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46 (※)カイル
しおりを挟むうっわっっ!!レイヴァン様めっちゃ不機嫌!!
もはや冷気を醸し出しているレイヴァン様の姿に苦笑いを浮かべた。
折角の機会だからと、ここぞとばかりに手合わせをして貰って今はほんの小休憩。
元のリンク周りの観覧席に腰かけるとめちゃくちゃ不機嫌なレイヴァン様が視界に入った。
「大人気だな」
同じく座っていた殿下がボソリと呟いた。
俺と同じ視線の先には、レイヴァン様と、数人に囲まれるラファエルの姿。
大人気なラファエルこそがレイヴァン様の不機嫌な理由だ。
要はお気に入りを取られて拗ねている。
「もっとこう、あんま感情動かない方かと思ってました」
「だろうな。長年一緒にいるが俺も吃驚だ」
今も周りを牽制するようにラファエルに張り付き隣をキープしながら睨みを効かせている。
ラファエルは無防備っつうか、ちょっと危ういとこあるからわからんでもない。
囲まれているラファエルは絶賛勧誘されまくってる。
ゼリファン様に一撃入れたあの闘いの後もラファエルは数試合行った。本人あまり乗り気でなさそうだったが。
「まさか領地に戻るつもりとはなぁ……」
空を仰ぐ。雲一つない青空だ。
三回目の手合わせ、一緒に闘った相手に「入隊したら俺の隊に入れ!」とスカウトされたラファエルはこともなげに断った。
「いえ、そもそも私はカイルと違って入隊自体しませんし……」
その言葉に騒然としたのは俺だけじゃない。
確かにラファエルから入隊の話を聞いたことは無かった。
でもてっきりそうだとばかり思い込んでいた。
その理由は主に二つ。
戦闘センスや類まれな指揮、魔獣や武器にも詳しいしラファエルはクラウ・ソラスに相応しいと思っていたこと。
そしてもう一つは殿下らといてもまるで仕事の話を振らないからだ。
ラファエルなら頭も優秀だし城勤めもありえるだろうが、その気があるなら話題の一つも振るだろうと思っていたのだ。
だけどまさか……入隊も城勤めもする気がなかったなんて……。
ちなみにそう思ってたのは俺だけじゃない。
殿下やレイヴァン様もそうだし、アレンなんて思わず「ご兄弟と仲、悪いんですか……?」って聞いたぐらいだ。
だがもちろん、兄貴を蹴落として当主の座を狙っているなんてこともなく「至って良好だよ」と苦笑いされていた。
「入隊しないならしないで側近にスカウトしたんだがな。なんなら兄上に紹介してもいい」
顎に手をあて真剣に考えこむ殿下。
兄上……って第二殿下か王太子殿下っすか。
殿下の側近ってかなりスゲーよな?
華々しいクラウ・ソラスの入隊も、側近候補も蹴って領地でのびのびって……。
そんなこんなで絶賛スカウトされ中なわけだ。
俺も実際に闘ってみたからわかる。
ラファエルの指揮で闘うのはめっちゃやりやすい。
的確な上にサポートが抜群で攻撃に集中できるし、なんというかノンストレスで闘えるのだ。
しかもクラウ・ソラスって何気に貴族との絡みもあるっちゃあるし。
近衛と合同で王族なんかの外出につくことや、式典なんかに招かれることもある。
んでもって、わりとそーいうの苦手な人間が多い。
根っからの戦闘集団だし。
貴族出身でも俺やアレンみたいなタイプが多いし、そんな中でラファエルみたいなタイプは貴重だ。
うん、と一つ頷いて伸びをしながら立ち上がった。
一緒にクラウ・ソラス入ろうぜ!って勧誘しようっと。
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