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しおりを挟むなんか同じようなことつい数時間前にもあった。
机から出した教科書を手に呆然と前を見る。
教室の俺の席の前にはたったいま教科書を返しに行こうとしていた相手が居た。それはいい。
シチュエーションも相手も違う、だけどさっき教室の扉の前に居たレイヴァンに対してと同じ事を思う。
なんでここに居んの?
「せ~んぱいっ!」
すちゃっ!と片手をあげて挨拶してくる奴でなく、その隣に立つ男を無言で見上げた。
「ちがっ!違うんだって!!俺はちゃんと止めたんだって!!おい、やめろフィガロっ。帰るぞっっ」
「はぁ~?放せし」
ブンブンと手と首を振って必死なアダムと、嫌がらせはやめたはずのフィガロだった。
「……で?」
クラスメイトたちの注目を浴びていることもあって、表情を取り繕いつつの簡潔な質問にアダムの肩がビクリと揺れた。
「マジで違うんだって!悪い!!」
必死の言い訳を繰り返すアダムはフィガロを連れて帰ろうと必死だ。
……なんかめっちゃ怯えられてね?
「まだなんか用かよ?ってか、アダムそいつと知り合いなのか?」
人の座席の前で騒ぐ奴らにカイルが席を立って寄ってきた。
フィガロを睨んでることからも俺のことを気にして来てくれた気持ちは嬉しい。
……が、目立つ奴らが集まってるからめっちゃ注目浴びてるんだが。
あとここで喧嘩はしないでくれよ?
「別っに~、嫌がらせしにきたわけじゃね~しぃ」
アダムの手を振り払い、カイルに不貞腐れたような表情を見せながらフィガロは唇を尖らせた。
「今日は謝りに来たんだっつの。デマ流したり、モノ隠したり色々いやがらせしてすみませんでした~~」
おちゃらけた雰囲気を残しつつも、そう言ってぺこりと頭を下げる姿に目を丸くする。
ぶっちゃけ、謝罪の態度ではないが……ひねくれたコイツは真面目に謝ったり礼を言ったりは苦手そうだし。
正直、謝りに来ただけでものすごく意外だ。
「もうあんなことは御免だよ」
そんな一言を返す俺にカイルは「もっと怒れよ」とブーブー言っているし、アダムは分かりやすく肩を落とした。
そんなやり取りを見聞きしていたクラスメイトが数人さらに寄ってきた。
「やっぱお前が犯人か」
「なんでそんなことしたんだよ?」
「え~なんとなく?ラファエル先輩に注意されたから仕返しみたいなー?」
「なんだよそれ。逆恨みじゃねぇか」
「だから俺が悪かったなって謝りに来たんすよ」
「もっと真面目に謝って反省しろ」
好き勝手にそんな会話が繰り広げられる。
調子のいいフィガロも気安く応じつつ、ひとしきりして周囲の人がはけた。
「ねーねー、先輩。明日ひま?一緒にメシ食わねぇ?」
突然の誘いに思わず「は?」と声が漏れた。
隣ではまた顔色を青くしたアダムが必死に止めようとしている。
「うっせぇな、アダム。嫌がらせはもうしねぇって」
アダムに顔をしかめたフィガロは俺へと向き直るとにんまりと笑みを浮かべた。
某チャシャ猫を思わせるような、楽し気な……いや愉し気ないや~な笑みだ。
「だって先輩、なんかめっちゃ面白いじゃん?純粋に興味あるし」
なんかすっごい不吉なお言葉を頂きました。
…………勘弁してくれ。
吊り上がった口元と、好奇心に光る瞳は控えめにいっても得物を見つけた猫のそれによく似ていた。
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