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♂肉バトル

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「ここじゃここ、ここがワシの友人の宿じゃ」

特にすごいと言う訳でもなく、ごくごく一般的な宿屋だった。
「なんか雰囲気があっていい宿ですね」
「お主も世辞が下手だのぉ・・・。どうもても普通の宿屋じゃろ・・・」
アハハ・・・・・・
一希は苦笑いしていた。

「だがメシは絶品なんじゃ。一流のレストランと比べても引けを取らんぞい」
「それは楽しみです!」
ガハハ!!
モルドフは一希の方をバシバシ叩きながら大声で笑っていた。

モルドフ達は中に入るなり大きな声で誰かを呼んだ。
「ガラハド!おるかー」

ドッドッドッ・・・
二階から誰かが降りてきた。

「おー、モルドフでは無いか。どうしたんじゃ?」
「客を連れてきてやったぞ」
「客とな?」
降りてきたドワーフは一希達のことをマジマジと見ていた。

「エルフに人間か。こりゃ飯の作りがいがあるわい」
「よ、よろしくお願いします」
一希は深々と頭を下げた。
ミューも、笑顔で会釈した。

モルドフは一希達を我が家のごとく案内した。
「ここがお主たちの部屋じゃ。自分の家と思ってくつろいでくれ」
「何から何までありがとうございます」

「して、お主は本当に異世界から来たのか?」
「ええ、本当です」
「異世界とはどんなところなんじゃ?」
「あ、その、それはまた明日にと言う話では・・・」
「かたいこと言うんじゃない、ワシとお主の仲ではないか」

ったく、この人は困った人のようだ・・・
「はいはい、わかりました。お話します」

━━━━━━。
一希は一連の出来事を話した。

「にわかに信じ難いのぉ・・・」
「自分もそう思います・・・」

う~ん・・・・・・
一希の話を聞いたモルドフは何か煮え切らない表情で唸っている。
「どうかしました?」

「それがのぉ・・・その神様の泉という物に何か引っかかってのぉ・・・」
「そうですか?恋愛話にはよくある様な、迷信めいた話じゃないですか」
「・・・気のせいかのぉ・・・」
「またなにか思い出したら話してください!」
「そうじゃの、今考えても全く出てこんわい!」
がははは!
「でわワシは家に帰るとするわい。また明日の!」
「はい!ありがとうございます」
そう言うとモルドフは部屋を後にしギルドへ戻って行った。

「一希さん」
ミューは少し冴えない表情だ、
「急に何?」
「モルドフさんの反応みてて少し思ったのですが、神様の泉って実は私たちが思っているものとは違うものなのではないでしょうか?」

???
一希は全くピンと来てなく不思議そうな顔をしていた。
「どういう事?」
「結果だけ見ると私たちが知っているもので間違いないのでしょうけど、何かが何かをして、結果がたまたまそうなだけ・・・という可能性もありうるのかと思いまして・・・」
「何かが何かってなんなんだよ」
「それが分からないから引っかかってるんじゃないですか・・・」
「考えすぎだって」
「そうですよね・・・モルドフさんに影響されたようです」

ん?
「なんかいい匂いしない?」

・・・クンクン
ミューは犬のようにクンクンしている。
「します!します!すごく美味しそうな匂いです!」

コンコン

「はい!」
「お食事のご用意が出来ましたので、食堂の方へお越しください」
そう声をかけてくれたのはガラハドの奥さんだ。

一希はこの香りの素晴らしさから、かなりの御馳走だと想像した。
「すぐに伺います!」
2人はモルドフが言っていた一流レストランに引けを取らないと言う言葉に、胸ふくらませていた。

2人は食堂に入るとそのご馳走に思わず声が出た。
「「すき焼きだ!」」

!!!!

「「え!?」」

「この世界にも"すき焼き"があるのか?」
「一希の世界でも"すき焼き"あるの?」

お互いの世界にすき焼きがあり、それも同じすき焼きと言う名前である事に2人は驚きお互い顔を見合わせて驚いていた。

「ほらほら、出来たてだからさっさとお食べな」
ガラハドの奥さんはそう言いながらお酒を出してくれた。
2人は席につき早速いただく事にした。

一希は箸を手に取り、鍋の中へ箸を進めた。
箸が向かった先は当然肉だ。
一希が肉を掴もうとした瞬間、箸が弾き飛ばされる。

!!!

