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しおりを挟むある日、教室に着くなりカイルに捕まった。
「おはよう」
「はよっ!やっと来た来た。聞けよラファエル」
ガシッと首に手をまわしつつ、興奮気味に席へと連れて行くカイル。
どうした?やたら上機嫌だな、おい。
「実はおまえに話しがあってさ」
「……課題のことじゃなくてかい?」
首を傾げたのはカイルのテンションが不思議だったからだ。
てっきり朝っぱらから待ちわびてたのは「課題を写させてくれ!」って頼みだと思ってた。
パンッっと両手を合わせて拝みながら「一生のお願い!」をされるのはわりとよくある。
お前の一生、何回あるんだ。
「課題?」
は?とばかりに聞き返してくるカイル。
うん。あのテンションは課題じゃねぇよな。
上機嫌な理由ないし。
「今日の一限、君は当たるだろう?」
数学の教師は授業終わりに毎回五名程の生徒を指名して課題を出し、次の授業で当てる。
カイルはバッチシ前回当てられてた筈だ。
俺の指摘にカイルの顔色がサァァと青くなった。
おお、リトマス試験紙みたいだ。
見事な顔色の変化に関心しつつも鞄を開き、荷物を机へと移動させる。
椅子を引いて席に腰かけたところでパンッ!!と大きな音がなった。
「ラファエル様っ!!課題、写させて下さいっ!!一生のお願いです!!」
そしてまたもや発動した一生のお願い。
拝み倒す勢いのカイルに溜息を吐きながら、ノートを取り出す。
「俺当てられたのどこっ?!」
いや、それぐらい覚えとけよ……。
そして必死な勢いでノートを書き写し丸暗記に勤しむカイル。
そんなこんなの内にチャイムが鳴り、担任が訪れた。
そーいや結局カイルがしようとしてた話って何なんだろ?
その答えを知ったのは一限が終わった後だった。
「はぁー、マジ危なかった。持つべきものは優秀な友人だぜ」
かいてもいない汗を腕で拭いながらやり切った感満載の目の前の男。
ルックスと戦闘力は抜群だけど意外と残念だなコイツ……そんな失礼なことを思ってる俺に大袈裟なお礼を繰り返しながら、そういえばと思い出したらしい当初の話題に俺は思わず「は?」と声を上げた。
「だっから、クラウ・ソラスの見学だよ見学!」
興奮しながらもデカい体を縮めて小声なのは周囲を気にしてのことだろう。地声わりとデカいしな。
「見学って……そんなの簡単にできるものなのかい?」
「そこはツテで!」
ドヤ顔だ。
まぁ、卒業後には入隊確実だろうといわれてるカイルが見学できるのはまだいい。
なんで俺も誘われてんの?完璧部外者ですけど。
「数人友人も誘ってOKな許可とってあるし。むしろあの時のメンバー連れて来いって言われた。ってことで一緒に行こうぜ」
「……」
思わず言葉につまったのは仕方ない。
モブな俺がなんで……?という疑問はあるものの、ぶっちゃけ興味あるっちゃある。
だって、この前の魔獣狩りだってそれ以前の年だってクラウ・ソラスのメンバーが派遣されてるとはいえ全員くるわけじゃない。
実物見たことのないゲームのキャラたちが居るんだぞ?
ファンとして心が惹かれないわけないじゃないか。
そうして誘惑に負けた俺だった。
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