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その後
やり過ぎには要注意 2
しおりを挟む私は病弱、私は病弱。
暗示のように自分にそう言い聞かせ、集合場所へと向かえばすでに多くの妃嬪たちが集まっていた。
国中から集められた美女たちの群れは、それこそ大輪の花の如く美しい。
ま、一番美しいのは俺だが。
ふっ、と心の中だけで呟く安定の陵王。
表情に出したつもりはなかったのに、ちょっと梅鈴に睨まれた。
いけない、いけない、と改めて猫を被り直す。
「お待ちしておりましたわ、蝴蝶お姉さま」
花も霞むような満面の笑みで迎えてくれる妃嬪たち。
着飾った姿はある意味武装というに相応しい装いで、その笑みはひたすらに麗しい。
陵王としてもいまや彼女たちに悪感情はほとんどないし、親しみも覚えている。
だが彼女たちこそが陵王に危機感を与えている存在でもあった。
彼自身の行動による自業自得の危機だったが……。
「素敵なお召し物ね。とても似合っているわ」
花の間をしずしずと、よくいえば淑やかな歩みで、率直にいえばもどかしい程にゆったりとした歩調で歩みながら和やかに会話を重ねる。
憧れのお姉さまの褒め言葉に頬を色付けた妃嬪たちが口々に陵王……いまは蝴蝶の装いや美貌を褒め称えはじめた。
その際、誰が口火を切るかで妃嬪たちの間でほんの一瞬、激しい視線の火花が散ったがちょうど陵王は牡丹に視線をやっていたので気付くことはなかった。
代わりに気付いたお付きの女官たちは、またさらに熱を増しているお姉さま熱に密かにおののいた。
「蝴蝶お姉さまこそ今日も素敵でいらっしゃいます。まるで天女のよう」
うっとりとそんな賛辞を口にしたのは淑妃の位を賜る麗蘭だった。
見るからに聡明さが滲み出るような麗蘭はこの中で一番最初に陵王に懐いた妃嬪だ。
お姉さま呼びの元祖でもある。
「姸を競う花たちもお姉さまの美しさにはとても敵いませんことね。清楚で、艶やかで……」
色白の頬に手を当て、ほうっ、と感嘆の溜息を溢したのは現後宮で最も高い位を持つ貴妃たる玲琳。
一方、いつもなら「そんなの当然じゃない!お姉さまの美しさはこの国一、いいえ世界中を探したって蝴蝶お姉さまより美しい方なんていないわ。ね、お姉さまぁ」と甘えた声で蝴蝶にすり寄ってきそうな千姫は花も見ずに俯いたままだ。
最年少の彼女の位は二人より少し下がって修儀。
この場には他にも多数の妃嬪たちがいるが彼女たちがミスコン(語弊)の優勝候補たちだった。
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