「その肉は私の獲物です!」
ミューも肉を狙っていたのだ。
一希の箸を弾き飛ばし、肉にミューの箸がせまる。
肉を掴もうとしたその瞬間

!?

「肉が逃げた!?」
ミューは想定外の事態に目を丸くしていた。

そう、逃げたのは肉ではなく鍋がズレたのだ。
「はーっはは!見たか奥義"鍋ずらし"簡単に肉は渡さねぇ!」

ぐぬぬぬぬ・・・
ミューは悔しさをあらわにし奥歯を噛み締めていた。

「ではいただきまーす」
一希が肉に箸を伸ばす。
そして掴んだ!

!!!
「し、椎茸・・・・・・なぜ??」
「ふふふ、一希もまだまだですね。油断大敵とはこの事ですよ!」

そう、ミューも鍋奥義の一つ"秘技・鍋回し"を会得していたのだ。
それは、一希が肉を掴む瞬間鍋を回し、横にある別の具材を掴ませる技だ。
"秘技・鍋回し"この技が凄いのは、相手に具を掴ませることにある。
鍋における鉄壁のルール"一度掴んだ物は必ず食べなければならない"と言う絶対不破のルールを最大限に利用した技だ。
相手に、食べたかった物と違うものを食べないといけないと言う精神的な苦痛を与えると同時に、自分が食べたいものを選ぶ事が出来る時間が生まれると言う一挙両得の技だ。

肉が確定したミューの表情は笑顔に満ちていた。
余裕の表情で肉へ箸を伸ばす。
ミューが肉をつかもうとした瞬間肉が逃げた。

!!!
「肉が逃げた!?な、鍋は動いてない・・・なぜ肉が・・・??」
ミューは理解できないこの状況に頭がパニック状態だ。

「ミュー君、キミはまだまだだね!」
一希が勝ち誇った声でいった。
ミューは何が起きたのか全く分からない。

「俺は必ず何か仕掛けてくると読んでいた。そして究極奥義"2つ挟み"を放ったのだよ!」
"究極奥義・2つ挟み"その名の通りターゲットの具材とその隣接する具材を巻き込み同時に挟む究極の奥義だ。

究極奥義により肉と椎茸は一希の取り皿の元へ取り込まれたのだった。

「悔しぃーーー!肉のことよりも一希に負けたのが悔しいぃぃぃぃ!」
ミューはテーブルをバンバン叩きながら悔しがっていた。

そのつまらない攻防を見ていた奥さんはテーブルにお皿持ってきてくれた。
「ほらほら、お肉はまだこんなにあるんだから仲良くお食べなさい」
そう言って微笑んでくれた。

2人はとても恥ずかしく顔を真っ赤にしていた。
そのあともギスギスしてはいたが、おいしくすき焼きを食べた。

「ご馳走様でした!」
「お口に合ったようで良かったです。お風呂も用意できてますのでご自由にお使いください。天然温泉が湧く岩風呂ですよ!混浴ですけど」

混浴・・・
嬉しい響きだが、一緒に入ることを想像するとなんか恥ずかしいな。

「一希さんなんか妄想してますね!ホントえっちいです!」

むぅ・・・返す言葉がない。
「ありゃ?冗談のつもりで言ったんですが本当に妄想してたんですか!?」
「そりゃ男なら誰でも想像くらいするだろ。ましてやこんな可愛い女の子なら尚更だろ・・・」
「か、か、かわいいとか、な、何をいきなり言い出すんですか!?」

ミューは、真顔で突拍子もないことを言われたので動揺した。

「まーでも、一度裸見てるんだし、今更だよな。よし一緒に入るか」
「イヤイヤおかしいでしょ・・・。あれはアレこれはコレですよ!何言ってるんですか!」
「そうか、残念。なら先に入ってくるよ」
「は、は、一緒に入って欲しいんなら、考えてもいいですよ・・・」

