国一番の美女を決めるミスコン(語弊)にエントリーしたら優勝しそうな件…………本当は男だし、なんなら皇帝の実弟なんだが、どうしよう?

黒木  鳴

文字の大きさ
上 下
16 / 16
その後

いまはもはやただの趣味 7

しおりを挟む


「兄上ー包子パオズです」

机の上の書類を雑にどけられ、置かれたホカホカと湯気を立てるそれはなるほど包子パオズだ。

やりかけの仕事に周瑜が眉を顰めるものの、陵王は「いーじゃん。俺も後で手伝うし」と気にも止めずに返しては宦官に茶を所望した。
宦官も慣れたもので苦笑いを浮かべつつ言葉に従い部屋を出る。

「睡蓮作ですよ。周瑜にもやろう」

えっへんと自慢げにいい、茶がくるまえに陵王はガブリと齧り付いた。

睡蓮は梅鈴の姉でやはり古くから二人の面倒を見てきている女官だ。料理が上手で彼女の作る点心は絶品。

「「…………」」

あむあむと包子を頬張る陵王を見て黒曜と周瑜は無言で視線を見合わせた。
奇しくも二人とも同じことを思ったし、互いが同じことを思ったこともわかったからだ。

男装の麗人。

二人の頭に浮かんだのはそんな感想だった。

今日の陵王は珍しくも普通の恰好だ。
多少……いや、かなり華美な感はあるものの男性用の服装。

だいだい普段は三回に二回は女装姿、しかも最近は半数ほどが後宮の胡蝶としての姿なので確立としては五分の一にも満たない貴重な男の恰好。

だが若々しく美しいその姿は本来の姿であるはずなのに……どうしても男装の麗人に見えてしまう。
男装が流行っているだけになおさらそうとしか見えない。

そのことに兄と幼馴染は無言でお互いを見合った。

「兄上も周瑜もどうかした?」

「いや……」

「いえ……」

首を傾げる陵王に言葉少なに首を振り、茶もきたところで二人も包子に手を伸ばした。

腹も満たし、雑談を交わしつつ仕事に戻れば陵王も加わったこともあり仕事はあっという間に進んだ。

「ところで陵王様、後宮の方はいかがですか?」

周瑜の問いに陵王の眉がへにょりと下がる。

「それがさー、病弱設定押し進めたら医者呼ばれそうになるし。も~マジ参ったっ!」

「参った、じゃありませんよ。全く」

「そろそろ本当にどうにかしないとまずいしな」

「げっ、やっぱり?」

「ああ、高官たちが噂の美姫を一目見たがっている」

「うーわー!」

どうしよう!と陵王が天を仰ぐ。

「いっそ急死したことにでもする?」

「それこそ大騒ぎになるだろう」

皇族兄弟の会話を聞きつつ、表情を引き締めた周瑜は最後の一枚の書類を片付け黒曜へと向き直る。

このままでは埒があかない。

覚悟を決めて周瑜はキリリと口を開いた。

「陛下、私に高位の妃嬪ひひん様方との面談を許可していただけますか?」



しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

処理中です...