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木漏れ日の中、パタンと本を閉じた。

吹き抜ける風がそよそよとこずえを揺らす。
背を預けた幹に凭れ掛かりながら軽く上空を仰いだ。緑の葉の合間から見える青空と雲のコントラストが美しい。

どこに居ようと、この空は一つに繋がっている。

そんなフレーズがふと頭に浮かんで小さく笑みが漏れた。
今しがた読み終えた小説の登場人物の一人が口にした言葉だ。

それは正しくて、間違っている。

この世界のどこの国に居ようと確かに空は一つに繋がっているのかも知れない。

だけど、

俺が  と  は決して繋がってなんかいない。


異世界転生っていうやつをしたと気づいたのは確か6歳になったころ。
俺に家庭教師がついて魔法の練習をはじめた時だった。

属性が強い風魔法を放ち、的の小枝を両断した時、

「おー!ゲーム通り!!」

無意識にそんな言葉が漏れた。

「はじめてなのにお見事です!」そう賛辞をくれる家庭教師を尻目に、俺は「はて?」と首を傾げた。

ゲームとはなんぞよ?と。

腕を組んで考え込むことしばし。
洪水のような記憶が頭に襲って来た。

ここ、ゲームの世界じゃん!!

そして俺は目をかっぴらいた。
必死に動揺を押し隠し、何とか残りの時間をやり過ごした俺は「疲れた」を理由に部屋へと閉じこもり無駄に部屋で一人暴れた。

暴れたといっても物を壊したり癇癪かんしゃくを起したわけじゃない。

「剣と魔法の世界じゃん!」と大興奮してベッドの上でぴょんぴょんしたり、「どのキャラでもねぇよ。誰だよ俺!」とゴロゴロと転がってみたり、「えっ、ってことはあのキャラいんの?」と大興奮でクッションをバンバンしたり、「ストーリーちゃんと覚えてねぇ!」と頭を抱えたりしただけだ。

誰かに見られたら間違いなく医者呼ばれるな。
かつての俺に自室に閉じこもるぐらいの分別があってマジでよかった。

ひとしきり興奮しつくした俺は疲れてぐっすり。
まぁ、まだ6歳だったし。

起こしに来た兄に連れられて晩御飯を食べ、貴族のお子さまらしく使用人にお風呂にいれてもらった俺は再び部屋に戻って再び頭の中を整理した。
もちろん部屋には鍵をかけて。
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