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しおりを挟むどこか呆然とした様子で俺を見上げたままのレイヴァンに「どうしました?」と首を傾げる。
最高級サファイアのような碧い瞳を彩るプラチナブロンドの睫毛をパチパチと揺らしたレイヴァンは小さく「なれるでしょうか……?そんな風に」と呟いた。
「なれますよ。貴方が望み、そう目指すのであれば」
「……はい」
固く拳を握り、自身に言い聞かすようにレイヴァンは頷いた。
さて、せっかく彼にお似合いの凛々しい表情になったのもの束の間。
改めて礼儀正しく礼を告げてくれたレイヴァンは形のいい眉をへにょりと下げて窺うように俺を見た。
「あの、お怪我の方は本当にもう大丈夫なんですよね……?」
「ええ、すっかり。傷痕もありません。なんなら確認してみます?」
実は無理をしているんじゃないかと気遣う彼。
戯れのようにクイッと襟元に指をかけ広げるそぶりを見せれば、白皙の目元が薄っすらと赤く染まった。
やっばっ!!
セクハラでしたかっ?!
やたらと心配するレイヴァンに「大丈夫ですよ」アピールの軽い気持ちだったのだが……。
同性愛に寛容なこの世界ではアウトだったのかもしんない。
そう、この世界わりと同性カップルが多いのだ。
平民ならともかく、高位貴族同士の子は魔力量が高いのにそれでいいのか貴族!とか思わんでもないのだが一定数存在するんだ、これが。
まぁ、優秀な養子をとるという手もあるし。
冷めた愛のない仮面夫婦よりも愛ある同性カップルのご家庭が領地経営面的に上手くいってるって実例も結構あるから、別にいいのか。
レイヴァンはイケメンだけど綺麗だしソッチ系に言い寄られることもありそう。
スマン、セクハラする気は微塵もなかったんだ!許せ!
心の中で謝罪しつつ、華麗に話題を変えるべく俺はレイヴァンの魔法を称賛し始めた。
実際、あの大規模魔法は圧巻だった。
「魔力の制御も精密で、精度と威力も流石ですね。特にあの森一面を魔獣ごと凍らせた一撃は実にお見事でした」
「そんな……。エバンス先輩の状況判断と指揮こそ素晴らしかったです。魔法も見たこともない繊細な魔法でしたし」
そこからレイヴァンの怒涛の質問攻めがはじまった。
パーティーの時も思ったけど、レイヴァンめっちゃ好奇心旺盛だよね?
知らない知識とか大好きだよね?
話が弾む中……というより一方的に俺が質問攻めにあっているだけだが、ふと腕時計を見るといい時間だ。
学園は一単位が長いから休み時間も長めなんだがそろそろ次の授業だ。
「……っと、そろそろ時間ですね。教室に戻らなくては」
時計を示せば「あっ、もうそんな時間なんですね」とレイヴァンも慌てる。
校舎へと向けて歩き出しながらレイヴァンが表情を改めた。
「先日の件は後日改めてお詫びとお礼をさせてください。それからコレも新しいのをお返しします」
そう言って手にしたハンカチを示すレイヴァンへと「構わない」と首を振るも……なかなか納得してくれない。
侯爵家から正式な謝罪と謝礼とかいらないし。
あとハンカチもあげるから。
「じゃあ、今度学食でも奢ってください」
妥協案として告げた俺の返しに理解できないと言わんばかりのきょとん顔。
そんな庶民的な謝罪と謝礼方法は知りませんか、そうですか。
「上級生として下級生を守ったのは当然です。そもそも互いの協力なしでは生き残れませんでした。それを考えれば謝罪も感謝も不要です。ですがもしそれでは貴方の気が済まないというのなら、いつか学食でも奢ってください」
「でもそんな……」
「普通の若者の貸し借りの返し方なんてそんなもんですよ?「今度酒おごれ!」とか領民の間では定番みたいです」
「……そうなんですか」
庶民の風習にカルチャーショックを受けているレイヴァンをよそに、階段に差し掛かったので胸に手をあて別れを告げる。
「ではここで」
次は語学かー。あの先生の授業、眠くなんだよなー。
そんな愚痴を心の中で漏らしながら三年の教室に向け階段を登った。
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