力を発揮出来る剣」
「そうじゃな。基本的には使用者に合わせた物、使う者の力を100%引き出せるものでないとダメじゃな。それだけならオーダーメイドすれば簡単できてしまうわな」
「うーん・・・魔力や特殊な効果を持った魔剣的なもの?」
「それはプラスの要素ではあるが、剣その物の質を問うものではあるまい」
「むむむむむむ・・・・・・」
「やはり常人には難しいかのぉ」
『 魂じゃよ』
モルドフは強い口調で言い放った
「魂?」
「そうじゃ。剣を使う者の中でそれに気づく者はほぼおらんじゃろ」
一希はイメージは湧くが、理解には至らなかった。
「剣にはのぉ、打った者の心が宿るんじゃ。いや、剣とは魂をとして思いを込めて打つものなんじゃ。その剣は誰の為に、何の為に、何を成し遂げる為に作られたのか」
一希はモルドフの話に息を飲んだ。
「剣とは戦う為に使う物、つまり使用者の命が掛かっておる。もう少しいえばその後ろに背負う命があるやもしれん。ゆえに決して折れる事は許されんのじゃ。それが決して叶わぬ強大な力の持ち主が相手であってもじゃ。その責任の重さを想いに込め叩くのじゃ。そして、その剣が何を成す為に作られるのかを知りそれを果たさねばならんと言う使命感を想いに変え叩く。何より使う者を思いやり、その課せられた使命を全うする為の絶対的なパートナーであると言うことを想い叩く。そして、たとえ0.1%でも"この剣で大丈夫なのか?"と疑念が頭をよぎる事は許されん。むしろ、この剣でないと駄目だと言う絶対的な信頼が必要なのじゃ。そう言う想いを込めて心で叩く。そういう想いは使用者に見えんし感じることも出来んが、必ずその剣の中に宿るもんなんじゃ。ワシほどの鍛治職人になれば、剣を握っただけでその剣が背負う魂の想いや重みが伝わってくるもんなんじゃよ。だからこそ1ヶ月や2ヶ月で簡単に作り上げることは出来んのじゃ」
一希の中に熱いものが流れ込んでくる。
「もちろんそれに使う素材も然りじゃ」
「素材ならエルヴァニウムがあるじゃないですか」
「ダメじゃ」
「わしはエルヴァニウムがどういうものか知っておる。そのうえで0.1%の疑念や迷い、躊躇いもなく叩くことができるのか?と言われると無理じゃ。そんな気持ちで作った剣は必ず折れる。それが世界最高の高度を持つ鉱物だとしてもじゃ」
モルドフさんの剣に込める想いの強さがよくわかった。
が、一年は長いな・・・。
「ちなみにワシが先代勇者の為に打ったフェストリアも丸一年かかった」
「フェルトとはこれですか?」
レーティアが一本の剣を出した。
「なぜお主が持っておる!?それにそれはフェルトでは無くフェストリアじゃ」
「ご、ごめんなさい間違えました」
「ワシにでは無く剣に謝れ」
「フェストリアさんごめんなさい」
!?