一希はニヤリとした。
「なんだ一緒に入りたいのか?なら行こうぜ」
「な・・・私は別に・・・」
「そうか、なら行ってくるわ」
「ちょっ・・・」
「一緒に入りたいならそう言えよ・・・。見られるのが恥ずかしかったらタオル巻けばいいだろ」
「べ、別に一希と一緒に別に入りたいとか思ってる訳じゃないですよ!」

ミューは一希の意外な誘いに動揺しまくっている。

めんどくせーなぁ・・・。
一希はミューの手を握り、引っ張るように風呂に向かって歩き出した。
「ちょちょ・・・待って、まだお風呂道具とか、着替えが・・・」
「はいはい」
ミューは、せかせかと準備し一希と一緒に風呂に向かった。

はぁ~
ミューは大きなため息をついた。
なんだか一希に、のせられた気がするなぁ・・・。
重たい足取りで風呂へ向かう。

・・・・・・風呂場へ着く

一希は脱衣場に入ると服を脱ぎ足早に岩風呂にむかった。
ミューは踏ん切りがつかないのかモジモジしている。

それに気がついた一希は浴場から顔をのぞかせた。
「ごめん。気が進まないのに無理矢理連れてきて悪かったな。後で呼びに行くから部屋に戻ってて」

そう言うと一希は1人岩風呂に向かった。

ミューはそう言われ、なんだかやるせない気持ちになってた。
私たちの関係ってなんなんだろ・・・
仲間?
友人?
友達?
恋人・・・
イヤイヤそれは無い。
一希にはみゆさんがいてるし・・・・・・これヤキモチかな・・・。

ま、考えても仕方ない。
せっかくだから裸の付き合いしてあげようかな。
そう思うと、そそくさと服を脱ぎ岩風呂へ向かった。

「かずきー!一緒に入ってあげる。私のセクシーボディー見てみなさい!」
恥ずかしさのあまりテンション上げて勢いだけで突っ走りに行った。

ザバァーン
バシャバシャ・・・
「・・・すまん頭洗っててよく聞こえんかった」

・・・・・・。
ミューは撃沈した。
「わ、私も頭洗うからいいよ・・・・・・」

「?」
一希はイマイチ状況が理解出来ないが、気がつけばとりあえず2人横並びで頭を洗っていた。
一希は湯船に入った。
男の本能的にミューのセクシーボディーが見たくてたまらん。
が、ここは我慢すべきとこだと、何かが心に語り掛ける。

ミューも、何もしかけてこない一希に違和感を感じていたが、とりあえず恥ずかしさのピークは過ぎたのでタオルを巻いて何事もなかったように自然に湯船に入った。

お互い風呂に入る前はなにか起きそうでハラハラしていたのに、何もなかった事に拍子抜けと言うか肩透かしをくらった感覚だった。
一希はガッカリ、ミューはホッとしていた。

「んじゃ先に上がるわ」
そう言って湯船を出た。
「待って!私も上がるよー」
そう言ってミューも湯船をら上がろうとした。

「まだ入っときな。一緒に上がったらお前の裸見る事になるけどいいのか?」
「あっ・・・」
黙ってれば見れたのに、意外と紳士的な所もあるんだね。
と、少し一希の事を見直した。
「ありがとう。言う通りにもう少し入ってから上がるよ!」
「おう」
そう言って一希は風呂場を出ていった。

ミューは普段見せない優しさを垣間見た気がして、なんだか嬉しくなり、1人ニヤけていた。
どうやら一希は部屋に戻ったようだ。
ミューも風呂をあがり、着替え、部屋にもどる。

「お、早かったな」
「そうかな?さっきはあがとね」
一希は、首を傾げた。
「さっき?」
ミューは微笑んだ。
「なんでもいいの」
一希はよく分かってないようだ。

「とにかく今日は疲れたから先に寝るよ」
「私も疲れたからねるぅ」

そうして隣の部屋の各々のベットに入った。
一希は、朝になったらミューがまた床に落ちて転がってるんだろうな・・・。
そんなことを考えながら眠りについたのだった。
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