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しおりを挟むシエルが突然なにかを思い出したように「あっ」と声を上げた。
「リーゼロッテ様は昨日、ラインハルト様と寝たんですか?」
「なっ……?!」
ブッ……押し殺した呻きが漏れ、動揺を抑えつつ手にしたカップをとりあえず置いた。
あっぶねー!!
あと一瞬遅くてカップに口をつけた後なら大惨事だった。
……被弾したリーゼロッテ様は真っ赤だし、王子もわりと動揺してるからある意味すでに大惨事だけど。
「シエル」
咎めるように名前を呼ぶも、呼ばれた当の本人はキョトン顔だ。
「な、なぜいきなり……そんな……」
「だって昨日の夜また雷すごかったです。僕はエルくんと一緒に寝ました。リーゼロッテ様はこわくなかったですか?」
真っ赤な頬を隠すように両手で押さえつつ、めっちゃワタワタしてるリーゼロッテ様の質問にもサラッと答えるシエル。
うん、シエルに他意がないことはわかっている。
問題は大アリだけど……。
「シエル。リーゼロッテ様は淑女なんだよ」
身内でもない異性と夜を過ごすのは大問題なこと、そんな発言をしてはいけないことをフワッと告げれば首を傾げつつ「そうなの?」と納得してくれた。
ちゃんとしたお説教と説明は爆弾発言に蒼白な顔のメイドにぶん投げよう。
「ほら、食べ終わったなら支度をしておいで」
引っ張られるように連れて行かれるシエルを見送って王子らに謝罪を告げる。
あー、マジで焦った。
部屋を移り、テーブルに広げた地図を指さす。
橋が復旧する間、周囲を散策してみることにしたそうなので簡易地図を前に人気のスポットやお店なんかをざっと説明しているところだ。
「この後ラファエルはどうする予定なんですか?」
「ん?」
押し黙ったままだったレイヴァンの質問に地図から顔を上げる。
「彼を送ったあと戻ってくるとおっしゃっていたでしょう?その……一緒に行かなくていいのですか?」
歯切れの悪いその言葉にああ、と小さく笑う。
「そのことなら大丈夫だよ。君たちのことがなくても別行動の予定だったから。家族水入らずの邪魔をするつもりもないしね、私は元々一足先に領地に帰るつもりだったんだ」
この辺りは観光名所も多い。
ここにはこの別荘もあるし、道すがらにはエドさんの住まう街も通る。
なので兄さんたちの仕事の訪問がてら前後に私的な旅行をくっつけたわけだけど、元々俺はシエルのお守り要員として同行しただけなので兄さんの仕事が終われば先に帰るつもりだった。
一緒にとは誘われたものの、せっかくの家族旅行についてくのも微妙だし。
「じゃあラファエルも一緒に来ませんか?」
突然の提案に反応出来ずにいる間にも、カイルたちからも賛成の声が漏れた。
「い、いや、そういうわけには……」
「何故ですか?ご予定があるわけではないのでしょう?」
「いーじゃん!行こうぜラファエル!」
「急に人数が増えたら色々とご迷惑だし、第一何の準備もしていないし……」
「お客様が一人増えようと問題はありません。そもそもご迷惑をお掛けしたというのならこちらの方です。お礼も兼ねてお持て成ししたいですし、入用な物はすべて我が侯爵家で準備させて頂きます」
戸惑い気味の俺の言葉なぞレイヴァンにことごとく粉砕される。
元々お誘いを受けていたということもあり他のメンバーも乗り気だし、助けを求めたマルクさんたちにも「構いませんよ」と了承されてしまった。
くっ……味方がいない。
そんなこんなで急遽予定変更、レイヴァンの別荘に招待されることになりました。
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