24 / 140
24
しおりを挟む久しぶりに兄弟揃って談笑していると、たたたたたっと先程より軽い足音が響いた。
「ただいま!」
元気いっぱいに駆け寄ってきたのは淡い金髪に澄んだ翠の瞳の美少年。
「パパ、エルくんただいま!あっ、お菓子!」
パパという呼び名からも分かる通り、兄さんの子供で俺の甥っ子。
俺の呼び名は兄さんと同じく「エルくん」だ。
まだ十代半ばで「おじさん」って呼び名は断固拒否する。それ以外なら別になんでもいい。
でもまぁ……ある意味コイツも「エルくん」なんだよな。
ゲームキャラにも引けをとらない美少年っぷりの甥っ子の名はシエル。
被ってて当然。
だって「エルくんの名前から取ったんだ!」って子供が出来た時に兄さんが自信満々で言ってたし。
兄さん……何故に弟の名前をつける?
そこはもっとこう色々とさぁ……。
「こらシエル。ちゃんと手を洗いなさい」
「はーい」
現れた美人さんの言葉に素直に従うシエル。
キツめの、こちらもゲームキャラでも可笑しくない迫力美人はエルザさん。兄さんのお嫁さんだ。
シエルの美貌は義姉さんからの遺伝だろう。
性格は断然兄さん似だけど。
「ラファエルくん体調はもういいの?」
「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしました」
「本当に心配したよぉ~」
「泣かないの、セラフィ。本当にもう、どっちが年上だかわからないわね。今日の夕食はお肉だからね。魔法を使い過ぎると消耗が激しいんでしょう?食べ盛りなんだし沢山食べてね」
エルザさんのお言葉に「ありがとうございます」と返していると戻ってきたシエルが俺と兄さんの間に割り込んで菓子へと手を伸ばした。
狭いだろうとソファの端へと寄ってやる。
「エルくんいっぱい魔獣をやっつけたんでしょう?すごい!カッコいい!!」
「そうだよ!エルくんはカッコいいんだ!」
なんだろう……この親子のほのぼの感。
こういうタイプが母性だの庇護欲をそそるんだろうか?
現に超絶美人のエルザさんは仕方がないわね、という表情をしながらもその眸は至って愛し気だ。
兄さんが結婚相手としてエルザさんを連れて来たときは正直「上手いことやりやがって!」と思わずにはいられなかった。
だって美人なだけじゃなくボイン。
どうやって捕まえたんだと思ったが、どうやら捕まったのは兄さんの方っぽい。
「あのね、このまえローズちゃんがね……」
可愛らしい声でシエルが語るローズちゃんはシエルの彼女。
二つ年上の将来美人間違いなしのおませな女の子だ。
こちらも姉さん女房のごとくシエルがせっせっと世話をされているのを何度か見かけた。
なぜだ……。
“放っておけない可愛さ” こそが女子のハートをくすぐるのか。
イケメンに生まれてラッキー!とか思っていたが、
世は “可愛い男” の時代なのか……!!
いやでも、いまから可愛い系目指すには俺にはハードルが高すぎるっ!!
そんな煩悩を抱え悶々とする俺。
そして怪我をした息子が久々に帰省したというのに、両親はラブラブデート中ですよ。もういい年なのにほんと仲いいな。
なんなの、この独り身に優しくない実家……。
238
お気に入りに追加
990
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
はるはう
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる