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しおりを挟むいつもは密やかな空間には声と音が響く。
騒がしい、とまではいかない。だけど常のひっそりとした静寂とは異なる筆記やノートを捲る音、そこかしこで交わされる話し声。
「あの先生ならこの辺を抑えておいた方がいいですね」
教科書を指さしながら告げればその部分を覗きこんではノートに書き込む。
机の上には広げられたノートや教科書に筆記用具。
そして俺が一年の時の過去問。
学年が違うこともあって、登下校や移動教室でバッタリ会う以外は基本的に顔を合わせるのは時間の長い昼休みが多い。レイヴァンなんかは偶に普通の休み時間にも顔出すけど……。
昼休みの食堂以外でこうして校内で顔を突き合わせるのは珍しい。
放課後の図書室。
夏休み前の期末テストに向け、いつもは閑散としている図書室の机は7割ほど生徒たちで埋まっていた。
わりと物持ちはいい俺の一年の時のノートや過去問をレイヴァンたちがせっせっと書き写す。
「すごく助かります。ノートもとても綺麗でわかりやすいです」
「お役に立てて何より。先生もちょうど同じで良かったよ。あ、この記述問題も出ると思いますよ。記述は配点が高いですが時間かかるので時間配分に注意が必要ですね」
「どこですの?」「記述問題か……」と身を乗り出してレイヴァンの手元のノートを覗きこむ王子やリーゼロッテ様。
そして順調に勉強を進めていく彼らの横で……。
「ラファエル~~」
「ラファエル先輩っ~~」
たーすーけーてーとばかりに情けない声をあげる似たもの兄弟。
カイルとアレンの方へと向き直り、止まっているところを教える。
「アレンはどの程度を目指しているんだい?」
「出来るだけ追試回避で!」
問い掛けには予想通りの答えが返ってきた。
正にカイルがその典型で、高得点などハナから狙っていない。
追試……もっというなら休みを潰される補習さえ回避できればいいというスタイルだ。
基本的には本テストよりも追試の方が簡単で点数を取りやすい。
なので苦手な教科で、尚且つレポート提出などのペナルティーがない教科に限っては潔く捨て、他の教科を優先させたうえで「やっぱ追試の方が楽だよな~」とうそぶく奴だ。
全教科ムリして落とすより、ある意味要領のいい奴なのかもしれない。
んでもって、弟のアレンも同じタイプか。
まぁ、ノートを見る限りカイルよりはだいぶ授業を聞いてはいそうだ。アイツわりと寝てるからな。
「赤点だけ回避できればいいなら、こっちは捨てていいんじゃないかな。この辺は覚えやすいし、選択問題が多い筈だから点を取りやすいと思うよ」
「ラファエル先輩マジ神っす!!」
「おうっ!拝め、拝め!!」
いや、「ありがたや~」とか拝まんでいいから真面目に勉強しろ、この脳筋兄弟!
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