「いま、フェストリアがなにか答えてくれた気がしました・・・気のせい・・・かな?」
「その剣はお主を認めたんじゃないかな?」
「どういう事ですか?」
「その剣は元々勇者の為に作ったもの。世界を救うと言う勇者の想いを成し遂げるために打ったのじゃ。しかし勇者と言えども異世界から召喚され、元いた世界にも大切な思い出があり望郷の念もあったじゃろう。それを噛み殺し、誰にも理解できない孤独さや辛さ、何より大切な人を失った悲しみ・・・。実に今のお主にそっくりじゃ」
「そうだったんですね」
「何よりその剣を持つに相応しくないものは、持つことさえ出来んじゃろうて。お主も異世界から転生した者、今は人間でなくとも、その魂の深淵には人間であった事の事実は必ず残っておる。フェストリアはそれを感じ取ったんじゃよ」
「フェストリアさん私絶対大切にしますので、よろしくお願いします!」
レーティアは心の底からその剣の事が好きになった。
一希はモルドフさんの話を聞き、剣に話しかけるレーティアのその姿を見て羨ましく思った。しかしその反面、もし、モルドフさんの話を聞いていなければきっと鼻で笑っていたんだろうなと言う見下げた自分を思う妙な心境だった。
「一希殿、お前の相棒となる剣を打つために色々聞きたい」
「はい、よろしくお願いします」
そう言うと二人は奥の工房の方へ向かって行った。
「ミューさん私たちはどうしましょうか?」
「そうですねぇ・・・。とりあえず一希さんの用事が済んだら三人で魔界へ行きましょう。そして一希さんは魔界で修行、私はウラクムモロスの情報集めと、レーティアさんの事をもう少し知りたいので転生に関する事など情報を集めながら、レーティアさんを鍛えます!」
「き、鍛えるってどういう事ですか?」
「今までレーティアさんと接触する機会がある度に思っていたのですが、レーティアさんには自分でも気づいていない潜在的な魔力を秘めています」
「潜在的な魔力・・・ですか?」
「思うに、クラリアスさんから教わったのは物理的な戦いに関する事だけでしょう?」
「はい、魔力操作に関しては漆黒のカルヴァーニュと言う方から学びました」
「なるほど。とにかく持てる力は全て使いこなせるようになりましょう」
「はい!よろしくお願いします!」
「とりあえず宿に戻りましょう。私はもうお腹がぺこぺこです」
ミューは気の抜けた顔で言った。
「はい」
レーティアは苦笑いしていた。
皆、目的が定まった事で意識が高まり、目的のための行動を始めた。
そう言いながらモルドフが戻ってきた。
!!!
「なんと、一希殿ではないか!?」
「・・・・・・」
一希は呆然としていた。
「それにその姿、何があったんじゃ??」
クラリアスとの別れ際に委ねられた魔族の根源。
一希はそれを取り出す時の血しぶきにまみれていた。
パァン!
モルドフは一希の背中に強烈なのを1発入れた。
「イダダダダ・・・」
一希は我に返った。
「痛ったーー!いきなり何するんですか!・・・とここは元の世界か!?」
「うーむ、色々聞きたいことはあるんじゃが・・・皆を待ってからにしようかの」
一希は何も分からないままことが起きたのでやや錯乱状態だ。
「とりあえず休め。水を持ってくるからそこにかけて待っておれ」
「は、はい。ありがとうございます」
そう言われて一息ついた。
ハァー・・・。
ため息しか出ない。
クラリアスは本当に死んでしまったんだろうか。
あの腹の立つ物言いでひょっこりどこからか出てくるような気がしてならない。
しかし、この手の中にある根源と呼ばれた結晶体が答えであり事実だ。
ドゴァン!
二、三個隣の部屋からすごい音が聞こえてきた。
「なんだ今の音は!?」
一希は立ち上がり、様子を見ようとドアの隙間を覗きに行った。
ガツンッ!!
ドアに近づいた瞬間ドアが開いた。
もちろん開いたドアは一希の顔面を直撃。
クラリアスの青い血と、額から流れ落ちる赤い血が混じり紫色になる・・・かと思いきや、二色が入り交じるマーブル状になっていた。
!!!
「一希!?」
レーティアは思わず叫んだ。
「うわーゾンビみたい・・・」
ミューは思わず本音が出た。
「ともかく、何があったのか話してもらえますか?」
一希は頷いた。
「はい・・・」
モルドフも戻り三人で一希を囲んだ。
━━━━━━。
一希は運命の世界の事、クラリアスの事、龍神のこと、そこであった事全て話した。
そして、話を終えるとクラリアスから託された根源を見せた。
「にわかに信じ難いのぉ・・・」
「そうですね。でも、この根源を見る限りクラリアスはもう・・・・・・」
レーティアの目には涙が浮かんでいた。
転生してからずっとそばにいてくれた兄のような存在だった。
「この根源を一希さんに託したという事は、何か使い道があるって事ですよね?」
レーティアに問いかけた。
「ご、ごめんなさい。私にはよく分かりません」
「エルフの私も魔族に関してはあまり詳しくありませんし・・・」
「もちろんワシにもさっぱりわからん!」
モルドフは腕を組み偉そうな態度で言った。
「クラリアスは体内から取り出していたから、やはり、体内に埋め込んで使うものなんだろうか?」
「その可能性もありますね。埋め込むと言っても魔力の結晶体の様な物だと思いますから、エネルギーを吸収する様なかんじでしょうか?」
「人間の一希にそれを使っても大丈夫なのかの?」
「クラリアスは他になにか言ってませんでしたか?」
目をつぶって、首をひねりながら思い返していた。
「これに関しては特に何も・・・」
ミューがふと疑問に思ったのかすぐさま聞き返してきた。
「これに関してはという事は、根源の事以外には何かあるのですか?」
!!!
