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しおりを挟む流石は王族の生誕パーティー。
煌びやかな空間と、錚々たる顔ぶれに早くも逃げだしたい気分でいっぱいだ。
両親の知り合いである貴族なんかにはすでに挨拶を済ませたし、学園の生徒など見知った顔もチラホラと居るには居る。
だけど普段から必要最低限の社交しかしていないこともあって、圧倒的に交流のない相手の方が多い。
そして “見知らぬ顔” というのは相手にとってもそうなのだろう。
チラチラと視線を向けられるのが居心地悪いことこのうえない。
つまりは、 “場違い感” がハンパない。
向けられる視線に若い女性が多いのは、エスコートする相手も連れずに一人ぽつんと壁際に佇んでるから余計だろう。
使用人たちからは同伴者として従妹を誘う提案もあった……が、仮にも恋人がいるのに他の女性をエスコートするのはどうかと思い断ったのだが、若い男が一人はやはりそれなりに目立つようだ。
さほど多くない知り合いとの挨拶はあらかた済んで、あとの知り合いとは…………あの人混みの中に突っ込んでいく勇気はない。
ってことで、彼らの周りの貴族の挨拶が終わるまでもう少し待とうと手持ち無沙汰を誤魔化すようにゆっくりとグラスを傾けた。
「やっぱラファエルだ!」
周囲の雰囲気なんてお構いなしに、いつも通り「よぉ!」と片手をあげたのはカイルだった。
きゃあきゃあと彼を取り囲んでいた女性たちの視線と、こっちに聞こえるようにだろうがデカい声での呼びかけに周囲の視線が向くのに「勘弁しろよ……」と額を押さえたくなった。
綺麗なお姉さんたちに断りを告げながらこっちへ歩み寄るカイル。
当然のようにカイルもきちんと正装をしている。
だけど着慣れてない感がありありで微妙に似合っていなかった。
顔は文句なしに男前だし、その若干崩れた感じが別種の魅力を醸し出しており、そういう意味ではムチャクチャ様になってはいるが。
……クソっ、イケメンめ。
ちなみに、彼の弟のアレンは別の場所で可愛い女の子たちをはべらかせている。
「おー!流石はキマってんじゃん。髪型も違うし、なんかいつもよりさらに大人っぽい?お前はこういう場でも違和感ねーよな」
「ありがとう。君こそモテモテじゃないか」
カイルに向けては苦笑いしつつ、じぃぃっとこちらを見る女性陣にニコリと小さく微笑む。
高位の家柄の女性たちも居るようだし……狙っていた獲物を横取り(あっちが勝手にきたんだけど)したことで逆恨みされるのは御免だ。
扇で顔を隠す女性たちから睨まれてはいなさそうなのでセーフ。
「お前なぁ、レイヴァン様に怒られっぞー?」
「?」
首を傾げつつ、「声が大きいよ」と注意する。
堅苦しい恰好が息苦しいのか、すでに着崩している襟元をさらに指で緩めつつカイルが小さく溜息を吐いた。
「大人っぽさだけじゃなくて色気もマシマシなんだよ」
そんな風に談笑をしていると、すぐ近くを見知った相手が通りかかった。
「やぁ、君も来てたんだね」
「?!」
何気なく声をかければギョッとした表情で振り向かれた。
バケモノでも見るように盛大に引き攣った顔をされて逆にこっちが吃驚する。
「なっ……どちら様でしょう?」
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