【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴

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沈黙。

口を結んだまま突っ立ってるフィガロをレイヴァンは非常にジトッとした目で睨み、アレンは「あ~あ」とでも言いそうな呆れた視線を向け、かくいう俺もわりと呆れが籠ったジト目ではある。

「ちゃんとその子に聞けば事情はすぐわかったんじゃ……」

「うん。そうなんだよ」

「ああ、だからさっきの「いい加減にしろよ、このヘタレ」なんですね。ラファエル先輩が怒るの珍しいけど、こんなことで嫌がらせ受けるとか堪んないですもんね」

「本当にね、まさかこんな理由とは思わなかったよ」

「ご愁傷様です」

会話は俺とアレンの。

「なにか言うことは?」

「…………」

睨みつけたまま低く問うレイヴァンに微妙に顔を逸らすフィガロ。
いつもならすぐに反撃に出る彼だが、流石さすがに気まずさは覚えているらしい。

よかった、これで開き直られたらこっちもキレる。

「だんまりですか」

蔑むような声音にフィガロの眉が動いた。
自分の分の悪さを理解しつつも、イラつかないかはまた別なんだろう。

「レイヴァン、いいよ」

肩に手を置きレイヴァンを止める。
そのまま視線だけをフィガロへと向けた。

「嫌がらせはもうしない、それは守ってくれるね?」

不貞腐れたような表情のままだが頷いたフィガロに納得した当事者と、不満全開のレイヴァンくん。

「良くないです!この男は謝罪もしていないんですよ?!」

「まぁそれはそうなんだけど。誠意のない謝罪なんて意味ないし」

どうどう、と両手をひろげてレイヴァンを宥める。

本当に感情豊かになったなー。

レイヴァンの正論はもっともだが、口先だけの謝罪をされても嬉しくなければ、ひねくれたフィガロ相手だと無理に揉めても根にもたれそうで逆に面倒くさい。

「嫌がらせに対しては君の言うことは至極正論だけど、彼の気持ちもわからないでもないし」

「その男の気持ちが……?
「やったことは置いといて、大切な相手のことで周りが見えなくなっちゃったところはね。……嫌がらせにまで走るなら少しは裏付けとって欲しかったけど」

レイヴァンの頭をポンポンしつつ、最後はちょっと本音が漏れた。

いやだってさぁ……ねぇ??

にっこり笑ったレイヴァンに対する表情とは一転、目を眇めてフィガロに顔を寄せた。
先程彼がやろうとしていたことだ。
さほど乱暴にではないけれど、襟元を掴んで引き寄せる。

「君のは勘違いだったけど、大切な相手にちょっかいかけられるのは腹が立つよね。私もだ。言っておくけど、次はないよ」

低く告げたあとでレイヴァンやアレンに聞こえないように声を潜めた。

「バラされて困ることがあるのは君の方だろう?」

「?!」

目を見張るフィガロから手を離す。

「大丈夫、君がこれ以上なにもしなければこっちだって手はださないから」

にっこりと笑えば腕を引かれた。
右腕をがっちりホールドしているのはレイヴァンだ。

「レイヴァン?」

「近いです」

ムスっと告げるレイヴァンに引っぱられるように一歩後ろへ。
どうやらフィガロに接近したのが気に食わなかったようだ。

相変わらず毛を逆立てた猫のようにシャー!!とフィガロを睨んでいる。

驚愕に目を見張っていたフィガロはといえば、レイヴァンの行動に我に返ったようで警戒するように数秒俺を見た後でチッと舌打ちを零し背を向けた。

「……嫌がらせはもうしない」

聞き取れるか否かという音量で小さく「悪かったな」と呟いたフィガロは早足で階段を降りていった。


「全く、手が焼けるな」

呟いた俺は背後の扉をコンッと小さく拳で叩いた。

「ラファエル?」

「ん、なんでもない。私たちも帰ろうか」

そうしてその場をあとにした。
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