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「それにしても、随分と懐いたものだな」

スープを優雅にすくいながらの王子の言葉に、内心しみじみ頷いた。

一方、言われた本人のレイヴァンはといえば。

ほんの一瞬だけ不満そうにムスッとしたものの、何も聞いてませんと言わんばかりの澄まし顔でこちらも優雅に食事を続けていた。

「レイヴァンがこんなに懐くとか珍しいですもんね」

「仲が宜しいのは素晴らしいですわ」

あっけらかんと告げるアレンと、なにやら深く頷くリーゼロッテ様。

今日はカイルは他の友人と一緒なのでいない。
そして俺はといえば。

あれからちょくちょく彼らと食事をする機会が増えた。
なんか登校時とか休み時間に遭遇したら誘われるんだよね。あとはカイルに問答無用で捕まったり。

可笑おかしい。
俺ってモブだよね?

清く正しい、正真正銘のモブ人生を謳歌おうかしていた筈なのに……。

別に彼ら自身と付き合うのが嫌とかいうわけではない。
ただ身分の差とかいろんなことが気になるだけでさ……。

「図書室に寄りたいので」と食事を終え、一足先に席を立った俺。
そして「僕も行きます」とついてきたレイヴァン。

……うん。マジで懐かれたわ。

「ラファエル?」

こてん、と首を傾げ見上げてくるレイヴァンに何でもないと笑う。

エバンス先輩呼びはラファエル先輩に、そしていつしかラファエルに。

かくいう俺も彼のことはレイヴァン呼びだ。
これは俺の意志ってより半強制だけど……。

家名で呼んだら「……レイヴァンでいいです。あの時はそう呼んだじゃないですか」って言われちゃって。
なまじ一度やらかしてるからそれ言われたら反論も出来ず。

「聞いて下さい。この前、ラインハルトが……」

眉を寄せながら愚痴グチを零すレイヴァンの表情はそれでも王子に対する親しみが溢れている。

「レイヴァンは意外にくるくる表情が変わるね」

思わずそんな言葉が漏れた。
愚痴グチを漏らしていた口がピタリと止まり、碧いが丸くなる。
そんな表情もこの頃は目にすることが増えた。

あまり表情筋が仕事してない系だと思っていた彼は、意外と子どもっぽくて表情豊かだ。

「……呆れてますか?」

「どうして?可愛らしいと思っただけだよ?それと、本当に仲がいいんだなって微笑ましく思ってた」

足を止め、拗ねたように見上げてくるレイヴァンの髪をポンポンと軽く撫でる。

「こういうこと、誰にでもするんですか?」

「こういうこと?」

恨めしそうに上目づかいで見上げてくるレイヴァンの言葉に一瞬考え、ああ、と視線の先の手を外した。
そして小さく苦く笑う。

「ああ、ごめん。つい……」

「つい?」

「親戚の年下の子たちにたまに、ね。その癖かも知れない。気にさわったかい?」

「別に……」と返しつつ、再び歩き出したレイヴァンはそっけない。

やっぱり気にさわったのかもしれない。

それから親戚の話題を聞いてくる彼には「君たちの一つ年下のいとこがいるんだ。年の割に甘えん坊でね」と誤魔化ごまかした。

まさか5歳のシエルに対する癖が出たって言うわけにもいかないしな……。
幼児と同じ扱いしたなんてバレたら絶対拗ねる。

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