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しおりを挟む現在、屋上へと続く扉の前にてフィガロ待ち。
基本的に屋上は一般生徒立ち入り禁止で扉に鍵がかかっているので、屋上前の階段付近には生徒の姿はない。
壁に背を持たれた俺と…………腕を組んでムンッと立つレイヴァンにアレンの姿以外は。
ええ、ついてきちゃいました。
「絶対行きます!」って言い張って聞かなかったんだよね。
アレンは興味本位もあるけど、レイヴァンのストッパー役でもある。
同じく来たがったカイルは放課後予定があったし、殿下らはご遠慮願った。
……本当はレイヴァンたちも連れてくる予定はなかったんだけどね。
しぶしぶ同行を許可したかわりに、基本的に話には口出し・手出し厳禁を言いつけた。
ほら、確実に口喧嘩になって話が進まなさそうだし。
なんなら手どころか攻撃魔法ぶっ放しそうだからさ。
「遅いですね」
すでに苛々しているレイヴァンだがまだ約束の10分前だ。
几帳面な彼と違って、フィガロは約束の時間どころか少し遅れてきそうだし、とくに答えず苦笑いを返すだけに留めた。
軽く瞳を閉じて意識を集中させる。
周囲に張り巡らせた魔法の探知に引っかかった気配に小さく唇を持ち上げる。
結果もそうだし、アレンはともかくとしてレイヴァンにも気づかれないとなると俺の探索魔法もそれなりなようだ。
ポケットに手を突っ込みながらフィガロが階段を上ってきたのは16時10分過ぎ。
「金魚のフンかよ」
「遅刻ですよ。時計も読めないとは嘆かわしい」
チラッとレイヴァンたちに視線をやって嘲笑うフィガロと、腕時計を見てやれやれと首を振るレイヴァン。
初っ端からケンカすんなよ!!
頭を押さえたい気分で「レイヴァン」と小さく名を呼んだ。
口は出さない約束をしたレイヴァンは、それでも自分だけ咎められたことにちょっぴり不満そうに唇を尖らせた。
そんな姿をせせら嗤うフィガロに彼の目がますます尖る。
「別に構わないよ。……それに本当は約束の時間前に来てたもんね?」
にっこりと首を傾げれば、フィガロの頬がヒクッと引き攣った。
そう、実際は時間より前にこの付近に姿を現していたのは知っている。
あえて遅れてのご登場ですもんねー。
悪ぶりたいお年頃ですか?
待ってたと思われるのは癪みたいな?
まぁ、別にどうでもいい。
ちなみに、あえて指摘してみたのは奴の警戒を誘うためだ。
行き過ぎた嫌がらせを防ぐためにも、ある程度あっちが手を出すのを躊躇ってくれたら有り難い。
「え?そうなんですか?」って驚くアレンも涼しい顔で流しとく。
当然ながら素で気配察知とか出来ないし、魔法でズルしてますけどあえてそんなことは口に出しませんよー。
ハッと鼻で笑ったレイヴァンにフィガロがブチ切れそうになったところで、一歩前に出た。
この二人が揃うと本当に話が進まない。
チラッと横目で振り返れば、唇を引き結んだレイヴァンの腕をアレンが捕獲して下がらせた。
ナイス、ストッパー。
フィガロの正面に立って彼に向き合う。
「で?そもそもなんだけど、嫌がらせの理由を聞いてもいいかい?」
単刀直入に一番の疑問を投げ掛けた。
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