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しおりを挟む間近で見つめる彼の顔は唇の両端が幾分下がり、そして先程までとは違い眦と眉もやや下がっていた。叱られる前の子供のような表情だった。
「呆れましたか?」
意味を掴めずパチパチと瞬きしながらも、いやと首を振る。
それが何に対する問いかはわからずとも、彼が言う感情は少しも沸いていなかったから。
「言ったでしょう?僕は執着が強いみたいです。貴方のことに関しては」
続けられた言葉に目を見開く。
わざとぶっきらぼうに、開き直りのように告げられたその発言と表情は見事なクリーンヒットを決めて俺の心臓を揺さぶった。
むぅっと突き出された唇が可愛すぎて美味しそうなんだけど、どうしよう?
パクリとしちゃってもいいのかな?
でもさっきまでご機嫌ナナメだったしな。
ここで欲望のままにガッツいて本格的にご機嫌を損ねるのもいやだ。折角のデートだし。
とりあえず顔面がちょっと熱いので、隠すためにも彼をぎゅっと抱き寄せた。
これくらいなら許されるんじゃなかろうか。
心中の動揺やら欲望やら色んな気持ちを吐き出すように、はぁ、と一つ溜息を吐けば腕の中の身体がビクリと震えた。
「やっぱり人前では今まで通りにしよう?」
それはあの日の話し合いでそう決めたことだ。
積極的に隠す必要はないし、王子たちや知り合いには告げればいい。
だけど敢えて人前でイチャついて同性愛者認識される必要もないからね。
偏見や弊害もさることながら、同性がイケると思わるのも大変宜しくない。
なにせゲームキャラでもあるレイヴァンは超絶美形。
男がイケるとなれば今後女性だけでなく男性にも狙われるのは目に見えている。
…………レイヴァンには何故か俺の方の心配をされたが。
否定したら「あれだけ面倒そうなのに目をつけられててそれを言いますか」と若干キレられた。
返す言葉もなかった。
俺モブなのに……バグって怖い……。
「ラファ……」
「君のこんな表情を他の誰にも見せたくない…………こんなことを言ったら、君こそ私に呆れるかい?」
気持ちを落ち着けるように一つ息を吐いて、こつりと額を合わせる。
掠れた声音は弱々しくて、情けない響きこの上ない。
だけど懇願すら帯びた言葉は心からの本心だった。
あんな可愛らしい表情も言葉も、他の誰にも見せたくないし聞かせたくない。
こんな彼の姿を知るのは自分だけでいい。
そう心から思う俺がいる。
息を飲む音が聞こえた。
うぉっ!!
なんかめっちゃオおデコ熱いけどレイヴァン熱ない?大丈夫??
くっつけた額からただならぬ熱が伝わり、慌てて体調を確認するも大丈夫だと答えられた。だけど若干フラフラしてる気がするし、口元を押さえているが本当に大丈夫だろうか?
「……た、確かにこれはダメです。危険すぎる……人前では封印しないとマズイですね……」
フラフラしたレイヴァンがなんかしきりにブツブツ言ってたけどなんだろう?
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