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しおりを挟むゲームでいつもあなたたちで闘ってました。
……とか言えるわけねぇ。
そもそもゲームとか言ったって通じねぇし。
この世界のゲームっていったらトランプとかチェスとかだしな。
「ありません」と曖昧に笑って誤魔化す。
「なぁ、最後のアレ何?」
問い掛けてきたのは鮮やかな赤毛の男。
模擬試合でゼリファンと闘っていた双剣のスネークだ。
「反射魔法です。ゼリファン隊長ならエアリス様の攻撃を薙ぎ払い、さらには一撃を放ってくると思っていたので」
反射魔法とは言葉のまんま、反射、つまりは跳ね返す。
そもそも面倒な敵や攻撃を薙ぎ払うゼリファンにあの剣を勧めたのは俺だ。
無数に放たれるエアリスの暗器を全て弾いたり躱したりするよりも彼ならそうすると思った。一対一でないならなおさらに。
なので俺の策は反射魔法を展開準備しておき、薙ぎ払われたエアリスの攻撃、さらにはゼリファン自身の一撃までもをゼリファンへと向けることだった。
背後からのグレゴリーの攻撃と、エアリスの追撃のおまけつき。
なのにそれらの全てを回避とかマジでなんなの、ゼリファン。
「そもそも私がお相手するのが間違いです。スネーク様なら一撃、いえ、二撃を食らわせグレゴリー様の攻撃も受けさせてみせたでしょうに」
もし俺の代わりが瞬発力のあるスネークなら、傷つくことも恐れずゼリファンに突っ込み痛手を与え、肉を切らせて……を地でいく捨て身で彼の動きを封じてでもグレゴリーの攻撃を食らわせた筈だ。
「……ハッ、ハハッッ!」
目を見張ったスネークが天を仰いで笑いだした。
「俺の動きも見切ってんの?マジ面白れぇじゃん。なぁ、オマエ名前は?なんつったっけ?」
ニィィと三日月のように唇を吊り上げ、覗きこんでくるスネークに思わず身を竦ませる。
怖っわ!!
え、絶対名前教えたくないんだけど。
スネーク、やたらと癖があって愉快犯的な人種だから普通に関わりたくない。
助けてー!とばかりにゼリファンを見れば、SOSを感じとったのかじりじり近寄ってくるスネークを止めてくれた。
「絡むな。興味を持ったからってすぐ手を出すな」
「ふぅん?」と呟き、面白そうにペロリと唇を舐めるスネーク。
その舌が毒々しいぐらい赤い。
「隊長こそ、ずいぶんお気にいりみたいじゃん。余計に興味沸いちゃった」
そう言って流し目を送ってくるスネークに心臓が嫌な感じに音を立てた。
気分は正しく、蛇に睨まれた蛙だ。
「なぁ、アンタってノンケ?」
「……っ」
吃驚しすぎて喉がなった。
待って、興味ってそういう意味で??
思わず目を白黒させる俺に伸ばされた手をゼリファンが弾く。
エアリスがボソッと「気をつけろよ」と忠告をくれ、グレゴリーたちがウンウンと頷く中、俺は完全についていけない。
いやいや冗談だろう?
恐る恐るスネークを見ればニヤリと笑われた。
美形。まごうとこなく美形だ。
俺なんかに手を出さなくても選り取り見取りだろうに、そう否定をしたい。
否定したいのだが、この男は興味を持ったら気まぐれで手を出してきそうで嫌だ。
俺がゼリファンのお気に入りってのは完全に勘違い&軽口だろうけど。
まさかソッチの意味で狙われることがあるとは予想もしていなかった俺が背筋を冷やしていると、腕を掴まれ手を引かれた。
スタスタと連れて行かれたのは元の場所。
救い出してくれた救世主・レイヴァンにお礼を言いつつ疲れた俺は腰を降ろす。
マジで疲れた。
特に最後の精神的ダメージがすごい。
立ったままのレイヴァンは何やら不機嫌全開にリンクの方を睨みつけていた。
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