「そうだ!ウラクムモロス!」
「「ウラクムモロス!?」」
3人はハモる用にその名を繰り返した。
「クラリアスが気づいたんだよ!」
???
皆よく分からない顔をしていた。
「"命草"だ!命草」
「メイソウ・・・?」
「メイソウって、あの、心を落ち着かせて心を無にするって言うあれですか?」
ミューは聞き返した。
「いや、違う違う。"いのちのくさ"と書いて命草だ」
「その命草とは一体なんなんじゃ?」
「龍神・・・ウラクムモロスはこの世界と存在を繋ぐ運命の糸みたいなものを命草と呼び、それを食べると言っていた」
「なるほど、そういう事ですか」
さすが切れ者のミューだ。
察しがよく気がついたようだ。
「つまり、例の殺された村の人もウラクムモロスによってその糸を食われてしまい、世界からその存在事実が失われたという事ですね」
「多分・・・」
「それと一つ引っかかることが・・・」
「引っかかることってなんですか?」
レーティアはクラリアスの事かと思い聞き返した。
「その、ウラクムモロスは俺の事知っていたような節があったんだ」
"お前・・・なぜここにいる?"
「と、俺があそこにいるのがおかしい様な雰囲気で言ってきたんだ。クラリアスの事は全く知らなかったようで"何者だ?"と聞いてきたのに・・・」
レーティアはクラリアスの事でなくて肩を落としていた。
「まぁ、あれじゃな。ウラクムモロスを倒さねばならんという事になった訳じゃな」
「確かにそうですけど・・・簡単には行きませんよ。正直戦わなくていいものなら、私は戦いたくありません」
ミューは正直な意見を言った。
「私はクラリアスの仇を打ちたい!」
「わしも正直乗り気ではないが、やらねばならん使命のようなものを感じるわい!」
「ミューの力で王様たちの力を借りることは出来ないのか?」
ミューは首を左右に振りながらため息をついた。
「・・・ダメなのか・・・」
「そうではありません。勘違いしてますよ」
「勘違い?」
「恐らく事情を説明すれば援軍は頂けると思います」
「ならお願いしようぜ」
ミューは再び首を横に振った。
「ハッキリ言いますが、援軍に来てもらったところで役に立ちません。むしろ足を引っ張られることになります」
「えっ!?」
・・・・・・。
ミューの顔つきが変わった。
少し間を置いて口を開く。
「人間は弱い・・・。正直、本気になれば私ひとりで王国軍を壊滅する事も可能です・・・」
!?
一希はクラリアスが似たような事を言っていたのを思い出した。
「なら、なぜ人間は生きているんだ?そんな弱い存在なのに、魔族もエルフもドワーフもいるのになぜそんなに弱い人間がお前らと方を並べて生きているんだよ!!」
「一希さん、力だけの強さが全てではありませんよ。私が・・・そう、クラリアスさんも言いましたが人間が弱いと言うのはあくまで力に対しての話です。人間達には私たちエルフやドワーフ、ひょっとすると魔族にも持っていない力とは別の何かを持っているんです。だから一緒に生きているんですよ」
・・・・・・。
一希は状況が状況だけに精神的に追い詰められていた。
「ごめん・・・。なんか焦るというか一瞬の間に想像もできない事が起きすぎてパツパツだった」
レーティアは一希をそっと優しく抱きしめた。
「レーティア?」
「な、なんか分からないけど、こうしないと行けない気がした・・・」
レーティアは顔を赤くしながら言った。
・・・・・・。
魂の中に人間の時の記憶が残っているのかもしれない。
いや、そうでなくても、そうあって欲しいと一希は思っていた。
「ありがとう」
「ど、ど、どういたしまして・・・」
「これからは、寂しい時はレーティアさんが優しくしてくれますね」
ミューは意地悪な目つきでそう言った。
「バカ!」
レーティアはプイッとそっぽ向いた。
「と、イチャイチャするのはその辺にしてこの先の事考えんか?」
「「は、はい」」
一希とレーティアは二人揃って返事した。
ぷぷぷっ・・・
ミューは必死で笑いを堪えている。
それを見た二人は心の中で"後で覚えとけよ"と思っていた。
「と、おふざけはこのくらいにして真剣に考えましょう」
一希もレーティアもミューのおかげで少し心の中が軽くなった。
レーティアが手を挙げた。
「私、お父様にこの件の報告と相談をしたいと思います。聖域への侵入者が魔族だとしれた以上、敵視され警戒される事は必定でしょうから・・・」
「そうですね。それと私の直感でしかないのですが、一希さんと一緒に行った方が良い気がします」
!?
