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しおりを挟む迷いに迷ったすえ、結局俺は口を開いた。
ゼリファンにあの剣を使ってほしい!その欲望に負けたのだ。
いやでも、ゼリファンだってあの剣を使えばさらにその力がUPするしWIN-WINな筈。そんな言い訳をつけて親方を見やる。
「親方、さっきのアレを出して頂けませんか?」
俺の言葉に作業台で刃を研いでいた親方が「あん?」と肩眉をあげた。
「アレって坊主、奴さんの武器とは随分形も違ぇだろう」
そう言いつつも腰を上げた親方は工房の奥のスペースへと取りにいってくれた。
「ほらよ」
「バスタードソードか」
ゼリファンの呟き通り、親方が持ってきた剣はバスタードソード。
片手剣としても両手剣としても使えるそれは、某有名RPGゲームの主人公が背負っていたのでお馴染の大剣だ。
現在ゼリファンが腰に下げている剣もそれなりの長さがあるものの、その大きさを比べれば桁違いにデカい。
片手で掴んだそれを軽々と振ってみせる姿に内心俺は大はしゃぎ。
これだよこれっ!!
できれば隊服で見たかった!!
握った感触が手に馴染んだのか「ほぉ」と小さく零したゼリファンだが、一振りしたあとでやはりというように剣を降ろす。
斬る、突く、打撃にさえ使えるバスタードソード。
だが鎧すら叩き壊せるその威力を生み出すのは大きさと重さだ。
そして魔獣の大群の中を走り抜けながら闘うゼリファンにスピードを殺すその重さは致命的。
「これを付けてみてください」
俺が差し出したのは紅玉が嵌った装飾品。
「おう!」合点がいったように親方が手を打った。
そうでしょう?そうでしょう?
これを使えば解決だろう?!
その装飾品は俺が特注で作って貰った魔道具だ。
よくある魔法特性なんかを武器に付加できるアイテム。
ゲームではゼリファンがバスタードソード使う時に軽量化を付加するためにつけてたアイテム……をマネて俺が発注したものだ。
軽量化といっても持ち主にとってだけで、敵への攻撃は本来の重量のままにダメージを喰らわせられる優れもの。
他の武器にも使えそうだから欲しかったけど、見つかんなかったんで作って貰った。
「だからお前武器使ってねぇじゃねぇか!!」って?
うっせぇ!!
ロマンなんだよ!!
「これは……」
「感じる重さは今の剣と同じぐらいだと思います」
そしてどこのセールスマンだよ?ってな具合にセールスポイントを語る俺。
「店主、試し斬りを出来るか」
「おうよ!!」
ゼリファンの申し出に喜々として応じる親方。
コレの威力が見れるのが楽しみなんだね!
わかるよ、親方!!
そしてその威力は……圧巻だった。
まぁ、前の剣でもマーナガルムを一刀出来る実力の持ち主だ。
お気に召したようでゼリファンは即刻購入を決意。
「あー、でも……」
渋る親方に「大丈夫です」と頷く。
あの魔道具、俺のだしね。
でも大丈夫。
別にすぐに使う予定あったわけじゃないしお譲りしますとも!!
最強隊長様に最強武器が装備された。
チャララチャタラーン!!
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