上 下
48 / 131

48

しおりを挟む

いつもは密やかな空間には声と音が響く。
騒がしい、とまではいかない。だけど常のひっそりとした静寂とは異なる筆記やノートを捲る音、そこかしこで交わされる話し声。

「あの先生ならこの辺を抑えておいた方がいいですね」

教科書を指さしながら告げればその部分を覗きこんではノートに書き込む。
机の上には広げられたノートや教科書に筆記用具。
そして俺が一年の時の過去問。

学年が違うこともあって、登下校や移動教室でバッタリ会う以外は基本的に顔を合わせるのは時間の長い昼休みが多い。レイヴァンなんかは偶に普通の休み時間にも顔出すけど……。

昼休みの食堂以外でこうして校内で顔を突き合わせるのは珍しい。

放課後の図書室。
夏休み前の期末テストに向け、いつもは閑散としている図書室の机は7割ほど生徒たちで埋まっていた。

わりと物持ちはいい俺の一年の時のノートや過去問をレイヴァンたちがせっせっと書き写す。

「すごく助かります。ノートもとても綺麗でわかりやすいです」

「お役に立てて何より。先生もちょうど同じで良かったよ。あ、この記述問題も出ると思いますよ。記述は配点が高いですが時間かかるので時間配分に注意が必要ですね」

「どこですの?」「記述問題か……」と身を乗り出してレイヴァンの手元のノートを覗きこむ王子やリーゼロッテ様。

そして順調に勉強を進めていく彼らの横で……。

「ラファエル~~」

「ラファエル先輩っ~~」

たーすーけーてーとばかりに情けない声をあげる似たもの兄弟。

カイルとアレンの方へと向き直り、止まっているところを教える。

「アレンはどの程度を目指しているんだい?」

「出来るだけ追試回避で!」

問い掛けには予想通りの答えが返ってきた。

正にカイルがその典型で、高得点などハナから狙っていない。

追試……もっというなら休みを潰される補習さえ回避できればいいというスタイルだ。

基本的には本テストよりも追試の方が簡単で点数を取りやすい。
なので苦手な教科で、尚且つレポート提出などのペナルティーがない教科に限っては潔く捨て、他の教科を優先させたうえで「やっぱ追試の方が楽だよな~」とうそぶく奴だ。

全教科ムリして落とすより、ある意味要領のいい奴なのかもしれない。

んでもって、弟のアレンも同じタイプか。
まぁ、ノートを見る限りカイルよりはだいぶ授業を聞いてはいそうだ。アイツわりと寝てるからな。

「赤点だけ回避できればいいなら、こっちは捨てていいんじゃないかな。この辺は覚えやすいし、選択問題が多い筈だから点を取りやすいと思うよ」

「ラファエル先輩マジ神っす!!」

「おうっ!おがめ、おがめ!!」

いや、「ありがたや~」とかおがまんでいいから真面目に勉強しろ、この脳筋兄弟!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【父親視点】悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!

匿名希望ショタ
BL
悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!の父親視点です。 本編を読んでない方はそちらをご覧になってからの方より楽しめるようになっています。

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️ 第12回BL小説大賞に参加中! よろしくお願いします🙇‍♀️

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

処理中です...