「俺と?」
「はい。クラリアスさんが己の根源を託した以上、もう無関係とは言えないでしょう。それにレーティアさん・・・いや、大切な姫を守らないといけないんでしょう?」
ニヤつきながら言った。
一希は何を言っても揚げ足を取られるので諦め口調で返事した。
「ハイハイ分かりました。大切な姫をお守りします」
「なんて棒読み・・・」
その事務的対応にレーティアは思わず呟いた。
「お前まで俺を叩くのか!」
「は、ひ、ごめんなさい」
「まあ・・・それだけ距離が縮まったって証拠だろうから許す!」
「それと、あわよくば魔族の方々に鍛えてもらってください」
「は?」
「ウラクムモロスは一希さんの事は知っていたようですから、クラリアスさんの事しか知り得てないはずです。そのクラリアスさんも殺られてしまってるので、すぐに何か行動を起こす事は無いでしょう。一希さんには来るべき日までに少しでも強くなってもらう必要があります」
一希の肩にズッシリと重いものが乗っかった。
「かしこまりました・・・。尽力致します・・・」
「あと、その根源をどうしたら良いのかも聞いといてくださいね!」
「・・・御意」
完全にミューの尻に敷かれていた。
モルドフが手を挙げミューに問いかけた。
「ワシにも時間を貰えんだろうか?」
「どういう事です?」
「半年・・・いや、出来れば一年欲しいかの」
「い、一年!?」
一希は一、二ヶ月で帰ってくるつもりだったのでびっくりした。
「一体何をなさるおつもりなんでしょうか?」
「鍛治職人がする事と言ったら一つしかないじゃろ」
ガッハッハッ!
「武器ですね!」
「おうともよ!一希どのにウラクムモロスと戦うための剣を打ってやろうと思ってな。元々ここに来たのも剣が目的じゃろ?」
「確かに・・・。色々あって忘れてた。でも、ウラクムモロスと戦うなら亡き勇者様の剣を拝領出来ないのかな?」
急にモルドフの顔つきが変わった。
「一希殿、お主はこの世に二本と無い真の名剣とはなにか知っておるか?」
「真の名剣ですか・・・。やっぱり絶対的な強度と、最高の切れ味を誇る剣でしょうか?」
「ふむ、間違いではないが、それだけなら探せば何百とあるじゃろ」
一希は目をつぶって考えた。
「その人が使いやすく、力を発揮出来る剣」
「そうじゃな。基本的には使用者に合わせた物、使う者の力を100%引き出せるものでないとダメじゃな。それだけならオーダーメイドすれば簡単できてしまうわな」
「うーん・・・魔力や特殊な効果を持った魔剣的なもの?」
「それはプラスの要素ではあるが、剣その物の質を問うものではあるまい」
「むむむむむむ・・・・・・」
「やはり常人には難しいかのぉ」
『 魂じゃよ』
モルドフは強い口調で言い放った
「魂?」
「そうじゃ。剣を使う者の中でそれに気づく者はほぼおらんじゃろ」
一希はイメージは湧くが、理解には至らなかった。
「剣にはのぉ、打った者の心が宿るんじゃ。いや、剣とは魂をとして思いを込めて打つものなんじゃ。その剣は誰の為に、何の為に、何を成し遂げる為に作られたのか」
一希はモルドフの話に息を飲んだ。
「剣とは戦う為に使う物、つまり使用者の命が掛かっておる。もう少しいえばその後ろに背負う命があるやもしれん。ゆえに決して折れる事は許されんのじゃ。それが決して叶わぬ強大な力の持ち主が相手であってもじゃ。その責任の重さを想いに込め叩くのじゃ。そして、その剣が何を成す為に作られるのかを知りそれを果たさねばならんと言う使命感を想いに変え叩く。何より使う者を思いやり、その課せられた使命を全うする為の絶対的なパートナーであると言うことを想い叩く。そして、たとえ0.1%でも"この剣で大丈夫なのか?"と疑念が頭をよぎる事は許されん。むしろ、この剣でないと駄目だと言う絶対的な信頼が必要なのじゃ。そう言う想いを込めて心で叩く。そういう想いは使用者に見えんし感じることも出来んが、必ずその剣の中に宿るもんなんじゃ。ワシほどの鍛治職人になれば、剣を握っただけでその剣が背負う魂の想いや重みが伝わってくるもんなんじゃよ。だからこそ1ヶ月や2ヶ月で簡単に作り上げることは出来んのじゃ」
