上 下
42 / 121

42

しおりを挟む

ある日、教室に着くなりカイルに捕まった。

「おはよう」

「はよっ!やっと来た来た。聞けよラファエル」

ガシッと首に手をまわしつつ、興奮気味に席へと連れて行くカイル。
どうした?やたら上機嫌だな、おい。

「実はおまえに話しがあってさ」

「……課題のことじゃなくてかい?」

首を傾げたのはカイルのテンションが不思議だったからだ。

てっきり朝っぱらから待ちわびてたのは「課題を写させてくれ!」って頼みだと思ってた。
パンッっと両手を合わせて拝みながら「一生のお願い!」をされるのはわりとよくある。
お前の一生、何回あるんだ。

「課題?」

は?とばかりに聞き返してくるカイル。

うん。あのテンションは課題じゃねぇよな。
上機嫌な理由ないし。

「今日の一限、君は当たるだろう?」

数学の教師は授業終わりに毎回五名程の生徒を指名して課題を出し、次の授業で当てる。
カイルはバッチシ前回当てられてた筈だ。

俺の指摘にカイルの顔色がサァァと青くなった。

おお、リトマス試験紙みたいだ。

見事な顔色の変化に関心しつつも鞄を開き、荷物を机へと移動させる。
椅子を引いて席に腰かけたところでパンッ!!と大きな音がなった。

「ラファエル様っ!!課題、写させて下さいっ!!一生のお願いです!!」

そしてまたもや発動した一生のお願い。

拝み倒す勢いのカイルに溜息を吐きながら、ノートを取り出す。

「俺当てられたのどこっ?!」

いや、それぐらい覚えとけよ……。

そして必死な勢いでノートを書き写し丸暗記に勤しむカイル。
そんなこんなの内にチャイムが鳴り、担任が訪れた。

そーいや結局カイルがしようとしてた話って何なんだろ?

その答えを知ったのは一限が終わった後だった。

「はぁー、マジ危なかった。持つべきものは優秀な友人だぜ」

かいてもいない汗を腕で拭いながらやり切った感満載の目の前の男。

ルックスと戦闘力は抜群だけど意外と残念だなコイツ……そんな失礼なことを思ってる俺に大袈裟おおげさなお礼を繰り返しながら、そういえばと思い出したらしい当初の話題に俺は思わず「は?」と声を上げた。

「だっから、クラウ・ソラスの見学だよ見学!」

興奮しながらもデカい体を縮めて小声なのは周囲を気にしてのことだろう。地声わりとデカいしな。

「見学って……そんなの簡単にできるものなのかい?」

「そこはツテで!」

ドヤ顔だ。

まぁ、卒業後には入隊確実だろうといわれてるカイルが見学できるのはまだいい。
なんで俺も誘われてんの?完璧部外者ですけど。

「数人友人も誘ってOKな許可とってあるし。むしろあの時のメンバー連れて来いって言われた。ってことで一緒に行こうぜ」

「……」

思わず言葉につまったのは仕方ない。

モブな俺がなんで……?という疑問はあるものの、ぶっちゃけ興味あるっちゃある。

だって、この前の魔獣狩りだってそれ以前の年だってクラウ・ソラスのメンバーが派遣されてるとはいえ全員くるわけじゃない。
実物見たことのないゲームのキャラたちが居るんだぞ?
ファンとして心が惹かれないわけないじゃないか。

そうして誘惑に負けた俺だった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。

無気力令息は安らかに眠りたい

餅粉
BL
銃に打たれ死んだはずだった私は目を開けると 『シエル・シャーウッド,君との婚約を破棄する』 シエル・シャーウッドになっていた。 どうやら私は公爵家の醜い子らしい…。 バース性?なんだそれ?安眠できるのか? そう,私はただ誰にも邪魔されず安らかに眠りたいだけ………。 前半オメガバーズ要素薄めかもです。

不幸体質っすけど役に立って、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

BL漫画の世界に転生しちゃったらお邪魔虫役でした

かゆ
BL
授業中ぼーっとしていた時に、急に今いる世界が前世で弟がハマっていたBL漫画の世界であることに気付いてしまった! BLなんて嫌だぁぁ! ...まぁでも、必要以上に主人公達と関わらなければ大丈夫かな 「ボソッ...こいつは要らないのに....」 えぇ?! 主人公くん、なんでそんなに俺を嫌うの?! ----------------- *R18っぽいR18要素は多分ないです! 忙しくて更新がなかなかできませんが、構想はあるので完結させたいと思っております。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

俺はゲームのモブなはずだが?

レラン
BL
 前世で、妹に無理やりプレーさせられたBLゲームに、モブとして転生してしまった男。  《海藤 魔羅》(かいとう まら)  モブだから、ゲームに干渉するつもりがなかったのに、まさかの従兄弟がゲームの主人公!?  ふざけんな!!俺はBLには興味が無いんだよ!!

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

処理中です...