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そしていま、リーゼロッテ様にこめつきバッタのように頭を下げられている。

「もっ、申し訳ございませんっ!!私ったらなんて失礼なことを……」

「い、いえ。お気になさらず」

「いいえ!知らなかったとはいえ、大変失礼を致しました。本当にすみません」

何度も頭を下げるリーゼロッテ様を必死で止める。

なんとか頭をあげてくれたリーゼロッテ様は両手で頬を押さえている。その顔は若干涙目だ。
ひどく恐縮しているその姿に、余計なことまで言わない方がよかったかなと、あちゃ~と内心頭を抱える。

俺にとってシエルは5歳の幼い子だが、彼女たちにとってはシエルは14歳、つまりは自分たちと1つしか変わらない相手だったのだ。
その相手とベッドやお風呂を共にしてると知れば、思う所があっても仕方がない。

どういった勘違いをされていたのかわかって、つい弁明しまったのだ。

「一緒に寝たのは雷がひどくて怯えるだろうと思ったからです。慣れ親しんだ自宅でもなく、あの日は両親が側にいないはじめての夜でしたし。そこにあの天候でしたからね。一人では寝られないと思ったんです。あとお風呂は……使用人は手がいっぱいでしたし、それにちょうどいい相手がいなかったんです」

従者らは兄さんたちについてたし、あの場にいたのは別荘の管理をしてくれている使用人らと年若いメイド。

「人見知りなあの子を面識の薄い使用人に任せるのも気がひけましたし、それに…………いくら中身は5歳とはいえ15歳の男の体を嫁入り前の女性に洗わせるのもどうかと思いまして」

疚しい気持ちなど皆無です!をアピールする俺にリーゼロッテ様はどんどん小さくなって「はい」「はいぃ」と頷いた。

ちなみにシエルが14歳と思われてたのは、前にレイヴァンに話したの話と混ざったらしい。

そんでもっていまに至る。

「ごめんなさいぃ~」と羞恥と罪悪感で縮こまるリーゼロッテ様には欠片も怒っていない。

正直、呼び出し喰らった時はビビったけど……。
怒っているとすれば、別の奴にだ。

「ちゃんとカイルには皆さまに説明するよう頼んだのですが……」

はぁ、と溜息を吐いた俺の言葉に、あっ!とリーゼロッテ様が声を漏らした。

「どうしました?」

「そういえば、カイル様がなにか言いかけてましたわ。ですがお店の看板が倒れて、様子を見に外に行かれて……」

「そのまま言い忘れたんですね」

もう一度溜息を吐いて、ガラス越しにカイルを睨んだ。

俺の様子に振り返ったリーゼロッテ様も、ほぼガラスに張り付くようなレイヴァンや王子の姿に吃驚びっくりしたあとで、ギンッ!!と尖らせた瞳でカイルを睨む。

いきなり睨まれたカイルが王子の拘束を片方だけ解き、自分で自分を指さしながら「俺?」と不思議そうな顔をしている。

そうだよ、全部お前の所為せいせいだよ!!この脳筋!!

レイヴァンたちに妙な誤解をされたままも嫌なのでことの経緯は説明するとして……。

この後、リーゼロッテ様やレイヴァンから怒られるだろうカイルを庇うつもりは当然ない。

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