一希の中に熱いものが流れ込んでくる。
「もちろんそれに使う素材も然りじゃ」
「素材ならエルヴァニウムがあるじゃないですか」
「ダメじゃ」
「わしはエルヴァニウムがどういうものか知っておる。そのうえで0.1%の疑念や迷い、躊躇いもなく叩くことができるのか?と言われると無理じゃ。そんな気持ちで作った剣は必ず折れる。それが世界最高の高度を持つ鉱物だとしてもじゃ」
モルドフさんの剣に込める想いの強さがよくわかった。
が、一年は長いな・・・。
「ちなみにワシが先代勇者の為に打ったフェストリアも丸一年かかった」
「フェルトとはこれですか?」
レーティアが一本の剣を出した。
「なぜお主が持っておる!?それにそれはフェルトでは無くフェストリアじゃ」
「ご、ごめんなさい間違えました」
「ワシにでは無く剣に謝れ」
「フェストリアさんごめんなさい」
!?
「いま、フェストリアがなにか答えてくれた気がしました・・・気のせい・・・かな?」
「その剣はお主を認めたんじゃないかな?」
「どういう事ですか?」
「その剣は元々勇者の為に作ったもの。世界を救うと言う勇者の想いを成し遂げるために打ったのじゃ。しかし勇者と言えども異世界から召喚され、元いた世界にも大切な思い出があり望郷の念もあったじゃろう。それを噛み殺し、誰にも理解できない孤独さや辛さ、何より大切な人を失った悲しみ・・・。実に今のお主にそっくりじゃ」
「そうだったんですね」
「何よりその剣を持つに相応しくないものは、持つことさえ出来んじゃろうて。お主も異世界から転生した者、今は人間でなくとも、その魂の深淵には人間であった事の事実は必ず残っておる。フェストリアはそれを感じ取ったんじゃよ」
「フェストリアさん私絶対大切にしますので、よろしくお願いします!」
レーティアは心の底からその剣の事が好きになった。
一希はモルドフさんの話を聞き、剣に話しかけるレーティアのその姿を見て羨ましく思った。しかしその反面、もし、モルドフさんの話を聞いていなければきっと鼻で笑っていたんだろうなと言う見下げた自分を思う妙な心境だった。
「一希殿、お前の相棒となる剣を打つために色々聞きたい」
「はい、よろしくお願いします」
そう言うと二人は奥の工房の方へ向かって行った。
「ミューさん私たちはどうしましょうか?」
「そうですねぇ・・・。とりあえず一希さんの用事が済んだら三人で魔界へ行きましょう。そして一希さんは魔界で修行、私はウラクムモロスの情報集めと、レーティアさんの事をもう少し知りたいので転生に関する事など情報を集めながら、レーティアさんを鍛えます!」
「き、鍛えるってどういう事ですか?」
「今までレーティアさんと接触する機会がある度に思っていたのですが、レーティアさんには自分でも気づいていない潜在的な魔力を秘めています」
「潜在的な魔力・・・ですか?」
「思うに、クラリアスさんから教わったのは物理的な戦いに関する事だけでしょう?」
「はい、魔力操作に関しては漆黒のカルヴァーニュと言う方から学びました」
「なるほど。とにかく持てる力は全て使いこなせるようになりましょう」
「はい!よろしくお願いします!」
「とりあえず宿に戻りましょう。私はもうお腹がぺこぺこです」
ミューは気の抜けた顔で言った。
「はい」
レーティアは苦笑いしていた。
皆、目的が定まった事で意識が高まり、目的のための行動を始めた。
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自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
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