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しおりを挟むあっ、気付いた。
ふと視線があったのは、入場からしばらくしてからだった。
お偉い方に囲まれながらも明らかに興味がなさそうにぽけーと視線をどこかに飛ばしていたり、ふらふらっと食べ物ゾーンへ吸い寄せられてはミハエル王子に襟首つかまれてたりするエヴァンさん。
相変わらずだなーなんて思いながら軽く会釈。
その存在に気付いていた俺と違い、目を真ん丸に見開いて吃驚している。
……やっべ、どうしよう?
俺に気付いたエヴァンさんが見るからにソワソワしだした。
胸の前で小っちゃく手を振ったったり、もはや目の前の相手に顔すら向けずにこっちを見たり、王子の袖をクイクイしたり。
その姿は母親の立ち話の最中に友だちを見つけた子どものよう。
「お母さん、友だちがいるよっ!」
「こらっ、いい子にしなさい。お行儀よくしなきゃだめでしょう」
「だってあっちにっ……!」
そんな会話が思い浮かぶ。
まぁ、実際は母子でもなければ、むしろミハエルの方が年下だけど。
「久しぶりっラファくん!!」
「……お久しぶりです」
たったか走ってきて、ぺかー!と笑顔でご挨拶してくるエヴァンさん。
その後ろについてくるミハエルら。
おぅふ、なんておまけつけてくるんですかエヴァンさん。
間の悪いことにこっちもラインハルト様らが一緒だったからなー。
「ラファくん、ラファくん!今日は髪型違うねっ。いつもより大人っぽっくって一瞬わかんなかったよ。ねぇ、セラくんは?セラくんも居るの?」
エヴァンさん、ちょっとお口閉じててくれるかなー?
いまちょっと両国の王子様同士がご挨拶してるからね??
お利口さんにできるかなー。
ねぇねぇ、と促されて、小声で兄さんは王都に居ないことなどを答える。
なんだー、と唇を尖らせる姿に違和感ないのが逆にすごい。
これで三十路近いってどういうことだよ??
セラフィ兄さんといい、エヴァンさんといい奇跡の若見えにビックリだよ。
そんなエヴァンさんの瞳がゼリファンを捉えた。
実はついさっき近づいて来て話しかけられてたんだよね。
まぁ、王子やマルクさんがご一緒だったからかも知んねーけど。
いや、むしろそうだからだと思いたい。
だって周囲の注目がハンパねーんだもん!
「今日はまた随分と色気を振りまいてるな」とか、低い良い声で笑われてもアンタの方が100倍男の色気がスゲーから!
周囲の淑女に睨まれるの怖いから、その無駄な色気をこっち向けんな!!
そして一度は別れたレイヴァンがソッコー合流しました。
どうにもゼリファンは警戒対象らしい。
揶揄ってるだけだと思うんだけど……。
パチパチと瞬きをして、コテリと首を傾げたまま腕を組んでうーん、と一言。
「なーんか、どっかで見たことある気がするような?しないような?」
「それはあるだろう。かの有名な英雄だぞ。クラウ・ソラスの若き隊長・ゼリファン・ラングスウェル殿だ」
呆れたように「お前は何年この国に居たんだ」と呟いたミハエルはそのままゼリファンたちとも挨拶を交わす。
やっぱ英雄様は他国でも有名らしい。
そしてゼリファンやマルクさんよりあの二人が年上な事実が受け入れられねー。
「それで?お前の知り合いを私に紹介してはくれないのか?」
エヴァンさんへそうふって、俺へと向けられた瞳に出来ることならこう言いたい。
いえもう、お気になさらず!
ねぇ、なんでこんなVIPの中にモブが紛れ込んでんの?
めっちゃ周囲の注目浴びまくりなんですけど!?
逃げてもいいですか?!
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