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しおりを挟む新入生歓迎会というものはもっと気怠くも微笑ましいものではなかっただろうか?
体育館とかで親睦イベントが催されたり、パーティーにしてもスナック菓子に紙コップのジュースとかそんな感じのさ。
煌びやかなシャンデリアの下、ドレスが鮮やかに華を咲かせる。
ガチのパーティーですよ……。
流石、貴族というべきか。
新入生歓迎会といえど全員正装のうえ、ボーイなんかも行き交うまごうことないパーティーです。
入学式から早一週間。
学園にも慣れはじめ、友人関係も築かれはじめたこのタイミングで毎年行われるパーティーは全学年合同だ。
たまに誘われるダンスの誘いなんかを躱しながら、俺はクラスメイトや顔見知りとちょいちょい会話を重ねつつ無難に時間を潰していた。
豪華で美味そうな食事には心を惹かれるが、こういった場でガツガツするわけにもいかないしどうにも手持無沙汰で仕方がない。
早く終わんねぇかなーという内心を隠しつつシャンパンを口に運んだ。
……と、会場の中央付近がざわざわと落ち着かない。
揉め事か?と様子を窺えば、視界に入ったのはシャンデリアの光をキラキラと反射するプラチナブロンド。
いつもの制服姿でなく正装姿で貴公子度当社比200%のイケメンくんがいた。
レイヴァンはこちらに背中を向けているので様子は見えないが、その向かいには三人程の恐らく新入生だろう少女たち。
その内の一人は真っ青な顔で何度も頭を下げており、横の二人も狼狽していた。
少女の手には中身がほぼ空のワイングラス。
漏れ聞こえる声とその様子から大体の状況は把握した。
ぶつかったか何かしてグラスの中身がレイヴァンにかかってしまったんだろう。
レイヴァン自身は特に怒った様子もなく、赤べこのように頭を下げ続ける少女の謝罪を止めようとしているのだが……当の少女はパニック気味で半泣きだ。
やがてざわめきを聞きつけて、こちらもいつも以上に王子度だのお姫様感マシマシの王子らがレイヴァンの側へ。
「どうしたんだ?」
「いえ、ちょっとぶつかってしまっただけです」
ラインハルトとレイヴァンの会話に少女を咎める色はない。
リーゼロッテ様が「大丈夫ですの?」と少女を心配して覗きこむ。
ひゅうっっ。
空気が漏れるような音が微かに聞こえた。
少女の大きな瞳からはボロボロと涙が零れ、唇はふるふると震えている。
はぁ。
ほんの小さく吐息を零し、シャンパングラスを近場のテーブルへ置いた。
傍観を決め込んでいたかったが、あの子を放っておくのも微妙だ。泣いてるし。
目立ちたくない……。
心の中で呟いて、騒ぎに向かって足を踏みだした。
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